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ころ
12
「…理由、分かったでしょ。これで納得してくれないかな」
懇願するような気持ちで、顔を俯かせる。
もうこれ以上、自分で自分を抉るのはキツすぎるから。
だから終わりにさせてください。
「……そんなんで、納得出来るかバカ」
俺の願いも虚しく、佐久間くんがぽつりと呟いた。
これ以上どうすればいいのか分からなくてきつく目を閉じると、両頬にふわりと温もりが触れる。
驚いて目を開けると、さっきより穏やかな顔をした佐久間くんが両手で俺の頬を挟むように触れてた。
「蓮、お前さ…俺があの日のこと何にも覚えてないって思ってる?」
「え…」
「覚えてるよ。というか、少しずつ思い出した。思い出してすぐは、すげー恥ずかしかったけど…俺めちゃくちゃ『もっと』とか『気持ちいい』とか言ってたから」
少し頬を赤らめながら、佐久間くんがそう呟く。
それは俺も覚えてる。というか、その時の甘い声が耳から離れなくてずっと困ってるよ。
「しばらくはさ、思い出しても恥ずかしいだけだったけど。時間が経って冷静になってくると、違うことに気付けたっていうか。だから俺、あの時拒否しないで受け入れてたんだなって思った」
「…違うことって、何…?」
「俺を抱いてる蓮が、ずっと優しかったこと」
「は…?」
佐久間くんが何を言ってるのか分からなくて戸惑う。
そんな俺を見上げて、桜色の頬をした佐久間くんが微笑んだ。
「ずっと優しかったし、すごく大切に抱かれてたなって。多分酔っ払っててもそれに気付いてたから、気持ち良かったしもっとして欲しいって思ったんだと思う」
「は? え…??」
「ふはっ、だいぶ混乱してんなお前。可愛いな」
吹き出した佐久間くんが背伸びして、両手で俺の頭をわしゃわしゃ撫でる。それ、俺が俯き加減だから何とか届いてるよね。
そんな人に可愛いとか言われるの、心外なんだけど。
というか、ちょっと待って。マジで思考がまとまらない。
「え、つまりどういうこと…? 何が起きてるの?」
「人間ってこんなに混乱するんだなぁ…何かごめんな。でも答え合わせする前に、一つ確認していいか」
「え、何…?」
こんなにパニックなのに、この上更に何を聞かれるんだろう。
身構えてる俺の頬を、佐久間くんがもう一度両手で挟んだ。
そうしてじっと俺の目を見つめる。
「…俺のこと好きって、本当に? まだ好き?」
「それ、は…」
「教えて、蓮。もうあんな風に触れないように離れなきゃって、そう思い詰めちゃうくらい、俺のこと好き?」
「…そこまで分かってるなら、何でそんなこと聞くの…」
「蓮の口から聞きたいから。お願いだから、教えて」
どっちにしろお終いにするなら、もういいか。
最後くらいずっと抱えてきた想いを吐き出しても。
「…好きだよ。今でもまだ、どうしようもないくらい好き。佐久間くん以外を好きになる方法が分かんないんだ。でも側にいたらまた触れたくなっちゃうから…お願いだから距離を取らせてよ…」
自分の想いと、欲と、弱音と。絞り出すように口にする。
しばらくじっと俺の顔を見つめてた佐久間くんが、不意に動いた。
縮められた距離に驚く前に、俺と佐久間くんの唇が重なる。
「…っ、ん…っ」
「ふ、ぁ…っ」
軽く触れて離れるわけでもなく、深く深く探られて思考が固まった。
抵抗することも応えることも出来ないまま、佐久間くんの唇の甘さと柔らかさだけが鮮明に感じられる。
何で? 何で俺、佐久間くんとキスしてるんだろ。
「…っは…すげーびっくりした顔してる。可愛いな、お前」
しばらくして唇を離した佐久間くんが、俺の顔を覗き込みながらふふっと笑う。
下手をしたらもう一度唇が触れそうな距離のまま、おそるおそる口を開いた。
「…何で、キスなんて」
「……あの日のこと、ずっと忘れられなかった。蓮が大切そうに触ってくれた感触がさ、全然消えなくて…もっと蓮に抱かれたいって思っちゃったんだよな…」
「え…」
「でもそんなのさ、ただヤりたいだけみたいじゃん。だから言えなくて、距離置いて…でもさ、お前があんまりにもあからさまに離れるもんだから。嫌でも別のことに気付いちゃったんだよな」
「別のことって、何…」
「蓮と離れたくないって。ずっと俺のこと見てて欲しいし、俺の側にいて欲しい。俺以外、特別な意味で触らないで欲しい。そんなこと思ってるのに気付いちゃった…」
佐久間くんはそう言って、困ったようにふにゃりと笑う。そして俺の頬に触れていた両手を、するりと首の後ろに回した。
そのまま、至近距離から俺と目を合わせてくる。
「お前に抱かれたから、それで気持ちが引っ張られてんのかなとも思ったけど…お前の話聞いて分かった。ねえ、蓮…好き。もう一度、俺のこと抱いて」
「何、言って…それこそ、俺があんな告白したから引っ張られてるだけなんじゃ」
「違う。お前の行動が、全部俺の為だって分かっただけだよ。あんなに大切そうに抱かれて。その後も俺が不快にならないように、迷惑掛けないようにって…お前、俺のことばっかりなんだもん。こんなに蓮に大事にされてるんだって思ったら、嬉しくてドキドキして、堪んなくなった」
佐久間くんの腕が俺の首をぐっと引き寄せて、そのままぎゅっと抱き着いてきた。
首筋に当たる髪がくすぐったい。
何より、耳元で囁く佐久間くんの甘い声音がダイレクトに響いて。それは俺の理性とか我慢とか、全部取っ払うには十分だった。
佐久間くんに負けないくらい強く、その背中を掻き抱く。
「一度でなんて、収まるわけないだろ…っ。俺がどれだけ佐久間くんを好きだったと思ってんのっ?」
「ふは、分かんない。だからさ、そういうの全部教えてよ。蓮がどんだけ俺のこと好きか教えて」
「だったら、佐久間くんも教えて。何で俺のこと好きになってくれたのか、そういうの全部」
「さっき言ったじゃん。お前が俺のこと、大切に抱いてくれたからって……っん」
少し腕の力を緩めて俺の顔を覗き込んできた佐久間くんの唇を奪った。ちゅっ、ちゅっと何度も触れ合わせると、佐久間くんの腕がまた俺の首に強くしがみつく。
唇をぺろりと舐めて出来た隙間から舌を差し入れて、ねっとりと佐久間くんの舌に絡めていく。
佐久間くんも応えてくれて、もう我慢なんて出来そうもなかった。
本当はずっと、こんな風に触れたくて仕方なかったんだから。
「…ここじゃまずいから、俺の家、行こ…?」
「ん、どこでも連れてって」
少し潤んだ瞳でふわりと微笑んだ佐久間くんは、今まで見た中で一番綺麗だった。
コメント
5件

好き過ぎる展開です🩷
語彙力がなさすぎて全くいいコメントが打てないけども めっっちゃくちゃ良かったです✨ めめの片想いに切なくなり、さっくんのイケメンぶりにきゅんきゅんしました‼︎ 実ってよかった😭笑
わあ、ついに佐久間くんの本心が聞けてよかったです…! ずっと蓮くんの気持ちばかりが溢れてて切なかったけど、「優しく抱かれた」って気づいてくれた佐久間くんの言葉に、じんと来ました。キスのシーンも甘くて、もう一度一緒にいる道を選んだことに胸が熱くなりました💕