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#仕事
#裏切り
#モテテク
「……養育費の支払い拒否、および陽太の親権者変更の申し立て?」
弁護士から届いた書類に、私は思わず乾いた笑いを漏らした。
拘置所の中にいながら、直樹はまだ私をコントロールできると信じている。
彼は法を逆手に取り
「自分は今、無収入であり、詩織の高額な収入を考えれば養育費の支払いは不要。むしろ、母親の復讐心にさらされている陽太には父親が必要だ」
という支離滅裂な主張を突きつけてきたのだ。
直樹は知っていた。
私がどれほど陽太を愛し、あの子を守るために戦ってきたか。
だからこそ、陽太を「人質」に取ることが、私に最もダメージを与える唯一の攻撃だと考えたのだろう。
「詩織さん。直樹被告は、あなたを精神的に追い詰め、裁判を長引かせて服役を遅らせるつもりです。あるいは、親権を争うことで、あなたから和解金を引き出そうとしている」
「……そんな言葉、私の帳簿には存在しません」
私は冷徹に、ある「記録」を整理し始めた。
それは、直樹がかつて陽太に向けて放った言葉の数々
そして彼が不倫相手との旅行や自分の贅沢品に費やした金額と
陽太の教育費を削った金額を対比させた「父親失格の貸借対照表」だ。
そして私は、ある「切り札」を手に法廷へと向かった。
裁判の日。
アクリル板越しに座る直樹は、やつれながらも
私を屈服させてやろうという卑屈な光を瞳に宿していた。
「詩織……。陽太は俺の息子だ。お前みたいな、金と復讐に憑りつかれた女に育てられるのは、あいつにとって不幸なんだよ。……今すぐ訴えを取り下げて金を払え。そうすれば親権は諦めてやる」
「直樹。……あなたは、一度でも陽太の『1円』の重さを考えたことがある?」
私は、彼が隠し持っていた実印を使って偽造しようとした「過去の通帳」を突きつけた。
「これは、陽太が生まれた日から私がコツコツ貯めていた、陽太の将来のための口座」
「……あなたはそれを勝手に解約しようとして、印鑑が合わずに諦めたわね。その履歴、すべて残っているわ。…子供の未来を盗もうとした人間に、親権を語る資格なんてない」
私はさらに、陽太本人が書いた「陳述書」を裁判官に提出した。
『パパは、僕にナイフを向けた時、僕のパパじゃなくなりました。僕は、ママと二人で生きていきたいです』
陽太の震えるような、でも力強い筆跡。
それを見た瞬間、直樹はガタガタと震えだし、言葉を失った。
「直樹。あなたの『父親としての権利』は、今日、この瞬間に『ゼロ』に清算されたわ。…これからあなたが支払うのは、金銭的な養育費じゃない。自分の過ちを数え続ける、終わりのない孤独よ」
裁判官の宣告が響く。
親権変更の申し立ては即座に棄却。
直樹の最後の一撃は、自分自身の喉元を貫く結果となった。
私は裁判所を出て、春の陽光を浴びた。
家計簿の「負債」の欄から、直樹の名前がまた一つ、消えていった。
【残り59日】