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周囲を見渡せば、完璧に着飾った紳士淑女ばかり。
男同士というだけでも目立つのに、さらに言えば、モデル顔負けのイケメンである尊さんと
彼とは対照的な、童顔で身長もそこまで高くない、どこまでも平凡な部類に入る俺。
(やっぱり、場違いかなぁ……)
気後れして肩をすぼめるが、案内されたのは、プライバシーが程よく守られた二人きりの空間。
尊さんの向かいに座れるだけで、少しだけ呼吸が楽になった。
そんな俺の動揺など、尊さんにはお見通しだったのかもしれない。
彼は慣れた様子でギャルソンと二、三言葉を交わすと、ゆったりとした仕草でテーブルに着く。
今日の彼は、いつも以上に髪型が整えられ、身体に馴染んだ黒ジャケットのスーツを完璧に着こなしていた。
普段以上に「大人の男」の魅力が溢れ出していて、見つめるだけで鼓動が早くなる。
顔面偏差値も、性格偏差値も、なんなら仕事の出来栄えも満点。
その上、外見までこうして隙なく整えられたら、俺なんて到底敵うはずがない。
「緊張してるのか?」
すぐ近くから響く低く甘い声。
尊さんが心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「あはは…少し」
咄嗟に作り笑いをして誤魔化そうとすると、彼はふっと表情を和らげた。
「恋、窓の外見てみろ」
促されるままに視線を外へ向ける。
「……!」
言葉を失った。そこには、地上数百メートルから見下ろす圧巻の東京夜景が広がっていた。
ネオンの瞬き、大通りを流れる車のライト、うねるような街の息遣い。
まさに、宝石箱をひっくり返したような輝きが地平線まで続いている。
「うわ…綺麗……っ!」
「…ふっ……そうだろ」
肩の力抜けよ、と言わんばかりのさりげない優しさ。
その夜景と尊さんの声だけで、張り詰めていた心の糸がふわりと解けていく。
ああ、この人はどこまでも俺を見てくれているんだ。
そう実感すると、胸の奥から温かな幸福感がじわりと広がっていった。
「ありがとうございます。えへへ…こんなところ初めてなので……緊張しますけど、すごく嬉しいです」
尊さんが選んでくれたその席は、まさに特別席。
大きな窓から夜景を一望でき、反射する光の中に映る尊さんの姿が一段と凛々しく、そして特別に見える。
こんな夢のような場所で、大切な人と一周年を祝えるなんて。
俺は。幸せな眩暈に身を委ねていた。
◆◇◆◇
そうして、「まずはこちらから」と言って、物腰柔らかなウェイターが恭しく運んできたのは───
『柚子香るホワイトアスパラのムース 生ハムとオリーブオイルのアクセント』