テラーノベル
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孤独というものには慣れているはずだ。昔から誰かと徒党を組むのも苦手だったし、誰かの下で働くのも苦痛だった。両親や兄弟とはとっくに縁が切れていたし、それでも寂しさを感じることはなかった…。
《ごめんなさい、そろそろ晩ご飯の支度をしないといけないから》
家族との時間のために、俺との時間を打ち切りにするそんなミハルに、言いようのない苛立ちがあった。
〈そっか。主婦業も頑張って〉
物分かりのいい男のフリでしつこくはしないけれど、LINEが途絶えると手持ち無沙汰になってしまう。そんな時間が嫌で、さらに【花開く】のサイトで寂しそうな女とやり取りをする。
___ん?寂しいのか?俺は
以前、ミハルの気をひくためにわざと、ミハルには返事をせず他の女とのやり取りをしていた。案の定、ミハルは嫉妬心を抱いて俺に質問をしてきた。あの時は、見張られてるようで気分が悪いと突き放したし、それも心理戦だったのだが、内心悪い気はしなかった。
___俺のことを見ている誰かがいる
それは鬱陶しさと同時にホッとした。
今はこんな風に、家族の後回しにされてしまうことに苛立っている。そしてそんな自分に驚く。
パーティーの後に求めてくる女たちは、俺のことを一時の娯楽にしか考えていない。それは承知している。欲望さえ満足させればそれ以上のものは求めてこない。
ミハルは違う。カラダよりも俺の気持ちがどこにあるか?何を求めているか?を知ろうとしてくる。
___それが好かれているということか
『愛してます』と言わせてみたのも、ミハルの気持ちを確かめたかったからか。確かめてどうする?
『翔馬さんは?』と訊かれて、「俺も愛している」とは言えなかった。
ミハルが言う“愛してる”には、俺は答えられない。
『愛情を持って接している』そう答えるだけだった。
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