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ささくれ
ガチャ。
スタジオのドアが開いた。
段ボールを持ち上げていた涼ちゃんは、その音に振り向く。
入口に立っていたのは――若井だった。
涼ちゃんは少し驚いた顔をする。
「……あれ」
軽く笑って言う。
「帰ったんじゃなかったの?」
若井は答えない。
スタジオの中を少しだけ見渡して、それからゆっくり涼ちゃんの方へ歩いてくる。
涼ちゃんは段ボールを床に置いた。
少しの沈黙。
そして若井が口を開く。
「……元貴とさ」
低い声。
「どうやって知り合ったの?」
突然の質問だった。
でも涼ちゃんは特に戸惑う様子もなく、普通に答える。
「あー」
少し考えてから言う。
「同じアカデミー」
若井が眉を少し動かす。
「そこで知り合った」
それだけの、簡単な答え。
若井は少しだけ黙る。
それから。
「……ふん」
小さく鼻で笑った。
どこか、ふてくされたような顔。
それ以上何も言わず、くるっと背を向ける。
スタジオのドアへ向かう。
涼ちゃんはその背中を少しだけ見ていた。
「……?」
何が聞きたかったのか、よく分からない。
ガチャ。
若井はそのままドアを開けて、外に出ていった。
静かなスタジオに、また一人。
涼ちゃんはしばらくドアの方を見ていた。
それから小さく肩をすくめる。
「……なんだったんだろ」
ぽつりと呟く。
でも深く考えることもなく、また段ボールを持ち上げた。
ガムテープの音だけが、静かにスタジオに響いていた。
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