テラーノベル
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「うるさい!うるさい!うるさい!」
焔垂の口から放たれた怒号が、夜の静寂を切り裂いた。
次の瞬間、彼の全身から黒く濁った霊気が爆発するように噴き出す。
「きゃあっ!」
信愛はその衝撃波をまともに受け、身体ごと吹き飛ばされた。
数メートル先の地面へ叩きつけられ、脇腹を押さえながら苦しそうに息を漏らす。
「う・・うぅ・・・」
激しい痛みに顔を歪めながらも、震える手で身体を起こす。
「お・・お願い・・だから」
途切れ途切れの声で、必死に訴える。
「その人の・・体から・・・」
しかし返ってきたのは、容赦ない怒声だった。
「私の邪魔しないで!」
その一喝だけで空気が震える。
信愛は冷や汗を流し、唇を噛み締め自らの過信を悔いていた。
祓うどころか、近づく事すらままならない。
自分は霊感があり、除霊の方法を知っている。
だからこそ、自分なら救えると思っていた。
しかしそれは間違いだった。
信愛はやり方を知ってるだけ。
その力を使いこなせなければ意味がない。
焦りと後悔だけが募っていく。
(どうしよう、このままだと八乙くんが・・・)
信愛はこの時ようやく思い知る。
霊感がある事=救える事ではないと言う事を。
信愛が自分の無力さに打ちひしがれていた、その時だった。
幼い少女の声が、夜風に乗って静かに響く。
「その人を許してあげて?」
信愛は驚いて顔を上げる。
「か、佳苗!?」
暗闇の中に立っていたのは佳苗だった。
「なんで佳苗が?」
佳苗は優しく微笑む。
「ごめん、信愛・・・信愛が危なそうだったから」
その姿を見た焔垂、いや、焔垂の身体を借りた霊が警戒するように睨みつけた
「あんた・・・だれ?」
少女は静かに答える。
「私は佳苗・・・」
その名を聞いた瞬間、霊の表情が僅かに揺れる。
「かなえ・・・」
佳苗は一歩だけ前へ出た。
「私・・・分かるよ?
何か辛い事があったんだよね?」
霊は鼻で笑うように吐き捨てる。
「アンタみたいな子供に 何が分かるって言うの?
知ったような口きかないで!」
#普通
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ありあ
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それでも佳苗は怯まなかった。
「私も・・・同じだから。」
「はぁ?同じ?」
霊は信じられないという顔をする。
「私とアンタの何処が同じだって──」
佳苗は少し寂しそうに微笑んだ。
「私も昔・・・死んじゃったんだ・・・」
その言葉に、霊は押し黙る。
そして沈黙の中で、佳苗は静かに続けた。
「でも信愛に救われた・・・信愛はね?
あなたの邪魔をしたいわけじゃないの」
振り返り、地面に膝をつく信愛へ優しく笑いかける。
「そうだよね?信愛?」
信愛は痛みに耐えながら、小さく頷いた。
「う、うん・・・あなたの邪魔をするつもりは
ないしあなたに危害も加えない」
佳苗は再び霊へ向き直る。
「だからお願い、その人の体を返してあげて」
夜風が吹き抜ける。
少女の真っ直ぐな願いに、霊は何も答えず、ただ黙って立ち尽くしていた。
すると次の瞬間、焔垂の体は糸が切れた傀儡人形のようにその場に倒れ込んだ。
「や、八乙女くん!?」
信愛は痛む身体を引きずりながら駆け寄る。
「大丈夫?」
焔垂はゆっくりと目を開き、呆然と辺りを見回した。
「な、何が・・・起きたんだ?」
自分の小刻みに震える手を見つめ、声を漏らす。
「俺・・・一体・・・」
立ち上がろうと腕に力を込める。
だが、その動きを信愛が慌てて制した。
「待って!まだ安静にしてて」
焔垂は再び地面へ身体を預け、小さく息を吐く。
「あ、ああ・・わ、悪い・・・」
そう言って申し訳なさそうに目を伏せる。
信愛は首を横に振った。悪いのは焔垂ではない。
彼もまた、あの霊に巻き込まれた被害者なのだから。
すると、その場に流れていた重苦しい空気を破るように、聞き慣れた声が響いた。
「あれ?二人とも何やってんの?」
コンビニの袋を片手に提げた茜が、街灯の下からひょっこりと姿を現した。
信愛は思わず目を丸くする。
「あれ?茜?」
こんな時間に、こんな場所で会うとは思ってもいなかった。
「なんで茜が?」
茜は少し気まずそうに頭を掻きながら苦笑する。
「あ、いや、その・・・」
手に持った袋を軽く持ち上げる。
「どうせ焔垂が調べ物してんだろーなって思ったから
菓子パンとコーヒー差し入れに来たんだけど・・・」
だが、焔垂が地面に座り込み、信愛も傷だらけになっている様子を見て、只事ではない雰囲気を察した茜の笑顔はすぐに曇った。
「な、何かあったの?」
さらに、信愛のそばに立つ佳苗の姿にも気づき、困惑した表情を浮かべる。
「それに佳苗まで・・・」
信愛は小さく首を振った。
「とりあえず詳しくは後から話すか」
そして焔垂へ視線を向ける。
まだ一人で支えられる状態ではない。
信愛は茜へ向き直り、真剣な表情で頼み込んだ。
「一緒に八乙女くんをウチに連れて行くの
手伝ってくれない?私一人じゃ無理っぽいから」
茜は事情がまったく飲み込めないまま、焔垂と信愛、そして佳苗を順番に見渡した。
どう考えても普通ではない状況だった。
それでも、信愛の切羽詰まった様子を見れば、断るという選択肢は浮かばなかった。
「ま、まあ、いいけど・・・」
こうして茜は戸惑いを抱えながらも信愛に協力し、二人で焔垂の身体を支えながら、信愛の家へとゆっくり歩き始めた。
コメント
1件
「うわ、今回はめっちゃシリアス…!焔垂くんの身体取り憑かれた霊、かなり強そうでビビったけど、佳苗ちゃんの「私も死んじゃったんだ」って告白がガチで刺さった。彼女にしかできない説得の仕方、じーんと来たな。あと、茜のコンビニ差し入れタイミングが絶妙で、日常と非日常のバランスが好き。信愛の無力感と向き合う姿勢も成長感じる。次が気になる🔥」