テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ベッドの中で、涼ちゃんはぼんやり天井を見ていた。
夜になっていた。
熱はまだ下がっていない。
体もだるい。
ふと、お腹が鳴った。
「……」
そういえば、何も食べていない。
朝からほとんど食べてない気がする。
(お腹…減った)
でも。
起き上がってキッチンまで行く気力がない。
何か作るなんて、今の体では無理だった。
(どうしよ)
そう思って目を閉じたとき。
ピンポーン。
インターホンが鳴った。
涼ちゃんは少し眉を動かす。
(……誰)
こんな時間に。
マネージャーでもないだろうし。
ゆっくり体を起こす。
少しふらつきながら玄関まで歩く。
モニターを見る。
そこに映っていたのは――
若井だった。
「……え?」
思わず小さく声が出る。
鍵を開けて、ドアを開ける。
若井が立っていた。
「……やほ」
片手を軽く上げる。
もう片方の手には、スーパーの袋。
涼ちゃんは少しぼーっとした顔で見ていた。
若井が少し目をそらしながら言う。
「……入ってい?」
少しだけ不器用な聞き方。
涼ちゃんは何も言わなかった。
ただ、少し横にずれて――
道を開けた。
若井は「ありがと」と小さく言って、中に入る。
ドアが閉まる。
――少し前。
スタジオを出たあと。
若井は一人で歩いていた。
元貴たちはまだ少し残ると言っていた。
でも若井は、なんとなくその場にいられなかった。
外の空気は冷たかった。
歩きながら、ずっと考えていた。
(……あいつ)
涼ちゃんの顔。
びしょ濡れで弦を持ってきたときの姿。
今日、熱があるのにスタジオに来ていたこと。
全部が頭に浮かぶ。
胸の奥が、少し重い。
(……やっぱ)
小さく息を吐く。
(お詫びしないと)
あんな態度を取ってきたのに、
あいつは何も言わなかった。
それが、余計に引っかかる。
若井は足を止めた。
スマホを見て、涼ちゃんの住所を確認する。
(……今から家行って)
(なんか飯でも買っていくか)
そう思うと、すぐ近くのスーパーに入った。
お粥、ゼリー、スポーツドリンク。
あと簡単に食べられそうなものをいくつか。
袋を持って店を出る。
そのまま――
涼ちゃんの家へ向かった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!