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#幽霊
凛道桜嵐 新
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#日常
がくじゅつてき・あかげ
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わーい
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金谷さんは、今どこにいるかわからず、連絡も取れないそうだ。今日仕事先に現れなかったので発覚したらしい。
金谷家は大騒ぎになっていて、唯一狭山さんの味方だった金谷さんのお兄さん(司さん)が両親を叱りつけ、事態が混迷を極めているそうだ。
狭山さんは言った。
「司さん、「どうして峰家からあかりを守らなかったんだ! 皆、あかりが聞き分けよすぎるのに甘えすぎなんだ、素質があるからその方面でがんばれって言い過ぎたから!」ってキレたそうで、でも今ご両親と安吉さんを叱りつけても後の祭りで……」
「そりゃそうですよね……」
事態がとっ散らかりすぎている。金谷さんを見つけるほうが先だ。裏垢メス男子が峰朝日さんというのは強いカードだけれど、峰朝日さんは裏垢メス男子のアカウントで法を犯したわけではないし、開き直られたらどうにもならない。
裏垢メス男子の正体については、一旦、俺と狭山さんの間だけのことになった。千歳にも口止めしておくことにした。狭山さんは最後に言った。
「あかりさんの居場所について、僕も考えがないわけではないので、内密に動きます」
「え、なんか心当たりとか?」
「まあ……うまく行ったら連絡します。それまで内緒で」
そうか、なんだかんだ言って結婚前提に付き合ってた相手だもんな、心当たりあったっておかしくないな。
その後、千歳に経緯を説明して口止めし、最低限の仕事をしたら、もう夕飯になってしまった。
『あのさあ、狭山先生ってさ、あかりさんにとってはある意味すごくいい物件だったんだ』
さばの味噌煮を突きつつ、千歳は言った。
「そうなの?」
『緑さんが前教えてくれた。あのさ、〈そういう〉素質がある家の人って、〈そういう〉素質のある人と結婚して素質のある子供残せってプレッシャーかけられるんだけどさ』
「うん、なんか聞いてるとそんな感じだねえ」
俺はうなずいた。霊能業界、家制度強そうだし。
『あかりさんにとって狭山先生はさ、素質的にすごくいい相手で、子作りの義務が果たせる相手で、でも子作りのプレッシャーが少ない相手なんだ。狭山先生、素質のある家の出身じゃないから、狭山家からの子供作れのプレッシャーがそんなにないから』
「あ、なるほど……」
普通の家だって子供作れのプレッシャーはそれなりにあると思うけど、霊能業界のプレッシャーとは比較にならない程度なんだろう。
『狭山先生とあかりさんの見合いは緑さんがセッティングしたらしいんだけどさ、狭山先生がそういう条件であかりさんにいい感じで、狭山先生の性格も優しそうで、もし子供できなくてもあかりさんと仲良くやれそうだから、見合いセッテングしたんだって』
「なるほど……」
緑さんのこれまでを考えると、「子供できなくても仲良くやれそう」はとても重い言葉だ。それに、実際、峰朝日さんの横槍がなければうまく行ってた二人なんだから、緑さんの見る目は確かだったわけだ。
「うまく行くはずの二人だったのにね」
『そうなんだよなあ』
千歳はため息を付いた。
『あかりさんのこと、なんとかしてやりたいけど、何していいかわからん』
「俺も……」
まだ高校生の女の子が、望まない相手と結婚させられそうで、それが嫌で行方をくらます。かわいそうにもほどがあるけど、特に親しい相手でもないから、探す心当たり、まったくないし。
『あかりさん、LINEしても既読つかないんだっけ?』
「スマホの電源切ってるかもしれないんだって」
俺は狭山さんから聞いたことをそのまま話した。捜索願い出されて警察が関わったら、GPSで居場所特定できちゃうかもしれないから、そのせいかも、と狭山さんは言っていた。
千歳はぼそぼそ言った。
『……でも、なんていうか、あかりさんは一応ワシの妹だし、ワシあかりさんには世話になってるし、LINE見てくれるかわかんないけど、ワシはあかりさんの味方するぞって、LINE送っても大丈夫かな?』
「それはいいんじゃないかな、送っときなよ」
夕飯の後、俺が食器を洗い終わってこたつ座椅子に戻ると、千歳が幼児になって俺の膝に座りに来た。
『なんか気疲れした、昨日からいろいろありすぎて』
「そうだね……」
俺もだいぶ疲れてしまった。いろいろありすぎて、今日、仕事にならなかったしなあ……。夕飯の後やろうかと思ってたけど、疲れちゃって無理だな……。
『でも、ワシにできることないんだよなあ』
千歳は肩を落とした。
「……仕方ないよ。こういう時は、自分のやるべきことを粛々とやるしかないんだろうね。俺今日は仕事にならなかったけど、その分明日から頑張んなきゃ」
俺は千歳の肩をなでた。千歳は俺を振り返った。
『よその地域の災害で落ち着かないけど、自分にできること何もない時みたいに?』
「……そうだね」
それと関連付けて考えなかったけど、そうだな。同じだな。
『…………』
千歳は、座り直して背中を俺の腹にくっつけ直した。
『あのさ、今日はさ、疲れたからゆっくりするけど、ちゃんと休んで明日からまた組紐づくり頑張る。とりあえず一本は完成させる』
そうか、緑さん金策頑張ってくれてるし、完成させるのが誠意だよな。
「そうだね、俺も今日はゆっくりして英気養って、明日から仕事頑張るよ。狭山さんに渡さなきゃいけない仕事もあるし」
事態が動いたら俺達にできることも増えるかもしれないが、今は普段やるべきことをまずやるしかない。いつものことを地道にやって、不測の事態にもいつでも対応できるようにしておこう。
コメント
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感想、読ませていただきました。 今回のエピソード、じわじわと心に沁みました。金谷さんの行方不明という大きな出来事に対して、誰もが「自分にできることがない」ともどかしさを感じているところがリアルです。千歳くんが「あかりさんの味方するぞ」ってLINEを送りたいと言ったところ、とても好きでした。小さな一歩だけど、確かな優しさだなって。 そして最後の「今は普段をがんばる」という決意。不測の事態に動揺しながらも、自分の足元を整えることでしか前に進めない瞬間ってありますよね。作者さんの描く日常の中の静かな強さが光る回でした🌷