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RanJam
#病み
レンジの音が止まる。
若井はお粥を取り出して、スプーンも持つ。
少し冷ましてから、そのままリビングへ向かった。
カーペットの上。
涼ちゃんはさっきと同じように横になっている。
「……お粥温めたけど」
若井が少ししゃがむ。
「食べる?」
涼ちゃんの顔を覗き込む。
けど――
涼ちゃんはゆっくり、
首を横に振った。
若井は少し眉を上げる。
(え、マジ?)
(せっかく温めたのに)
そう思うけど、口には出さない。
「そ」
短く言うだけ。
そのまま涼ちゃんの隣に座った。
カーペットの上。
少し距離を空けて座り、
若井はスマホを取り出す。
画面を開いて、
なんとなくスクロールする。
でも。
ほとんど見ていない。
視線だけスマホに落として、
頭の中は別のことを考えていた。
――涼ちゃん side
キッチンから、
バタバタする音が聞こえていた。
袋の音。
電子レンジの音。
食器の音。
(……若井だ)
ぼーっとしながら、
その音を聞いていた。
体がだるい。
頭も熱い。
目は閉じたまま。
しばらくして、
足音が近づいてきた。
「……お粥温めたけど」
声が聞こえる。
近い。
「食べる?」
その言葉に、
涼ちゃんは少しだけ目を開ける。
でも。
すぐ閉じた。
お腹は減っている。
本当は、少し食べたい。
でも。
胸の奥に引っかかるものがあった。
(……若井)
今までの態度。
冷たい言い方。
きつい言葉。
頭の中に浮かぶ。
だから。
なんとなく、
遠慮してしまう。
(迷惑かけたくない)
(これ以上)
喉の奥が少し詰まる。
ゆっくり首を振る。
若井が「そ」と言う声が聞こえる。
そのあと、
隣に座る気配。
カーペットが少し沈む。
スマホを触る音。
部屋はまた静かになる。
涼ちゃんは目を閉じたまま、
その気配を感じていた。
(……なんで)
ぼんやり思う。
(来たんだろ)
今まであんな態度だったのに。
今日は、
ご飯まで買ってきている。
理由が分からない。
けど。
熱のせいか、
頭がうまく回らない。
ただ、
隣にいる気配だけが
やけに近く感じていた。
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