あんなに頑なだった自分の心が、尊さんの言葉一つで解けて、味気なかったはずのケーキがあんなに美味しく感じるなんて。
「俺ってほんと、単純……ふふっ」
無意識にそんな独り言が漏れ、鏡の中の自分と目が合って可笑しくなった。
笑いながら、使い終わったドライヤーを丁寧な手つきで片付ける。
今日の出来事を反芻すると、色々な感情が駆け抜けていった。
でも、最後に残るのはいつだって、あの人の顔だ。
優しく細められた瞳、頭に触れた温かい手のひら、耳の奥に残る落ち着いた声色。
考えてみれば尊さんは、俺のどんなに格好悪い言葉にも、真っ直ぐに耳を傾けてくれる。
それは命を懸けた仕事の場でも、今日のようなプライベートの時間でも変わらない。
そして、何よりも尊いのは、彼が迷いなく俺の言葉を信じてくれることだ。
……俺にとって、尊さんは太陽みたいな存在だ。
自分が深い暗闇に迷い込んで、どちらを向けばいいか分からなくなった時でも、一筋の強い光で進むべき道を示してくれる。
尊さんがいなければ、今の俺はここにいないだろう。
そして、これからもずっと、その背中を追い続けていくのだと思う。
「…はあ、好き……」
静かな部屋にポツリとこぼれた本音に、自分でハッとして慌てて首を振った。
熱を持った頬を両手で押さえ、逃げるように洗面台へ向かう。
歯磨きを済ませると、火照った体を引きずるように寝室へ直行した。
ふわふわのベッドにダイブし、暗い天井を見上げる。
電気を消して視界を閉ざしても、瞼の裏には尊さんの笑顔が浮かんでは消え、どうしても離れてくれない。
さっきまで一緒にいたのに、もう会いたくなってしまう。
「……こんなに幸せな恋愛……初めてな気がする……」
幸せを噛みしめるようにそう呟いて、俺は深く目を閉じた。
暖かい布団のぬくもりに包まれながら、俺はゆっくりと、穏やかな夢の中へと落ちていった。
◆◇◆◇
翌週の土曜日───。
尊さんのマンションの一室には、普段の静謐な空気とは程遠い、荒い呼吸音が響いていた。
「はぁ……はぁ……た、尊さん……っ!もうダメです……っ!」
「まだ3本目だぞ」
「でもこれ……きっついですって……久しぶりだから、下がすっごくピクピクして……っ」
「我慢しろ」
「そ、そんな!へっ下手したら体壊れちゃいます……!」
「馬鹿言え、これだけで壊れるわけないだろ」
「だって、!キツ……いし、激しすぎて……っ……んっ……」






