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私もセックスレスだ。
夫の祥平《しょうへい》は私より三歳年下で、同僚だった。
十年前に結婚した時に私は退職し、今はパート勤めをしている。
三十二歳で結婚し、二年後には不妊治療を始め、二年で諦めた。
それから六年、セックスこそしなくなったが、私たちは仲が良い。と思う。
祥平は毎日ほぼ決まった時間に帰宅し、一緒に食事をする。
たまにお酒も飲むし、ソファに並んでテレビも見る。
同じベッドで寝ているし、朝ご飯も一緒に食べる。
ただ、セックスしていないだけ。
違う。キスもしていない。ハグも。
史子が私を飲みに誘わなかったのは、私がレスだなんて思ってもいないからだ。
私は史子と美佳の前で祥平の愚痴を言ったことがないし、休日も一緒に出掛けたりしていると知っているから、いつまでも恋人同士のような仲のいい夫婦だと思われているのだ。
間違いじゃない。
ただ、触れ合わないだけ。
だが、それを二人に言っていないし、言うつもりもない。
私たち三人は、大学時代に同じバイトをしていた。
卒業までの二年ほど、週に三日は顔を合わせていた。
バイト以外で会うことはなかったけれど、バイトの休憩中にお互いの友達のことや彼氏の話をしたりするくらいには、仲が良かった。
大学を卒業してからは、一度も会わなかった。
だから、再会した時は、すぐに思い出せなかった。
私は結婚当初、購入したマンションの完成が遅れたせいで一時的に賃貸マンションに住んでいた。
その時、同じマンションに住んでいたのが史子。
史子は結婚してから何年もそのマンションに住んでいたが、三か月後に完成するタワーマンションを購入済みだった。
さらに偶然にも、そのマンションには美佳の義両親が暮らしていた。
その時から、私たちは時々ランチに集まる付き合いが始まった。
付き合い始めた当時は気が合ったが、最近はそうでもないと思っている。
美佳は時折、私と史子に対して嫉妬したり卑屈になったりする。体型だったり自由さだったり、理由は様々。
と思えば、子供が剣道の大会で優勝したとか、その実績から高校推薦をもらえたとか、自慢げに話す。
史子が娘の自慢をしたのは、超有名進学校に合格した時だけ。
代わりに、仕事の話をよくする。
私と美佳はパートだが、史子は産休と育休を経て、大学卒業後に就職した一流企業に復帰していた。
子供を諦めた今となっては、私もパートではなく正社員で働けるのだが、夫は私がどうしてもと思っているのでなければ、その必要はないと言う。
人には色んな事情があり、夫婦や家族には色んなカタチがある。
みんな、求めるモノも手にできるモノも違う。
なのに、他人と比べる。
幸せを比べるのは難しいのに、比べたがる。
人間は、欲深いから。