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「これ、高校の国語の先生」
「ねぇーー、笑わせんで」
「いやまじでこんな顔」
爆笑し過ぎてお腹が痛い。
リアルすぎる似顔絵。
ってか個性的するぎる絵のセンス。
研修中、どういう訳か山下くんの隣の席に座った。
「ドラえもんも描けるよ」
こいつ、私を笑わせにきてるのかなんなのか
全然分からない。
「あたしのドラえもんの方が上手いわ」
そう言って私も、山下くんが描いたドラえもんの隣に、ドラえもんを描いた。
「俺の方が上手いだろ」
「いやいや」
私の方が上手かった。
「ちょっと貸して」
「?」
私は、山下くんが研修で使っていたノートを奪い
9月13日音21歳!
と書いた。
「よろしく」
「俺8月17日よろしく」
「はいはい」
ま、その頃はもう会ってもないでしょうね。
そう、この研修が終われば
それぞれの部署に配属される。
私は事務職。つまり内勤者。
男達は皆、現場に配属される。
つまりほとんど会うことは無い。
「お前さ」
「ん?」
「彼氏いんの?」
「いない」
私は山下くんの目も見ずに、そうぶっきらぼうに答えた。
「へー」
ついでに私も聞いてあげることにした。
「山下くんは?」
ま、興味無いけど。
「いるよ」
「いるんだ」
意外だった。
この手の人はいないのかと思ってた。
「今週東京に来るんだよね」
「東京に?って遠距離?」
「そう」
山下くんは、社会人で東京に上京したらしい。
つまり、東京に来てまだたったの数ヶ月しか経っていない。
「大変だね」
「なにが?」
「遠距離」
私にもあった。
遠距離の経験が。
私も、高校卒業後に田舎から上京した。
とてつもない田舎っ子であった。
もう慣れたけど。
その時付き合っていた彼と遠距離になり
たった2ヶ月程で別れた。
理由は、私が冷めたから。
元々遠距離なんて、上手くいくと思ってなかったから。
ついでに聞いてやった。
「長いの?」
「2年くらい?」
「えすご」
山下くんは表情を変えることはなかった。
ただ私の質問に答えるだけ。
「記念日にお花とか渡すの?」
なんて、聞いてみた。
この人、絶対そんな事しなさそうな人。
お花持ってるところ想像つかない顔だもの。
「花?」
「そう。花束とか」
「…だっさ」
山下くんは、軽く笑いながらそう言った。
「なんで、女の子は皆喜ぶでしょ!」
山下くんはなぜか楽しそうに
「花束とかださ」
と、鼻で笑っていた。
花束とかださい。
それから
なぜかずっと、この言葉が頭から離れなかった。
こいつ最低だわ。
山下くんの印象は、
ウェイウェイ系の、誰にでもノリが良くて
やっぱりデリカシーの欠けらも無くて
花束とかださって、言う人だった。
やっぱり嫌いだ、こいつ。