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#恋愛
ばたっちゅ
20,605
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meyu0530
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土曜日の夜。昼間、伊織さんは外勤のため家を空けていたが、明日は一応休み。だからこそ、決戦は今夜しかないと数日前から決めていた。
いつもより念入りに体を洗い、いつもより長く湯船に浸かる。危うくのぼせそうになる直前でお風呂から上がると、頭の中でひととおりのチェックリストを広げた。
無駄毛処理は問題なし、香りの良いボディローションで保湿したら、歯磨きもちゃんとして、新しい下着は――脱衣所に持ち込んだ、淡い水色のランジェリーを眺める。
少し若々しすぎた……?
伊織さんの好みがわからないから、インターネットでリサーチしてみたのだが、今更になって不安になってきた。
……大丈夫。暗くて見えないんだから。
おろしたてのランジェリーを身に着けると、鏡に映った自分の体を少しだけひねらせる。この角度でも見える、背中に残った痛々しい痣に、気持ちが沈みそうになった。
でも、伊織さんは気にしないと言ってくれたし、心無い言葉を吐くような人じゃないはずだ。何より、いつか彼が言っていたように”そんなこと”を気にしているのは、私自身だけなのかもしれない。
不安な気持ちを抑えつつ、もう一度「大丈夫」と言い聞かせると、パジャマに袖を通した。
◇
ど、どうしよう……。長風呂しすぎちゃった……。
予定より時間がかかってリビングへ向かうと、伊織さんは既に寝室へ向かったあとだった。気付けば一時間以上もお風呂場にいたようだ。
先に寝てしまっても仕方がない。後を追うように寝室へ入ると、ベッドサイドの明かりが灯る部屋で、彼が寝返りを打ってこちらを見た。
「ごめんね、起こした?」
「大丈夫だよ、緋真のこと待ってたから」
「えっ」
「せっかくだから一緒に寝ようと思って。お風呂長かったから先に布団入ったけど」
「あ、そうだよね。つい長風呂しちゃって」
一瞬、伊織さんも同じ気持ちなのかと期待したけれど、勘違いのようだ。
ベッドに入ると、いつものように「電気消す?」と聞かれたので、返事に困って黙り込んでしまった。
「……緋真?」
こういうのはムードが大事だと郁ちゃんにも言われたし、私なりに調べた結果でもそうだった。
まずは、相手をじっと見つめて……。
無言で伊織さんへ視線を向けると、想像よりも近い距離で、端正な顔がこちらを覗き込んでいた。それだけで急に照れくささがこみ上げてきて、咄嗟に顔を背けてしまった。
見つめるどころか、まともに視線を合わすことができないなんて。とんだ意気地なしね。
「どうかした?」
心配が混ざった声色で、伊織さんが体を起こす。その声に答えるよりも先に、自ら距離を詰め彼の胸元に顔を寄せた。
誰かに教わった通りに事を運ぶなんて、やっぱり私には無理だ。形振りなど構ってる余裕などないのだから。
「緋真……?」
「あの……」
上手く頭が回らない。寄せた胸の温もりだけで、のぼせてしまいそう。自分自身の緊張を誤魔化すため、彼のシャツをそっと掴んだ。
「……したい、の」
「は……」
「……抱いてほしい」
あまりにストレートに思いを伝えてしまったせいか、伊織さんからの返事はない。羞恥で顔を上げられずにいると、彼の手が頬を撫でた。
誘われるように顔を上げれば、私の本心を探るような色濃い瞳がこちらを見つめていた。
「……本気で言ってる?」
普段から私は冗談を言うタイプではない。それは伊織さんもわかっているはずだ。敢えて聞くのはきっと、真意を確かめたいからなのだろうか。
いずれにしても、先ほどの言葉を取り消す気はない。しっかりと頷けば、彼の顔がすぐそばまで近づいてきて、キスの予感にゆっくりと目を閉じた。
暗闇の中で、唇に柔らかい感触が触れる。サラサラとして少しだけ温かい。控えめに押し当てられた唇は、まるで何かを確かめるかのようにそこから動こうとはしない。
じっとこらえていると、微かな吐息が唇を撫で、上下の唇をゆっくりと食み始めた。
「っ……」
数回食まれると、乾いた唇が次第に潤いを持つ。気持ち良いよりも幸せで心が満たされていくのを感じていると、微かに開いた唇から熱い舌が差し込まれた。
行く先を定めず、浅いところで蠢いたそれに、ぎこちなく舌先を絡ませる。粘膜を辿られながら深いところで絡み合えば、堰を切ったように激しいキスに変わった。
たまに漏れる吐息まで飲み込むような口づけに、頭がくらくらとしてくる。
無我夢中でキスを交わしたあと、至近距離で視線が絡んだ。窺うような瞳に囚われ、引き寄せるように伊織さんの腕を掴めば、彼は首元へと顔を埋めた。
「ぁっ……」
耳の近くで、控えめなリップ音が響き渡る。腰の曲線に沿ってしなやかな腕が伸びてきて、先ほどとは違う感覚に身を強張らせた。
「……硬くなってる。緊張してる?」
「だい、じょうぶ……」
途中でやめてほしくなくて、精一杯に呟く。しかし、鼓動は加速するばかりだ。
自分でもわかるほど岩のように硬くなった体は、思うままに動かすことができない。
「本当に?」
言いながら、伊織さんが緊張をほぐすように絡めとった手に口づけを落とす。
気遣ってくれているのだとはわかりながらも、表情はどこか扇情的だ。
――たった数秒前に強がったばかりだけれど、彼には取り繕ったところで意味がない。
「うそ……本当はすごく緊張してる。はじめて、なの」
「え……」
「上手くできないと思うし、面倒かもしれないけど……」
それでも、伊織さんに抱かれたい。その思いをどう伝えればいいかと視線を彷徨わせていると、密着していた熱い気配が遠ざかっていった。
「伊織さん……?」
”はじめて”がいけなかったのだろうか。完全に行為を止めてしまった彼は、程よい距離を保って私を見つめた。
「……さっきどうして抱いてほしいなんて言ったのか聞いてもいい?」
「それは……。私たち結婚したのにいつまでも夫婦らしいっていうか、そういうことがないから、不安で……」
「不安?」
「伊織さんにとって私は魅力がないのかなとか、逆に我慢させてるのかなとかいろいろ考えちゃって……」
伊織さんはいつだって優しくていい夫でいてくれるけれど、彼の本心はまったくわからない。勢いで不安をぶつければ、彼は小さく息をついた。
「……ちゃんと話しておけばよかったか」
「ちゃんとって?」
「緋真に魅力がないわけじゃない。ただ、俺たちは恋愛結婚ではないし、緋真の気持ちが追い付いてくるまでは何もしないつもりだった」
そう言って、伊織さんの指がさらりと私の髪を梳いた。
「勇気出して言ってくれたんだよな。ごめん、緋真にそんなこと言わせて」
「そんな……」
「でも不安が理由なら、焦らないで。緋真がはじめてだって言うなら尚更、ちゃんと抱かせてほしい。流れでじゃなくて」
「っ……」
ここまで準備してきたのだ。私としてはこのまま抱かれる覚悟はできている。
だけど伊織さんの誠実な思いが伝わってきて、胸がきゅうっと締め付けられた。
コメント
1件
あああ第11話読み終えたよ〜!😭💕 緋真ちゃんの勇気、マジで尊すぎる…!! 「抱いてほしい」って自分から言えるの、どんだけすごいことか! しかも伊織さんが「ちゃんと抱かせてほしい」って返すところ、誠実でエモすぎて胸キューってなったよ…!! はじめての不安とか緊張とか、すごく丁寧に描かれてて感情移入しまくりだった🥺💖 次、どうなるんだろう…ドキドキが止まらない! 続きめっちゃ楽しみにしてるよ〜🌟