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めめー✨✨✨ あべちゃんとられないように頑張って👯
え〜どういう展開なの? 期待しかないじゃ〜ん!💖👍
うふふ。🖤もだんだん思春期してられなくなるねぇ🤭
10月の終わり。
3年生の2学期も後半になるというのに、一人の転校生が突然、亮平のクラスにやって来た。
「深澤辰哉です、よろしく」
彼は、一際目立つ金色の髪に、両耳に、合わせて5つもピアスを嵌めた、かなり派手な男子生徒だった。
風紀委員に推薦されるほど模範的な自分(実際には学級委員を務めていた)とはどこまでも対照的なその姿に圧倒され、亮平は思わず言葉を失ったほどだ。
クラスメイトたちも亮平と同様、明らかに目立つ彼を見た途端、遠慮なしにざわついている。ここは公立中学なのでそれほど校則は厳しくない。それでも受験を目前に控えた3年の秋に、そんな身なりをしている生徒はさすがに数少なかった。そういうタイプの生徒は、ほとんどが高校進学に後ろ向きなヤンキーばかりだ。
深澤は、ちょうど隣りの席が空いていた学級委員の亮平の隣りに座らされた。
せっかく窓側の静かな席で気に入っていたのにと、平穏な日々は昨日までのものとなりそうだと亮平は心の中で嘆く。
「よお、俺、深澤。ふっかって呼んでよ」
「俺は渡辺亮平。よろしくね」
軽く握手を交わすと、深澤はその後もちらちらと亮平を見てくる。
「どうかした?」
「いや、すんげー可愛いなと思って」
周囲に聞こえるか聞こえないかのような声量で深澤が言う。
その言葉に亮平の頬が熱を持った。慌てて何か言い返そうとするが、パクパクと口が動くだけでちっとも言葉が出て来ない。
しばらく亮平を舐めるように見定めた後で、授業にはまるで興味はないといった様子で深澤は机に突っ伏し、堂々と居眠りを始めてしまった。転校初日、何から何まで肝の据わったこの転校生に、亮平はほんの少し興味を持った。
午後になると、午前中まで深澤を遠巻きに見ていたクラスメイトたちが、自然と彼のもとへと集まり始めた。どこから来たの?だの、前の学校はどんなところ?だの、矢継ぎ早に続く質問に、深澤は、面白おかしく答えては、クラスメイトの笑いと興味を誘っている。
ついに放課後には、深澤はみんなに『ふっか』と呼ばれるようになり、このたった数時間でスクールカーストの上位に上り詰めていた。
亮平はと言えば、そんな深澤を見るともなく観察していて、そのコミュニケーション能力に舌を巻いていた。とても自分には真似できない。
しかし、帰りのHRも終わり、掃除当番を済ませて帰ろうとしたところを、亮平は突然、深澤に呼び止められた。
「亮平、一緒に帰ろうぜ」
「えっ」
周りには彼を取り囲む取り巻きたち。
深澤はそんな彼らを見回すと、とんでもないことを言い出した。
「俺さ、こいつと付き合うって決めたんだ。だからみんなまた明日な」
そして強引に亮平の腕を掴むと、ぐいぐいと彼を引っ張り、教室を出て行った。後ろからは歓声が聞こえる。男子生徒も女子生徒も、みんな大騒ぎで彼らを囃し立てた。亮平は耳まで真っ赤になって、とても平常心など保ってはいられなかった。
「ちょっとっ!どういうつもり!?」
昇降口で、深澤に掴まれた腕を振り払うと、亮平は声を裏返らせながら抗議した。
しかし、抗議された深澤はあくまでも涼しい顔をしている。
「ん。一目惚れ」
「はぁっ!?」
そして、靴箱の前に立つ亮平の顔のすぐ横にどんっと勢いよく腕を突くと、びっくりした彼の耳元で甘い声で囁いた。
「優しくするよ?俺」
「ちょっと待ってよ!俺たち、今日が初対面だろ…」
「だーかーら。俺の一目惚れって言ったろ?」
深澤の顔が自分の鼻先まで近づいて来る。キスされる…!と思って亮平が思わず目を瞑った瞬間、ぼんっ!と鈍い音がすぐ近くで、した。
「いってぇ…」
「あー、わりぃ。ボールぶつかっちった」
おそるおそる亮平が目を開けると、深澤は後頭部をさすりながら、後方にいた生徒を睨みつけている。
そこにいたのは……
「蓮…」
蓮は、『せんぱーい、ボール取ってくださぁい』などと悪びれもせずに言っている。床に転がったままのサッカーボールを亮平が拾って渡してやると、蓮は何も言わずにぷいっとグラウンドへと駆けて行った。
なんだかわかんないけど、助かった…
亮平の胸は、まだ早鐘のようにドキドキしている。そして、亮平は、そのまま逃げるように鞄を抱え、走って去って行った。 深澤はそんな亮平を、何も言わずにじっと見ていた。