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今回も最高です!めちゃくちゃ!! 私、二酸化炭素さんの分の書き方?凄く好きです!これからも応援します✨
クラスメイトとGW中の話をしながらも相手の顔を見ながら笑顔で語り合う。そりゃもちろん誕生日お祝いの言葉も貰った。
「なぁ、またしょうせつってやつ書いたの?」
ふとされたクラスメイトの質問に、俺は心臓が大きく跳ねる。何故なら、この質問がこの世で1番大嫌いな質問だからだ。でも、答えないわけにもいかなくて。
「…う、うん。」
俺は笑顔になりながらも、背筋に冷や汗が伝っていた。ただ怖くて、恐れていたんだ。
「へぇ?じゃあ、また見せてよ!」
「あ……う、うん!いいよ!!」
この質問をされると、周りが見えなくなる。相手の笑顔も、怖く見える。勝手に呼吸の速度が、上がる。震える手でランドセルの中から数枚の書き途中の小説を相手に差し出す。相手はそれを強引に奪いとり、深々と読み込んでいく。 俺はその間にもランドセルを背負い直すが、1秒1秒が怖くて仕方がなかった。
そうして相手は最後の1枚にまで到達し、読み終えたのかニヤリと口端をあげてこちらを見た。
「ははっ!やっぱ意味わかんねー!!!」
その言葉に、俺は無意識にランドセルの肩ベルトを力強く握りしめていた。肌寒い時期に、俺は頬から汗が伝う。
「お前マジで世界観よくわかんねーよな〜!!あっ、またあいつらに見せてやろー!!」
そうして相手は俺が返してもらおうと紙に手を伸ばすと、その紙を彼の頭上に持っていき、俺に届かないようにひらひらと避けている。
「あっ、ちょっと待てって──────」
前を見ずに紙ばかりを見て追いかけていた俺は次の瞬間、石につまづく。その姿を見たクラスメイトは「ダッサ!!」と笑いながら校舎へと走って向かっていた。
「……」
足から流れ出る血は濃く赤くて、鉄臭かった。ただその血を拭うわけにもいかなくて、俺は痛みを我慢しながらも校舎に向かって歩いていた。
その間にも、少しずつだが血が渇いていく。また怒られるんだろうなと思ったけど、怒られるよりも嫌なことがあって、そっちの方がとてつもなく怖くて不安だった。
靴箱について上履きに履き替えればいくつもの視線が俺を突き刺す。グサグサと突き刺さるその視線は、俺の体を重くしていった。
(……くそっ。)
泣きそうになるのを堪えて教室まで歩いていく。そして徐々に聞こえる教室の中の騒ぎ声。いつもよりうるさくて、賑やかだった。
楽しそうに聞こえるかもしれないが、俺にとっては地獄の空間だ。
ドアを開け、教室に入るともっと騒がしくなる。そして数名の生徒がこちらに駆け寄り、俺の頭の上から紙屑をはらはらと落とす。
「ははははははは!!」
相手は笑っているけれど、俺は状況がよく理解できなかった。
これは何の紙屑?
それは何の笑顔?
あれは何の笑い?
歓迎されてるのか貶されてるのかよくわからない。
「お前のしょうせつってやつ、みんながダメ作品だって言ってたから破いといたよ!!」
「えっ…?」
心臓がどくりと大きく跳ねる。
膝を地面につけて、地面に落ちた紙屑を拾って一つ一つを組み合わせていくと、文字が出てくる。それは俺が考えたタイトルである──────『白昼夢』の文字だった。
顔を見上げればクラスメイトたちの笑い声と不気味な笑顔で囲まれていた。そのとき、俺はまただって感じた。視界が酷く歪んで、ぐにゃぐにゃで、吐き気がして、まともに前が見れなくて。
「ゴミ箱に捨てようと思ったけど、せっかくだしお前に返しとこうと思って!!どう?面白いだろ!!」
笑顔で言う彼の顔は、今まで見たことのないくらいに恐い笑顔だと感じた。恐怖と、不安と、困惑と、悲しさ。負の感情が俺を襲って頭の中でぐるぐると渦巻く。”お前は失敗作だ”、”嘘しか書けない紙屑”…ってね。
俺の心は、もう破れた。元には戻らない。目の前に落ちている紙屑と、存在が変わらないのだ。
(…人って、これなんだ。)
目の前のクラスメイトは、世界の人々と変わらない。下の人を蹴落とすくらいまで上に上り詰めようとする。でもそれが世界の常識ってやつで、裏の社会ってやつなんだって、当時の俺は体感した。
(大きくて、恐くて、ハサミみたい。)
目の前のクラスメイトは、紙屑の俺からすればハサミのような存在だった。