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エスカミオ本国は――
エンドア沖海戦敗北の報を受けた瞬間、崩れた。
カルド艦隊が、エウロピア大陸へ――
エスカミオへ向かっている。
その事実だけで、十分だった。
恐慌。
そして、醜い仲間割れ。
「そもそもだ!エスカミオ政府とエンドア政府は、
正式に終戦の議定書を交わしている!」
「では、どこにカルドの陰謀を証明するものがあるのだ!?」
「誰だ、こんな馬鹿げた話を言い出したのは!」
「カルド男爵は……むしろ、
大反乱の詳細を国王陛下に報告するために――」
「ああ、そうとも!
あの男の忠誠は疑いようがない!」
誰もが、自分の責任ではないと叫び、
誰もが、現実から目を逸らしていた。
カルドが来る。
その一点だけが、
すべてを無意味にしていた。
一方、その頃。
カルドは。
そんなことは、微塵も考えていなかった。
「王都の外郭から落とす」
地図の上で、指が静かに動く。
「港を押さえ、補給線を断つ。
市街に入るのは、そのあとでいい」
淡々とした声。
そこには、怒りも、正義もなかった。
あるのは、ただ一つ。
――勝つための手順。
カルドは、すでに
王都周辺都市への上陸作戦を組み上げていた。
エスカリオ近海では、
海軍は次々とカルド艦隊の餌食となっていた。
やがて――
上陸は確実との報が届く。
ヘンリー王は、諸侯に動員をかけた。
だが。
「……これだけなのか」
集まった軍勢を前に、
王は言葉を失った。
「参じた貴族は……これで、すべてか」
その声に、誰も答えない。
トマス・ボーフォートが、静かに進み出る。
「陛下、ここは――王都を捨て、再起を」
「逃げる、だと?」
ヘンリーは、かすれた声で笑った。
「どこへ逃げる。
どこに、余の国が残っている」
その頃。
上陸した軍は、三方から王都へ進軍していた。
本軍の先頭には――
白き薔薇。
そして、白い猪の旗。
風を受けて、大きくはためく。
その下で。
リチャードは、カルドと並んで進んでいた。
周辺諸国は、動かなかった。
内戦。
権力争い。
どの国も、それどころではない。
エスカミオの弱体化は望む。
だが、混乱までは望まない。
ゆえに――静観。
世界は、この戦いを見ていた。
王都周辺では、いくつかの小競り合いがあった。
だが、それだけだった。
流れは、すでに決していた。
止める者はいない。
抗う力も、もう残っていない。
そして――
カルドは、ついに。
リチャードとともに、王都へ入城する。
門は、静かに開かれた。
歓声はない。
抵抗もない。
ただ――
ヘンリー王の時代は終わった
カルドは――
勝者の権利を、十二分に行使した。
王宮を占拠。
議会を制圧。
そして、教会すらその支配下に置く。
#追放
もはや、逆らう者はいない。
ヘンリー王とその子は拘束され、
エスカリオ塔へと送られた。
チューダー朝に連なる有力貴族たちは、
ことごとくその権利を剥奪される。
赦しはない。
例外もない。
やがて、カルドは議会に姿を現す。
「王位継承に関する法の見直しを求める」
ざわめきが走る。
「そして――」
一拍、間を置いて。
「リチャード王の即位を」
静まり返る議場。
さらに続ける。
「加えて、余は護国卿の任に就く」
その言葉は、要請という形を取っていた。
だが、誰もが理解していた。
――これは命令だ。
議会は、沈黙したまま従った。
その日、法は書き換えられ、
王は選ばれた。
いや――
選ばされた。
この頃、カルドは
政敵たちからこう呼ばれていた。
「貧民育ちの無法者」
血筋もなく、伝統も知らず、
ただ力だけでここまで来た男。
だが。
その“無法”こそが、
すべてを覆したのだった。