テラーノベル
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ゆうき あきや
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#心理描写重視
第37話:シロ様の「光学迷彩(神の結界)」
「いいから回しとけ! その威嚇してる顔、ネットで絶対にバズるぞ!」
頭にサングラスを乗せたディレクターが、下品な笑い声を上げながら指示を飛ばす。
俺の制止など完全に無視し、肩に巨大な放送用テレビカメラを担いだ男が、ズイッと縁側へとにじり寄ってきた。
「ひゃっ……!」
小春ちゃんが怯えた声を上げ、シロとキツネ兄弟を庇うように身をすくめる。
「ほらほら、お姉ちゃん邪魔だよ! その白い猫の顔のアップを撮るんだから、ちょっとどいて――」
無作法なカメラマンの巨大なレンズが、シロの顔のわずか数十センチの距離まで迫った。
その、圧倒的な無礼と悪意に対する、神獣の答えは一つだった。
『――――フシャーッ!!!!』
シロの全身の毛が、ハリネズミのように逆立った。
同時に、サファイアとアンバーの神秘的なオッドアイが、爛々と妖しい、しかし圧倒的に神々しい輝きを放ち始めたのだ。
そして。
ピカァァァァァァァァァァッ!!!!
「うおっ!?」
「な、なんだこれぇっ!?」
突如として、シロの小さな体から、太陽フレアすら凌駕するほどの『暴力的なまでの純白の光』が爆発した。
だが、それは熱を持った光ではない。
悪意ある覗き見を防ぐための、極めて局所的で、物理法則を完全に無視した『絶対的な光学結界』。
驚くべきことに、その強烈な光は、俺や小春ちゃん、そしてコン吉とコン次郎の目には「ちょっと眩しいな」程度にしか感じられなかった。
小春ちゃんの手元にある、いつも配信で使っているスマートフォンも、何事もなくその光景を映し続けている。
しかし、シロに向けられた『帝都テレビの放送用カメラ』に対してだけは、違った。
バチィッ!! ピシィィィィッ!!!
「ぎゃあああっ!? 目が、目がぁぁぁっ!!」
カメラマンが悲鳴を上げて仰け反った。
彼が肩に担いでいた数百万円は下らないであろう最新鋭の放送用カメラ。
その先端にある分厚い高級レンズに、無数の亀裂が走り、蜘蛛の巣状にヒビ割れたのだ。
それだけではない。
「デ、ディレクター!! カメラのモニターが!! 映像が真っ白になって、完全に飛びました!!」
カメラマンがパニックに陥りながら叫ぶ。
レンズが割れただけでなく、内部の超高感度イメージセンサーが、シロの放った『神聖な光の過剰入力』に耐えきれず、完全に焼き切れてしまった(ショートした)らしい。
「はぁ!? お前、何やってんだよ! 500万もする機材だぞ!?」
ディレクターが慌ててカメラを覗き込むが、モニターにはただ『砂嵐』と『純白の画面』が虚しく映し出されるだけだった。
「わ、分かりません! 急にあの猫が光ったと思ったら、レンズが割れて、センサーがイカれちまって……!」
「猫が光ってカメラが壊れるわけねぇだろ! 落としたのか!? ええっ!?」
突然の機材破壊に、さっきまでの傲慢な態度はどこへやら、テレビ局の連中は完全に大パニックに陥っていた。
俺は、縁側に座ったまま、その様子を冷ややかに見下ろしていた。
そして、ゆっくりと湯呑みを持ち上げ、一口、温かいほうじ茶を啜る。
「……皆さま、お騒がせして申し訳ありません」
俺は、小春ちゃんの持っているスマートフォンのカメラ(こちらは無傷で絶賛配信中)に向かって、極めてフラットな、深夜のコールセンターのような声で語りかけた。
『えっ? 今なにが起きたの!?』
『テレビ局のカメラ、壊れたって聞こえたぞ!?』
『シロ様が光った瞬間、あいつらのカメラだけ割れた……?』
『スマホは無事なのに、なんでテレビカメラだけ破壊されてんだよww』
250万人の視聴者たちが、突然の展開にざわついている。
俺は、完璧な営業スマイルを浮かべ、この超常現象に対する『限界社畜の模範解答』を口にした。
「北海道というのは、空気が非常に澄んでいるため、太陽光の反射が強いんです。ええ、ただの『逆光』ですね」
「逆光でレンズが割れるわけないじゃないですかぁぁぁ!!!」
小春ちゃんが、恐怖も忘れて俺の背中に全力のツッコミを入れた。
「お兄さん! どう見たって今、シロちゃんからビームみたいな光が出ましたよね!? しかもテレビ局のカメラのレンズだけ、ピンポイントでバキバキに割れてますよ!!」
『小春ちゃんのツッコミが世界を救うww』
『主、ついに光学の法則すら捻じ曲げる』
『逆光(物理破壊)』
『適応力バグおじさん「逆光ですね(真顔)」』
『どんな強烈な光なら500万のカメラ焼き切れるんだよwww』
『シロ様の光学迷彩、対象を物理的に破壊する仕様で草』
俺の苦し紛れ……いや、完璧な論理武装(現実逃避)に、チャット欄は大爆笑の嵐に包まれた。
『(ドバイの石油王からの¥50,000ギフト)=”HAHAHAHA! DIVINE BACKLIGHT! The rude camera has been judged!“(ハハハハ! 神聖なる逆光! 無礼なカメラは裁かれたのだ!)』
『(スイスの銀行家からの¥50,000ギフト)=”Only those with pure hearts can film Shiro! Smartphones win over 5 million yen cameras!“(純粋な心を持つ者だけがシロを撮れる! スマホが500万円のカメラに勝ったぞ!)』
視聴者たちは、シロの不思議な力によって傲慢なテレビ局が撃退されたことに、大いなるカタルシスを感じていた。
「て、てめぇ……! 何しやがった! このカメラの弁償、いくらになるか分かってんのか!!」
ディレクターが、怒りで顔を真っ赤にして俺に詰め寄ってくる。
自分の無礼は棚に上げ、機材の破損をすべてこちらのせいにしようという魂胆らしい。
だが、俺は微動だにせず、冷徹な視線で彼を見返した。
「弁償? 何を言っているんですか。私はずっとここに座ってお茶を飲んでいただけですが」
「ふざけるな! お前んちの猫が変な光を――!」
「猫が光を放って機材を壊した、と? 警察や裁判所でそう証言するおつもりですか?」
「うっ……」
俺の理詰めの反論に、ディレクターが言葉を詰まらせる。
「第一、アポイントメントもなしに他人の私有地に不法侵入し、撮影を拒否されたにも関わらず強引にカメラを向けたのはそちらです。肖像権の侵害、ならびに住居侵入罪で訴えることも可能ですが、どうなさいますか?」
俺は、クレーマーを完全に沈黙させるための、感情を排した『事実の羅列』を淡々と突きつけた。
「ぐっ……こ、この田舎モンが……! 覚えてろよ! ネットの小銭稼ぎが、テレビ局を敵に回してタダで済むと思うなよ!」
ディレクターは負け惜しみを吐き捨てると、完全に沈黙した巨大な鉄くず(カメラ)を抱えたスタッフたちを引き連れ、逃げるようにミニバンへと戻っていった。
ブロロロロッ……!
レンタカーが土埃を上げて村の一本道を走り去っていくのを、俺たちは静かに見送った。
「……ふぅ。やれやれ、嵐のような連中だったな」
俺がほうじ茶の残りを飲み干すと、足元から『ミャウ♪』と甘えたような声が聞こえた。
見れば、シロが何事もなかったかのように、再びキツネ兄弟の背中の上に丸まり、心地よさそうに喉を鳴らしている。
「あはは……シロちゃん、怒ると本当に怖いんですね……」
小春ちゃんが、ホッとしたような、でも少し引きつった笑顔でシロの頭を撫でた。
「まぁ、シロのテリトリーと、俺たちのスローライフを荒らす奴には、これくらいの天罰(逆光)が下っても文句は言えないさ」
『主のメンタルもシロ様も最強すぎるww』
『帝都テレビ、完全敗北』
『逆光で追い払われるテレビ局ww』
『俺たちの【日常チャンネル】は、誰にも邪魔されない絶対不可侵の聖域だ!!』
画面の向こうの250万人からの大喝采を浴びながら。
俺たちは再び、秋の陽だまりの中でのんびりとした昼寝の時間を再開するのだった。
だが、逃げ帰ったテレビ局の連中が、このまま大人しく引き下がるとは、俺も視聴者たちも思っていなかった。
彼らの歪んだプライドは、次なる『愚行(迷いの森への侵入)』を引き起こすことになるのだが……それはまた、別のお話である。
コメント
1件
「シロ様まじで神だった…!強引なテレビ局に『逆光(物理)』で天罰下すの最高にスカッとしたわ。小春ちゃんのツッコミも絶妙だし、チャット欄の『純粋な心を持つ者だけがシロを撮れる』とか草。主の限界社畜スマイルも含めて、この日常チャンネルは本当に不可侵の聖域だと思う。次回の迷いの森編も楽しみにしてる🔥」