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「っ…そ、そんなわけないじゃん!何言ってんの! 」
ぺいんとくん───いや、ぺいんとはそう言った。
……ほんと、本当に今思い出したが…彼は、俺の小学一年生の頃の親友だ。彼も俺と同じで物語を創ることが大好きで、発想力がいいためアイデアは彼に任せて俺はその彼のアイデアを文章化するということを2人でやって遊んでいた。
でも、小学1年生の途中───ぺいんとは独特な発想力、独創力のせいでいじめられた。俺からしたら良いことだし、誇るべきところだと思っていたが、ぺいんとからしたらそれは嫌味だと捉えてしまったらしい。
『俺のアイデア…トラゾーも気持ち悪い目で見てたんだろ!!』
大泣きしながらもぺいんとは言葉を繋いでいく。俺は、そんな彼に「違うよ」なんて言っても解決するようには思えなかった。けど、説得なんてこともできるわけない。ましてや、小学一年生。人の心なんてまだわからないからなんとも言えなかった。
───だから、演技をした。
『…うん。そうだよ。』
『っ!』
俺がそう言った瞬間、ぺいんとはこちらを見て驚いた顔をしていた。
多分、そう言われるのを1番望んでいなかったんだと思う。でもそんな言葉を、俺は吐いてしまった。…吐いたんだ。後戻りなんてできるわけない。わかった上で、俺は演技を続けた。
『───お前の作品なんて、大っ嫌いだったよ。』
その時、酷く痛い感覚が頬に残ったのを覚えている。ぺいんとは更に大泣きしながらも俺の目を見つめていた。……あぁ、今、ぶたれたのか。その時のぺいんとの手は、酷く赤くなっていた。
『ガチで…信じらんねぇ…』
ガキというガキで、生意気で、でも明るくて、楽しそうにするぺいんととは裏腹の言葉。生意気な言葉の感じは残っていたけど、酷く冷酷だったな、と思い返す。
「…思い出したんだよ、今。」
「……………そっ、か。」
顔を少し伏せて、ぺいんとは気まずそうに答えた。確かに気まずい。けれど、不思議と気まずい気持ちは薄らいでいく。だってそうだろう?
俺から離れた人間が、こうやって俺の小説を面白いものにして、お見舞いにも来て……。正直、ありえない話。でも、それが目の前で起こっているのだ。
「…お前は俺の作品見て、どう思った?」
そう問いかけると、相手は驚いた次には悩んだ顔をしていた。でも、俺自身この作品には自信がなかった。
何てったって、出演しているキャラクターはすでに性格も決まっている。性別も、環境も、友達関係も。だから、難しかったのだ。
───ぺいんと達を、主人公にする物語は。
いやまぁ、ぺいんと達を主人公にする気はなかった。けど、今思った。あまりにも登場人物がぺいんと達に似過ぎていると。
だからこそ、自信がなかった。
「んなもん、いらねぇ!」
ふと投げかけられたぺいんとの言葉。
その言葉に俺はびっくりする。予想していなかった言葉だったからだ。
「……そうか。」
悲しかった。けど、泣くほどでもなかった。ただ、”もっと頑張らなきゃ”って思った。
そう顔を下に向けていると、ぺいんとの手が俺の頭に置かれる。最初は理解ができなかったけど、何でか暖かった。
「───台本なんてなくたって、俺がハッピーエンドに持ってってやるから!!」
「!」
そう言ってぺいんとは俺の書いていた紙をぐしゃぐしゃに丸めて俺の頭にポンと投げつける。
本当は褒められたかったのに。本当はこんなことされたら嫌なはずなのに。なぜか、”もっと頑張ろう”って思った。
「…じゃあ、いらないな!」
──────この瞬間、俺は夢を諦めた。
コメント
6件
かっけぇ
ワァァァァ新話だぁ✨ なんと言えばいいか…とりあえず神ということに違いは無いです。