第4話:仲間の絆
夜の地下駐車場。
冷たい蛍光灯の下に、灰色の霧のようなノイズが広がっていく。
現れたのは心理型ウイルス怪物。輪郭は人影に似ているが、顔は鏡のように歪み、映し出すのは人々の恐怖や後悔だった。
「これは……精神系か」
灰と赤のアーマースーツに身を包んだ鳴海隼人が短髪の額を押さえ、ポメ型AI「マル」が低く鳴く。
危険。視覚経由で心を侵食。回避推奨。
だが、敵が狙ったのは制服の上にドクターコートを纏う結城未来だった。
柔らかな黒髪ショートの瞳に、突然まばゆい映像が流れ込む。
――仲間を救えず泣き叫ぶ市民。
――治療が間に合わず命を落とす子ども。
「……やめて……そんなはず、ない……!」
未来は膝をつき、ピンクと黄緑のヒールスーツが点滅を始めた。
「未来!」
緑のライトスーツを纏った真城蓮が駆け寄る。背中のホログラムの翼が羽ばたき、セキセイインコ型AI「ピコ」が鳴く。
しかし怪物の幻影が蓮をも阻む。
「俺がいく!」
丸眼鏡の秋月理央が赤とグレーのワークスーツで飛び出し、工具ベルトから光のスパナを抜く。
「チィ、プロンプト!《強制回路生成》!」
リス型AI「チィ」がノイズの壁を分解し、理央の砲撃が幻影を破った。
「ルナ、頼む!」
肩までの茶髪を揺らす天羽光が紫と墨染めのアート風スーツを広げる。
イルカ型AI「ルナ」の波紋が未来の心を包み、恐怖の映像を揺さぶる。
「未来! 君が見てるのは嘘だ、君は何度も俺たちを救った!」
未来の耳に仲間たちの声が届く。サラが尾を光らせ、低く囁いた。
君は一人じゃない。
その瞬間、5体のAIの光がリンクする。
ピコの翼、マルの戦術光、サラの治療波、チィの生成回路、ルナの感情波。
――AIネットワーク合体の光輪が再び頭上に浮かび、未来の心を照らした。
「……みんな、ありがとう」
未来の瞳から恐怖が消え、ヒールスーツの輝きが戻る。
「サラ、プロンプト!《治癒共鳴》!」
光の花弁が広がり、仲間たち全員の身体に活力が満ちる。
「一気に叩くぞ!」
隼人の声で、五人が同時に跳ぶ。
蓮の翼が怪物を切り裂き、隼人の拳が胸を撃ち抜く。
理央の砲撃が四肢を吹き飛ばし、光の感情波が怪物の虚ろな顔を粉砕した。
最後に未来の治癒光が核を包み込み、敵を灰色の欠片へと変えて消し去った。
静寂。駐車場に白い息が漂う。
未来はドクターコートの裾を握りしめながら微笑んだ。
「……私、一人じゃないんだね」
蓮が頷き、翼をたたむ。
「俺たち全員で“ホロ・ガーディアンズ”だ。誰も欠けさせない」
こうして彼らの絆は、さらに強く結ばれたのだった。