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動きやすいラフなTシャツとハーフパンツ姿で
俺の目の前に仁王立ちする尊さんは、さながら鬼軍曹のような鋭い眼光でこちらを見据えている。
「しっかり足を踏ん張れ。お前が『鍛えてほしい』って頼むから筋トレに付き合ってやってるんだろう?」
「はい……だけど、まさか尊さんの特訓メニューがこんなに容赦ないなんて……あぁっ!」
「……ったく、ほら、立て」
「お、鬼すぎます……!」
尊さん宅のリビング。
敷かれたヨガマットの上で、俺は尊さんの厳しい監視……
もとい、指導を受けながら、必死に自分を追い込んでいた。
そもそもの発端は数日前。
潜伏捜査の失敗で落ち込んでいた俺を、尊さんは「色んな守り方がある」と励ましてくれた。
それが本当に嬉しかった。
だからこそ、今のままじゃいけないと思った。
もっと身体を鍛えて、隣に並んでも恥ずかしくない男になりたい。
いつか、尊さんを真っ向から守れるくらいの強さが欲しい。
そう思って、恥を忍んで尊さんに「筋トレに協力して欲しい」とお願いしたのだ。
すると、トレーニングを開始してものの数分で「鍛え方が甘すぎる」と一喝。
そこから話が弾み(?)、こうして貴重な休日にマンツーマンの熱血指導を受ける運びとなった。
「よし、一旦休むぞ」
「や、やっと……!」
休憩の号令がかかった瞬間、俺は糸の切れた人形のように床にへたり込んだ。
ぜぇぜぇと喉を鳴らして荒い呼吸を繰り返す。
全身から汗が噴き出し、視界が滲む。
「ほら、拭け」
尊さんが無造作に投げてよこしたタオルが顔に被さる。
その感触に救われながら額の汗を拭うと、次に「水分もしっかり取れ」と冷えたアクエリアスのペットボトルを差し出された。
俺はそれを奪い取るように受け取り、喉を鳴らして貪るように飲み干すと、そのままヘロヘロと床に大の字になった。
「恋、今の腕立て、正確には何回できた?」
「じゅ、15回……? ……それが、限界でした……」
「成人男性の平均にも達してないぞ。お前、普段どれだけサボってるんだ」
「うう……っ、耳が痛いです…」
「そんなこと言ってられないだろ」
尊さんは厳しい口調で言い放つ。だが、俺がシュンとしたのを察したのか、すぐにその声色は柔らかいものに変わった。
「……だが、フォーム自体は悪くない。ちゃんと正しい位置に負荷がかかってる。こういうのは慣れだ。まずは回数よりも、毎日欠かさず続けることが大事だ」
「今日から毎日、ですよね……?」