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私は彼が大好きだ。顔が良くて声も良くて性格も良くて、その全てが完璧だから彼が大好きだ。
なんてそんな人物はこの世には存在しない。人には必ずどこかしらに欠点を抱えて生きてる。人が完璧と言われるレベルに達することは何年、何十年、何百年どれだけ時を重ねても訪れることは無い。けど、私はそれでいいと思う。完璧な人間なんて可愛げがない。
人は群れを成す生き物だ。孤立を嫌い、多勢の方に着く習性がある。それは、自己を守るためでもあるし先程あげた欠点があるからこそ群れるのだ。例えば、数字には強いが文字には弱い人と文字には強いが数字には弱い人のふたりが存在したとする。このふたりは互いの長所が短所を補えるような人材なのだ。この短所をカバーし合うことで二人は隙がない人物達になり得るということ。一人ではなし得ないことも二人なら、三人なら…と数を増やすことで可能性を増やすことが出来て、それが各々の短所をカバーすると言うことにつながる。人との繋がりの一つとして短所があるのはいいこと、私はそう思うからこそ完璧な人を嫌うの。
人が憧れという感情を抱くのは自分が持ちえない何かを持っているから。それはすなわち自身に短所があり相手には自分の短所を埋めることの出来る長所があることを意味する。そしてその憧れの感情が増幅してできるのが『嫉妬』という言葉。自分が持ちえない何かを持っていて、その何かが彼の周りに人を呼ぶことだと分かると途端に憧れは嫉妬に変わる。
私は嫉妬するほど人と一緒にいることはなかったが、嫉妬されることは多々あった。それは、容姿が世間的に見た時優れてると言われる部類の人間だったからだ。私に憧れる人達はいつしか嫉妬心に支配されて妬むことが増えていった。心無い言葉に私も心が壊されることがあった。そして逆に私は容姿が優れていない人に強い憧れ…いや、嫉妬に近い感情を持つことになる。それから私の人生は面白いくらい変わっていった。好意を抱いた男性の大半は容姿が世間的に言えば優れていない人が多くいたし、容姿に関して言えば特に問題は無いけど性格に難ある人も好きになったこともあった。とにかく分かりやすい『欠点』がある人に私は好意を抱くことが多かった。
そしてその欠点を持つ人を好む癖は今も治らない。むしろ悪化してるとさえ思う。何故なら、相手はその欠点に対してかなりの確率でコンプレックスとして捉えている人が多いからだ。だから、そのコンプレックスを認めてくれる人が居るだけでその人達は救われるのだ。そして、そのコンプレックス故に他者からの優しさに触れることがなかった彼らは認めてくれる人が出来たことでその人に依存していく。『あの人なら肯定してくれる』『私にも、僕にも味方がいる』『生きててもいいんだ』『こんなコンプレックスを持ってても認めてくれるんだ』そんな感情が彼らには湧き出るのだ。そして、そのままズブズブと認めてくれる人に依存していき、その人なしでは生きれない体になっていく…。
私はその様が大好きになっていったのだ。私もまた他者から必要とされなかった人間だ。だからこそ、他者から必要とされることに悦びを感じてしまう変わり者ではあるが、私もその相手もお互い『それ』を承知の上で成り立つ関係なら何も問題は無い。
ほら、今日もまた『彼』が私を求めて家に帰ってくる。だから私は彼をいっぱい甘やかしてあげる。彼が私を必要としてくれるなら、私はそれに応えてあげる。それが私にとっての『愛』だから………。
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