テラーノベル
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ラマス自身も、彼女だけの為に準備された特別な場所、スペシャルなプレース(筵の向こう)を目にした瞬間、丹精で愛らしい顔を綻(ほころ)ばせて叫んだのである。
「う、うわぁーっ! うわうわうわあっー!」
どうやら上手に言葉にする事が出来ないほどに感動させてしまったらしい、こういう表情を見ればまだまだ子供、レイブの五つ下である十二歳の少女なんだな…… そんな風に思ったレイブは彼女に声を掛ける。
「ははは、喜んでくれたかな? 水瓶が必要だと思ったからさ、体を拭う用と飲む為の二つ準備したんだよ! それとっ! ほら壁の上部を見てごらんよラマス! あそこに掛けてある道具、あれはランタンって言う貴重な道具でねぇ、俺の師匠、魔術師バストロが大枚をはたいて手に入れた貴重な道具なんだよ? あれが有れば暗くて寂しい夜だって明かりを灯す事が出来るんだよ! 若(も)しかしたら二度と手に入れる事が出来ないかも知れない、値段を付けることが出来ないほど希少な古代の道具なんだけどねぇ、ラマスの歓迎、その気持ちを表す為、だからさっ! 思い切って譲ってあげる事に――――」
「うわぁー、部屋の中にふかふかの干草が一杯敷き詰められているじゃないですかぁっ! うわぁ、夢見たいですぅっ! これってアレですよね? 『ここでゆっくりとおやすみ、ふふふ』的な? ええっとぉ、そうだっ! ベッド、確かベッドってヤツですよね? うわぁ、す、素敵ぃ~!」
レイブはキョトンとした表情を浮かべて返そうとする。
「いいや、その干草はラマスの獣奴(じゅうど)、トナカイのエバンガだっけか? 彼女の為に準備した食べ物なんだけどね、どこに置けば良いか判らなかったから取り敢えずそこに――――」
『レイブっ! それ以上言ってはいけないっ…… 良いか、これは彼女、ラマスの為にお前が準備した、『ベッド』だっ! 良いな、『ベッド』なのだ…… 他の物、特に獣奴の餌、ましてや置き場所に窮(きゅう)して置いてみただけの物ではないっ! 決してなっ、判るよな、レイブ?』
「え、あ、ああ、判ったよギレスラ……」
『ならば良し! ではお前はラマスの相手をしているが良い、エバンガの夕飯の準備は我が行って来るとしようではないか………… おいお前、カタボラだったか…… 一緒に来るか? 小屋に残って居ても退屈なんじゃないかな?』
『ア、ア、グガァッ! タイクツタイクツゥ!』
『ははは、まだ上手く話せないか、ヨシヨシ、これから一緒に学んで行こうな、同胞よ! では行こう、付いておいで、はははは』
『グガァッ♪』
ほんの二、三言のやり取りでスッカリ打ち解けあったらしい二頭の竜種は並んで小屋を後にしたのであった。
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