テラーノベル
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帰りの会が終わって。
俺はランドセルの中にビリビリにやぶれた紙をファイルの中に入れて誰にも見えないように入れた。
5月7日──────GW明けの、最悪な日々の始まりを象徴したそれは俺の目に映らないようにした。
みんなが友達と帰っている中、俺───トラゾーは1人でトボトボ帰るばかりだ。時々、通りすがりに悪口を吐かれたり、暴言だったり、暴力を振るってくる。
「お前いっつも絆創膏だらけじゃん!そんな大袈裟にすんなって!!」
「……あはは、確かに。」
愛想笑いをして、自分を繕う。相手の気が悪くならないように。それなのに彼らは愛想笑いをしても”気持ち悪い”、”話しかけてくんな”とか言ってくる。でも何も答えなければまた同じ暴力や暴言を浴びせられるだけだ。
自分の得のためだけに矛盾に矛盾を重ね続ける人間は、どれだけ弱いのだろうか。でもそれは、愛想笑いをして”そうした方がいい”を続ける俺自身も弱くて───。
(世界っておかしいんだな。)
俺の小さくて、雑魚い意見を心の中で呟くだけで発表すらできない俺にまた呆れて、俺は地面に踏み潰された桜の花びらを上から踏んで歩いていく。
可愛くて、綺麗で、美しい花は、いつかはこうも酷い姿になってしまうのだ。いや、そもそも元から綺麗だなんて誰が決めつけた?多分それは、”見た目上”だけでの話で。人間で例えるならば”優しそう”とか、”スタイル良すぎる”という第一印象とほぼ変わりはないのだ。
だから俺は、よくよく思う。
(踏み潰された後が、”本当”の姿だったり。)
本当の姿が見えないまま、人と接するのって怖くて。でも、自分の本当の姿がわからないから人と接して。相手だけが自分の本当の姿を知って、自分は相手の本当の姿を知らず、自分の本当の姿も知らぬまま生きていく。
───はは、俺ってほんと弱いな。
「……っ 」
「何泣いてんの?」
ふと、後ろから声をかけられる。その声にびっくりして振り向けば、そこには片目が見えない金髪の俺と同い年そうな男の子。今は下校時間なのに、ランドセルなんて背負っていなかった。
それに、うちのクラスの子じゃない。 どこかの他校の、同い年の子。
「……えっ、と…君は?」
名前を尋ねると、相手はニコッと笑って少し後退りをして踊るようにくるっと回った。
「俺はぺいんと!!君は?」
ぺいんと…という男の子は眩しいほどの笑顔でそう問いかけてくる。
「……トラゾー。」
名前を言うと、「うわっ?!何そのかっこいい名前!!」と俺の周りをぐるぐると回って名札をじーっと見つめる。
何だか不思議ちゃんで、よくわからないような子だ。一緒にいると楽しそうだけど、振り回されそうで…。何だか、本当によくわからなかった。
「で?何で泣いてたの?」
「!」
声をかけられた時と同じ質問をされて、俺は不意に涙を拭う。同い年の子なのに、泣いてるところなんて見られたらカッコ悪い。それに、同じクラスの子に見られてもまた馬鹿にされるだけだ。
「……何でもないよ。眠かっただけ!」
そう答えると、相手は半信半疑なのかジトーッと俺の顔を見つめる。ま、まじで何なんだ…。
すると相手は人差し指をピンと立てて空に向ける。そして次の瞬間には俺の目の前へと人差し指は突きつけられていた。
「嘘だ!」
「…へ?」
突然の嘘COに、俺の頭の中の回転が遅くなる。やばい、完全にぺいんとくんのペースに飲まれてしまっている。
「嘘…って、あくびのこと?」
「うん!嘘の匂いしたから!!」
わけもわからない言葉に、理論が崩壊しすぎてるぞ…なんて思っていた。けれど、相手は俺の周りで匂いを嗅ぐような仕草をして笑顔を見せている。
「っ…!!」
ふと、脳裏によぎる不気味な笑い声と悪魔の笑顔。
「…ごめん、もう、帰らなきゃ…。」
上がる息を必死に整えてからそう口にして俺は逃げるようにしてその場から立ち去る。相手のことなんて見向きもしなかった。
ただ息が吸いにくくて苦しい。冷や汗がダラダラと滴り落ちる。目の前が歪んで見えて頭がガンガンと叩きつけられるようで痛い。
「痛い…」
か細くて、今すぐにでも消えそうな声だったのを最後に俺の意識はブラックアウトした。
コメント
5件
まさかのここでぺんちゃん登場…! ほんとに語彙力飛ぶくらい神ってます😭 今日もありがとうございます…🥹
初コメ失礼しますm(._.)m 何ですかこの小説の量…!! 一気読みいたしました…✨ めちゃんこすごいじゃないですか!? ♡75から♡1112にしてしまいました…😌🌸💕 お気に入りです~!ブクマもしてます!! またの投稿待ってます!✨💕