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「見つかったのはどんな鴨でした?」
いや…ミランまで……
「登録者1000万超えのYou◯uberだよ。海外の人だから私は存じ上げないけどね」
「そうですか。内容は?」
うん。何の話?
とりあえず鴨がその有名人ってことしかわからんな。
「自分が持っている家に魔法をぶつけてみろって。もちろん、安全は担保しているみたいだよ。
簡単にいえば、『その家を壊せるモノなら壊してみろ。壊されても動画の利益でペイ出来るし、出来なかったらルナ教は嘘吐きだ』ってことだよ」
「馬鹿ですね」
動画投稿ってそんなに儲かるの?
「それを配信で流して、私達に呼びかけてるの」
「つまり、そいつの家を魔法で破壊すればいいのか?姿を見せずに」
「うん。でも、その人だけじゃないからね」
ん?どういうことだ?
「だって、その人が家を壊されてさらに有名になって、動画も儲かったら模倣する人達が大勢出るでしょ?」
「ああ。確かに?」
「だから同じタイミングで、似たような呼び掛けをしている人達に同じことをするの。
そうすれば、一人に注目が集まることはなくて、模倣するメリットが減るでしょ?
数も増えれば、ルナ教教祖様の信憑性も増えるから、それ以上証明する必要も減るしね!」
可哀想に……
恐らく俺達を挑発してきた理由は、聖奈が言う通りさらに有名になる為なのだろう。
これだと予想の半分以下の注目しか集まらないだろうな……
まぁ馬鹿につける薬はないから、どうでもいいけど。
やるべきことがはっきりしたので、翌日に備えて地球へと向かった。
「おはよう。今日からは転移ポイントを増やす為に旅行だよ」
アメリカにある船着付き別荘で、聖奈が目覚めた俺へ声を掛けてきた。
「何ポイントほどあるのですか?」
「6ポイントだよ。全部国が違うから大変だけど、みんなと一緒だから寂しくないよ!」
べ、べつにぼっちには慣れてるし!!
それよりもこの部屋は夫婦の寝室なんだが……
何故かベッドが三つあり、ミランもこの部屋で寝起きしている。
いいんだよ?
大勢の方が楽しいし。
でも、その露出の高い可愛い寝間着はやめて欲しい…絶対に聖奈の趣味だ……
「じゃあ、準備したらさっそく転移しようね」
起きたと言ったが、ここはまだ夜だ。
所謂時差だな。
異世界転移は基本日本からするから、いつも体内時計が狂うんだ。
準備を終えた俺達は、聖奈の作ったフレンチトーストを食べて、一つ目の国へと向うことに。
「確かにここなら被害はあの家だけだな」
山の中腹に見えるのは、豪邸が一軒だけ。
今ある転移ポイントからここまでは、レンタカーで一時間程掛かった。
「イギリスはこの家だね。聖くんには悪いけど、帰りは転移でレンタカーを返すよ。時間がないからね」
「いや、運転より楽だから構わんよ。次は?」
「次はね……」
目の前には高層ビルがある。
次の標的はこのビルの一室らしい。
態々こんな面倒なところを聖奈が選んだのには理由があった。
「ここを個別で狙えたら、より凄いと思わない!?」
「…そりゃあな?でも、他に被害を出さないのは難しくないか?」
「そだね。でも、おあつらえ向きの魔法があるでしょ?」
おあつらえ向き?
「アレだよ。アレ・・・・」
「ああ!確かに。それなら他の部屋には被害が無さそうだな」
「うん!もしあっても、その人のせいになるだろうから、あまり気にしなくていいよ」
魔法を使った時点で、このビルの耐久値は落ちるもんな。
まぁ、そのYou◯uberが悪いってことで、ご近所さんには勘弁してもらおう。
「じゃあ次だね!」
ここフランスでの用事はこれだけだ。
俺達はその後、中国、日本、ブラジル、アメリカと渡っていった。
「お疲れ様っ!はいっ!ビールだよ!」
ほぼ24時間で全ての場所を巡った弾丸ツアーは終わり、俺達は別荘へと帰っていた。
「サンキュー。ところで、計画の予定日はいつなんだ?」
ここまで急な行動をしたんだ。
一月後なんてことはないだろう。
「うん?あっ。伝えてなかったね。そういえば」
「いつものこと過ぎて忘れるなよ……」
別にサプライズなんて求めてないからな?
「問い合わせへの返事は、イギリス時間で明日からの一週間なんだ。だからその間は無人のはずだよ。まぁ、隠れていて死んだとしてもしらないけどね」
「それは問題ないだろう。今となっては魔力波で人がいるかどうかはわかるからな」
「本当に気にしなくていいよ。元々その人達は反ルナ教の人達だし、勝手に動画でこっちを攻撃してきたんだから。
だから私は実行期間と共に、責任はそちらにあるって声明を出したんだからね」
ミランも激しく頷いている……
この二人は本当にルナ様に感謝してるんだよな。
いや、この場合は盲信か?
「わかった。それで?肝心の実行日はいつなんだ?」
「うん。明日だよ」
「えっ!?」
「出来れば一時間以内に、全ての場所で実行するよ」
えっ!?
「急だな?」
「急だよ?」
……はぃ。
「はぁぁあ!今からどうなるのか楽しみですっ!」
光悦な表情でそれを語るミランさんは、すでに手遅れのようです。
やばい薬やってないよな?な?
まぁミランが楽しみなのは、ルナ教の信者がどれだけ増えるのかってことなのだろうけど。
「準備時間が有ればあるほど、向こうに反論の余地が生まれるからね」
「でも、出来たら信じるって言っているんだろ?」
「そんなの信じられるわけないよね?そういう人達は難癖付ける為に生まれてきた人達だから、信じても無駄だよ」
聖奈はYou◯uberに親でも殺されたのか?
まぁSNSで、人の揚げ足取りや文句ばかり言う人達の気持ちは、俺にも全くわからんけど。
アレって時間の無駄だよね?
それで喜ぶ人なんていないし、いても共感者同士の傷の舐め合いだしね。
「面倒くさい奴らだってことはわかったよ」
「でも、今の世の中はそんな人達の声が大きいの。利用しても何の遠慮もいらないから、悪いことばかりじゃないけどね!」
アンタが一番こえーよ……
「ということで!今日は休もっか!」
「わかった。ミラン。寝れそうか…?」
「楽しみで寝れそうにないので、お酒を飲んで寝ますねっ!」
ミランも立派なアルコール依存症になったな……
お父さん、嬉しいよ……
「『アイスブロック』」
まず、イギリスにある大豪邸に向けて、巨大な氷塊を降らせた。
上空に魔法の発動を確認すると、結果を確認することもなく、次の場所へと転移するために、詠唱を始める。
「『フレアボム』」
次の標的へ向けて魔法を放ち、さらに次へと立て続けに転移した。
side聖奈
「本当に地球とは、便利な世界ですね」
私の天使様がメイドコスプレを纏い呟く。
今はアメリカにある別荘の一室でモニターを二人で確認しているの。
天使様の顔が近いから…吐息が……
「はぁはぁ……うん…You◯uber達がこぞってライブ配信してくれているからね…」
はぁ…美少女の香り……
「あっ!あれはアイスブロックです!騒いでいますね!愚かな者たちが、失ったモノと得たモノを比較して嘆く所は見えませんが、想像に難くありません」
天使様が悪魔のような台詞を紡いでる……
次は小悪魔コスプレで決まりだねっ!
「こっちはフレアボムだね。あちゃー。あれじゃあ全焼だね」
木造の立派な家屋だから、よく燃えそうだね。
ま。この後のことなんてどうでもいいけど。
「ここはどうするおつもりでしょうか?」
「ああ、そこね。そこは流石に壊せないからね」
でも、住めなくはなるよ。
side聖
目の前に見えるのは青空。
うん。何言ってんだか。
ここはフランスにあるビルの屋上。
目標はここの数階下にある。
「よし。覆面も装着したし、行くか!」
俺はベランダをつたい、下へと飛び降りていった。
「この部屋だな。おっ。あるある…」
聖奈に指定された部屋には、沢山のカメラが設置されていた。
さて。この部屋用の魔法を使うか。
俺はその部屋のベランダの床へ手を付き………
「『アイスバーン』」
ベランダと部屋の中は凍りついた。
部屋の中にある三脚とカメラも全て凍ったし、恐らく家電や水道管、壁紙や床もパァだろうな。
その光景を自分のカメラで撮影した後、別のポイントへと転移した。