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「あ、アル。どうしてここに?」
「それは、こっちのセリフ。どうして、ランベルトの部屋から出てきたの?」
トン、と詰め寄られれば、僕は、思わずランベルトの部屋のほうに視線を向けてしまった。それがよくなくて、アルフレートに顎を掴まれ、強制的に目を合わせられる。ラピスラズリの瞳は不安げに僕を見つめていた。
「……部屋に帰るときにランベルトに出会って。それで、この間の研修での出来事についてちょっと」
「まあ、彼もだいぶ落ち着いたみたいだしね。危害はないと思うけど……」
アルフレートは、少し落ち着きを取り戻したようにそういうと「ごめんね?」と、謝ってきた。彼が心配するのも無理ないと、僕こそ……と首を横に振る。
それから、アルフレートに手を引かれ、自室へと戻る。自室にはうっすらと夕日が差し込んでおり、少し暗くて、オレンジ色に染まっていた。静かで、特別何か物が置いてあるわけではない質素な部屋。田舎に住んでいた僕たちからしたら、ぜいたくは敵だったし、基本的に物が少ないほうがいいみたいな週間はあって。でも、今の僕たちは貴族だ。
「アルは何の用事だったの?」
「俺は、星天祭のこと詳しく聞いてたんだよ。まあ、学園の祭りじゃなくて、国の祭りなんだけど。それについてちょっとね」
「そう、星天祭って、来週末に行われる行事だもんね」
七月の頭にこの国で行われる祭りの名前。
星天祭――
この国で流星群がよく見える週で、他の星々と、この惑星が一番近い距離になる……と天文学者が言い出したのがこの祭りの始まり。前世で言う七夕に近い祭りで、星に願いを託すといった催しがある。この祭りは、毎年恒例で、盛り上がっており、露店がたくさん並ぶ。だが、祭りの騒ぎに興じて危険なことをしでかす人間もいるみたいで、警備は手厚くなる。今年の星天祭は、もちろん魔物の脳を早く倒せるよう、この災厄の年を終わらせるよう願うためにかなり力が入れられるみたいだった。
アルフレートは旅を中断し、学園にいるので、星天祭のときに何かしてほしいと頼まれたのではないだろうか。勇者の演説、とか。
詳しいことは教えてくれなかったが、あまりいい顔をしてなかったので、また『勇者アルフレート・エルフォルク』として頼みごとを受けたのだろう。
まだ、故郷にいたころは、村の中で小さな星天祭をした。露店はあったけど、王都ほどずらりとはないし、みんなで星が一番きれいに見えるところまで行って願うみたいな簡易的な祈りをささげていた。それが、貴族になって王都の星天祭に参加した時、あまりのスケールの違いにびっくりしたのを覚えている。
もうそんな時期か、と思いながら、僕は先ほどの助言を思い出しアルフレートに伝えることにした。
「それで、ランベルトのことなんだけど」
「そうだったね。どんなこと話してたの?」
「……ランベルトが、暴走した時のこと。やっぱり、アルのいったみたいに、ガイツと接触していたみたいで。ガイツは、人の感情を増幅させるだけじゃなくて、人の身体を乗っ取れるんだって」
「……確かに、七大魔物は、人型が多いし。人型であればあるほど、その力は強いとされているからね。でも、本当に人の身体を乗っ取る魔物も」
と、アルフレートは考えるように言う。
魔物は、一般的にクリーチャー系と獣系に分かれる。だから、前にあったサルの魔物や、狼の魔物は、典型的な魔物の例。だが、故郷で出会ったオークのような二足歩行や、人間の形に近ければ近いほど、強力であり、知能も持っている。人間に擬態できる魔物はほぼいないが、できるということは、その魔物はとてつもなく強い証拠であると。
ガイツも人型だったし、身体を変形させられるみたいだったから、七大魔物と言われるだけある。でも、人間の身体を乗っ取っるメリットがなければ乗っ取らないはずだが……
ちらりと、アルフレートを見れば深刻そうな顔をして、こちらに目を向けた。
「もしかしたら、もうすでに紛れ込んでるのかも」
「まぎれ、こんでる?」
「うん。学園の中に。人の身体を乗っ取れるってことは、すでに体を乗っ取って、人間としてこの学園に紛れ込んでいるんじゃないかって。ランベルトが、ガイツにあったのがどこかわかないけど、結界の中でそんな簡単には動けなかったはずだし。でも、人間の身体だったら、結界内でも動けるし、魔物探知に引っかからない」
「じゃあ、学生の中に? もしくは、教師の中に?」
「その可能性は高いだろうね」
アルフレートはそう言って息を吐いた。
あまりにも危険すぎて、言葉も出なかった。開いた口がふさがらず、アルフレートのほうを見ることしかできない。
確かに、可能性としてはありえなくもない話だった。
(となると、ランベルトが接触したガイツはこの間僕が接触したガイツとは別の身体? すでに、誰かの身体を被っている?)
そうなってくると、どうやって見分ければいいのだろうか。
人間の身体に魔物が入り込んでいた場合、その魔物が魔物らしい行動を起こさない限り、魔力探知には引っかからない。アルフレートでも、見極められないならお手上げじゃないだろうか。
それに、疑心暗鬼になって――
「もしかして、アルは僕のこと疑ってる?」
「え? なんでそうなるの」
「だって、ぱっと見じゃわからないんだよね。誰の身体に入っているのか、とか」
「まあ、そうだけど。でも、テオはテオだよ。さすがにわかるよ」
アルフレートは、慌てたように言った。もちろん、彼に疑われているとは思っていない。ただ、そんなことになっていると知っては、僕も気が気じゃなかった。
ランベルトは、強い意志があったから、追い出せたという。アルフレートの中身がガイツだった場合、僕なんて利用価値はないわけだから、とっくに殺していただろう。だから二人は除外。そして、僕も僕で意思があるから除外。
でも、この学園には四桁に近い学生が在籍しているわけで。その中からガイツを探すのは非常に難しいだろう。
僕は、アルフレートに「そうだよね」といって、しゅんと頭を下げた彼を抱きしめた。いきなり僕が抱き着いたものだから、アルフレートもびっくりして体を揺らしていた。
「て、テオ?」
「ちょっといろいろ怖くなっちゃったんだ。アルのこともそうだけど、故郷のこともあって……それで、ランベルトから、そんな話を聞いて。もうすでに紛れ込んでいるかもって」
同級生も、先輩も後輩も、教師も疑いたくない。
でも、早く見つけなければどう考えても取り返しのつかないことになる。一度、ガイツに接触しているからこそ、いえることだ。ガイツはきっとろくでもないことをする。それだけはわかった。
アルフレートは抱き着いた僕を、ポンポンと撫でて「俺がいるから大丈夫だよ」と声をかけてくれる。最強の彼がいうのだから嘘ではないし、その言葉に安堵を抱く。でも、アルフレートに、無理をしてほしくないと思ってしまう気持ちもまた事実だ。
僕たちは、少し離れ見つめあって唇を重ねた。見つめあっていたら、互いにほしくなってキスをする。
そういえば、こんなふうに最近アルフレートと触れ合っていなかったなと思い出した。
久しぶりのキスは優しくて、頭がフワフワする。前みたいな性急なものじゃなくて、ゆっくり舌を絡めるような優しくてスローペースなキスに、物足りなさも感じる。でも、大事にされているということもわかるので、胸が温かくなる。
ぷはっ、と息継ぎをするために口を離し、僕は口の端から垂れたよだれをアルフレートに拭われる。
「かわいい。テオ」
「……アルは、かっこいい」
「ふふ、ありがとう。テオ、今日はどこまでいい?」
僕を抱き上げて、ベッドへ運び、優しくおろすと、アルフレートは僕に覆いかぶさってきた。僕は枕をぎゅっと胸の前で抱いて、アルフレートを見上げる。少し暗くなった部屋で光るラピスラズリの瞳は優しく燃えているように思えた。
どこまで、か。
アルフレートのあの凶悪なペニスを見てから、僕はすっかりしり込みしちゃって。そのせいで、アルフレートが望むその先に行けずにいた。けれど、ずっとそのままお預けを言い続けているわけにはいかないと、僕たちは段階を踏むことにしたのだ。
はじめは、長いキス。深い口づけになれていなかった僕は、それだけでも失神したことがあった。アルフレートがキスがうまいのがいけない。今だって、キスされただけで、腰も頭もフワフワして立っているのがやっとだ。
次に、僕のをアルフレートがしごいて、口に含んで。これも大変恥ずかしくて、すぐに達してしまうから申し訳ない気持ちにもなる。それから、後ろの穴の開発も……素股までした。もう後は勇気の問題だろうと思うけど、アルフレートはなぜか工程を踏むたびにスピードがゆっくりになっていって、まだ無理じゃない? と聞いてくるようになったのだ。でも、毎回その股間は破裂しそうなくらい勃起していて。僕だけ気持ちよくなるのはおかしいと、彼のを口にしたこともあった。けれど、大きすぎて収まりきらなくて。
「……ちょっと、手前、まで、なら、いける」
「いいの? 怖くない?」
「怖い、けど。でも、進みたい、アルと」
僕がそういうと、アルフレートはごくりと喉を上下させる。一瞬だけ、彼の目に獣が宿り、またいつもの彼に戻る。
じゃあ、とアルフレートは言うと僕のズボンをゆっくりとずらした。下着まで一緒に剥ぎ取られてしまえば、僕のペニスは隠すものを失ってぷるぷると震える。上の服を引っ張って隠そうとすれば「服が伸びるでしょ?」と手を抑えられる。
「触るね、テオ」
「アル、今日はそこじゃなくて、挿……っ」
アルフレートの大きな手に包まれれば、それだけでピクンと僕のペニスは反応する。
「大丈夫、ゆっくりやるから」
アルフレートが僕のをしごきはじめる。はじめはゆっくりだったが、徐々に手の動きが早くなり、僕は抑えていた口から喘ぎ声が漏れる。先走りでぐちゅぐちゅという音が響き、気持ちよくて腰を浮かしてしまう。
二日に一回、こうやって慣らしていくうちに、すっかりアルフレートに体は開発されてしまっている。もう、つながれるくらいには、どこもかしこも性感帯だ。
だけども、まだ一度もつながったことはない。
ちゅこちゅこと、弄られていれば、限界を感じた身体がビクッとはねた僕は達してしまう。
「あ……っ、はぁ……」
「テオかわいい。でも、今日はもう少し進むんだよね」
「ん、んん……アル」
つぷりと、今度は指が一本挿入ってくる。第一関節、第二関節とゆっくりと沈め、優しく中をする。アルフレートの指は長くて、奥まで入ってきそうで少し怖くなるが、何度も振れられていれば、もう少し奥にほしいと体が疼くのだ。その指を奥へ奥へと引き込むように吸い付く内壁に、僕は羞恥心で顔が熱くなる。それでも、彼はその動きをやめないものだから「ひぃんっ」と嬌声を響かせてしまう。彼の長い指がくいっと曲がって、僕のいい所に触れたのだ。
「あひっ……っん!!」
「気持ちいいね、テオ」
「う、うん。きもち、から。アル、アル、もう」
「じゃあ、二本目……ああ、一気に三本いけそうだね」
と、アルフレートは試すように指を増やし、三本を僕の中に押し入れた。痛みはないが、急な質量に息が苦しくなる。慣れていても、さすがにきつい。そう感じながらも、アルフレートが気持ちいいところばかり狙ってするので、足の指がピンと伸びる。
ぐちゅぐちゅと響く音が僕の鼓膜を犯していく。気持ちよすぎて涙がこぼれるけれど、アルフレートはそんな僕を見ては嬉しそうに目を細めている。こんな顔にさえも感じてしまうのだからもうすでに僕は彼の手の中で転がされているようなものだ。
「あっ、ぁう……んっ! あ、また、いっ」
「いいよ、テオ。イって?」
「やっ、ぅう……っんんん――ッ!!」
僕は再び達する。ガクガクと全身が震えて、ベッドに体が沈む。下半身の感覚は、バカになっていて、達したというのにぴくぴくと痙攣している。甘イキとかいうやつなのだろうか。中が収縮しているのが自分でもわかった。
中でいけるようになった自分は、すっかりアルフレートの手に落ちてしまっている感覚がする。
「テオ、もう少しだけ頑張ってくれる?」
「ん? アル、ぅん?」
「ふふ、まだ降りてこれないんだね。でも、ごめん、俺も限界だから」
と、彼は自分のズボンを下げて、僕より一回りも二回りも大きいそれを僕の穴にあてた。その大きさに僕は、初めて見たときの恐怖を感じたが、これだけ慣らせばいけるだろうという確信があった。けれど、優しい彼は、耐えるように「先っぽだけだから」と宣言し、腰を進める。指とは違い、先端から大きくて、中に埋まるまでに時間がかかる。アルフレートは僕の手を持って、自分の肩に回した。そして「捕まってていいから」と僕に声をかけるとずぷぷ……っと音を立てて侵入してくる。あまりの大きさに、んん……と口からくぐもった声が出る。痛くないわけじゃない、でも、つらいとか苦しいとかはなかった。受け入れたかった。
ゆっくり挿入され、先端が中へぷちゅっと音を立てて入る。
「あ、アル。はい……た?」
「先だけね。でも、今日はここまでだから」
「でも、アル、そんなに大きいのに」
「まだ、俺は我慢できるから。傷つけたくないし。それに、星天祭のときに取っておきたいな」
「え? なんで?」
「俺の願いだから。テオと、一つになるの。くっつくの……ずっと、ずっと、妄想してたから」
アルフレートはそうこぼしたかと思うと、腰を引いて、中から出ていく。あ、と僕がいうと、少し意地悪気に笑ってまた腰を進める。本当に浅いところ。先しか入っていないし、それすらも出ていくからもどかしい感覚がアナルを中心に広がっていく。そこまで入れてくれたんだから、もう最後までしていいのに。
けど、アルフレートは僕を気遣ってか最後までしない。本当に律儀に先端だけを入れて、それを抜き差しする。ゆるい刺激。でも、アルフレートの一部が中に入っていると思うと幸せだった。
「星天祭のときに、テオのこと抱かせて。そのとき、最後までさせて。お願い」
「そんなっ、お願いされなくてもっ、あ、アルが、したいこと、僕、全部かなえてあげたいから」
「テオ、大好き。ありがとう」
ちゅ、ちゅぽと音を立てて抜き差しが続く。そして、しばらくすると、ちゅぽっと音を立てて出ていったかと思えば彼は、数度自分のをしごいて、僕の腹に射精した。生暖かいものが腹を伝っていく。
「アル……」
「テオのこと、汚したみたいで、なんだか……ははっ、所有物っぽくて…………っ」
「アル?」
「ごめん、今ふくから」
アルフレートは、こらえきれないように口元を覆っていたが、何かに気づいたように、僕に頭を下げた。一瞬見えた、独占欲の瞳に、僕はゾクリとする。けれど、彼はそれを見せてはいけないもののように隠してティッシュボックスに手を伸ばした。
「ううん、後ででもいいから。アル、そばにいて」
ティッシュはそこにあった。でも、今はなんだか離れてほしくなくて彼の服を掴む。すると、アルフレートは驚いたように目を丸くしたのち、僕の名前を呼んだ。幸せそうにはにかんで、トスンとベッドに沈む。スプリングが軋んで、少しベッドがへこむ。
アルフレートは僕を抱きしめて横になった。
「テオあったかいね」
「アルのせいだよ」
「なんで? 俺のせい?」
「うん……アルが、僕のこと熱くするの。ずっと、そうだよ」
そっか、とアルフレートはわかったようなわかっていないような返答をかえした。伝わっていないようで癪だったけど、今はそれでいいかと、僕は抱きしめているアルフレートの手に自身の手を重ねる。うとうとと眠くなり、僕はごめんと断りを入れたうえで瞼を閉じた。