純がエタニティリングを恭しく取り出し、恵菜の左手の薬指に、キスを落とす。
「俺が恵菜の指に、着けてもいいか?」
「もっ……もちろん……です……」
愛しい女の左手を、そっと持ち上げ、色白の薬指に嵌めていくと、緩くもなく、きつくもないジャストサイズだった。
「純さん……本当に…………ありがとうございます……。すごく嬉しくて…………最高に幸せな誕生日です……」
「誕生日プレゼントとして、エンゲージリングを渡してプロポーズする。恵菜と恋人になってからの…………俺の密かな夢だったんだ。恵菜、夢を叶えてくれて…………本当にありがとう。これから先、ずっと一緒だからな?」
純が恵菜の肩を引き寄せ、胸に包み込む。
「プロポーズもしたし、恵菜も敬語じゃなくて、普通に俺と話して欲しいな」
「はっ……はい……………じゃなくって…………うっ……うん……」
頬を染めながら答える彼女が、狂おしいほどに愛おしく感じる純だった。
二〇二四年のクリスマス。
あの日、二人が立川の駅前でぶつからず、ただすれ違っていただけだったら、一途に誰かを想い、愛する事を知らないまま、行きずりの女と遊び続けて漫然と人生を送っていた、と純は思う。
彼は恵菜に、プロポーズで『運命』と言ったが、あの『痛い出会い』は必然だったのではないか、と感じずにいられない。
思い切りぶつかってしまったからこそ、ようやく出会えた最愛の女、相沢恵菜なのだから。
二人を乗せたクルーズ船が、レインボーブリッジの下を再び通過していくと、宝石を散りばめられたような光景が広がっている。
「恵菜。これからも、夫婦になっても…………ずっと俺と……恋をしよう」
「純さんも…………私と……恋をし続けよう?」
「当然だろ? 恵菜だけは俺が守って、俺が癒して、俺が…………たくさん笑顔にさせるんだからな?」
「ありがとう。純さん…………大好き。あ……愛し…………てる……」
顔を赤らめながら愛を告白する恵菜に、純が小さな顎に触れ、長く深いキスを交わすと、彼女も彼の両腕を掴み、口付けを受け続けた。
東京湾周辺の色鮮やかな粒子が、優しく二人を包み、染め上げていく。
海上から見渡せる、極上のナイトスケープは、今だけは純と恵菜のものだ。
二人の誕生日とプロポーズ成功の祝福、新たに幕開けした二人の人生と、近い未来の華燭。
唇をそっと離し、都心の華やかな絶景を見渡した純は、レインボーブリッジの青白い光と、恵菜の左手の薬指に煌めく愛の証が、さらに輝きを放ったような気がした。
——La fine——
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