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『来るなら言ってくれたら良かったのに』
私達は先生の車に乗って帰る。
さすがにこの雨の中、結愛ちゃんだけを残して帰る訳には行かず、送っていくことになった。
「来なくていいっていうだけだろ?」
『まぁたしかに。』
『結愛ちゃん、次曲がった先だよね?』
「はい。あの」
結愛ちゃんが口を開けて
何かを聞き出そうとしている。
「2人ってどーやって知り合ったんですか」
『⋯え?』
「さっき”先生”って言ってたから」
『あーっとね』
元教師と生徒なの。
なんて言ったら受け止めて貰えるだろうか
これで引かれて
結愛ちゃんと関係が気まづくなったら嫌。
「元教師と生徒だよ」
そんな私の考えなんてお構い無しに
先生が言い始めた。
「えっ⋯?」
ほら。
完全に引かれた
それっていけない恋なんじゃないの
って顔をしてる。
「なに?」
「いやっ、何も」
車中、変な空気が流れる。
それが嫌だったのか結愛ちゃんは
「もう、大丈夫です!」
『え⋯?』
「ありがとうございました」
って言って車を降りて走っていってしまった 。
「⋯」
先生もちょっと落ち込んでるのか
何も話さず、小さくため息を零す。
『先生は悪くないです』
「⋯」
『結愛ちゃんも思考が追いついてないだけ』
「⋯そうなのか⋯?」
『はい、きっと分かってくれます。』
きっと、分かってくれるはず
結愛ちゃんなら。
・
それから2人で家に帰ってご飯を食べる。
今日も何気ない話をする。
久しぶりに学校に深澤先生が来て 先生の周りにいた女の子達が全員居なくなった。とか
『あ⋯』
「ん?」
『結愛ちゃんから連絡が。』
“今日はすみませんでした。”
“〇〇さん達の関係に驚いてしまいました”
“全然いいと私はおもいます。”
『気、負わせちゃった。』
「いいだろ」
先生がご飯を口に詰め込みながら話す。
「俺たちは俺たち。」
「結愛って奴には関係ないだろ?」
『⋯ですね 笑』
関係ない。
なんて結愛ちゃんに言っていいのかわかんないけど、本当はそうだから。
『あとちょっとだよ』
「ん?」
『結婚式、来週の日だもん』
「早いよなぁ」
『あ!サロン予約しないと』
「サロン?」
『ちょっとでも綺麗にしないと』
「もう綺麗だろ」
『たくさんの人に見られるんだから』
私は未だに
今みたいな”もう綺麗だろ”のような先生が時々放つ言葉に一々ドキドキしちゃう。
顔には出さないから
先生は気づいてないと思うけど。
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