人々が行き交う街中をかき分けながら進む一人の少女。タイムリープしている元凶である何者かを特定するために、知り合いを片っ端から当たっている。しかし現状手がかりはひとつもない。みな、タイムリープしていることには気がついておらず、質問するこちら側が異端な者として知り合いには写ってるようだ。
「全くと言っていいほど手がかりはない。」
「魔理には悪いけど私の知り合いは全滅かな。あとは彼女に任せましょうかね」
諦めて街を出るようにフラフラと歩いていると、よく見かける一人の人物を見つけた。イタズラが好きな氷の妖精だ。しかし、彼女一人なのは珍しかった。彼女は基本的に色んな妖精と共に行動する姿を目にするからだ。例えば、風の妖精だったり、光の妖精。そして、大妖精と言われる妖精。妖精以外にも、闇を食らう妖怪や、花の妖怪など基本的に一人ではなく、誰かと行動するのを知っているから余計一人で行動しているのが珍しかった。
正直こんな妖精から情報を貰えるか怪しいが、ダメもとで聞いてみることにした。何とか人混みをかき分けて少女の元にたどり着き話をする。
「あらこんばんは」
「!?」
「そんな驚くことないでしょ別に」
「山中に住む貧乏巫女がこんなところに出てくるなんて、そりゃあたしもビビる」
「私からすれば普段いるヤツらと行動してないあんたにびっくりしてる」
「あたしは普通に迷子になってるだけだ」
「飛んだアホの子ね」
「アホじゃない!ただ綺麗な街並みだったから見惚れてて気の向くままに歩いてたらはぐれてただけだし!」
「それをアホだって話してんのよ…」
「じゃー貧乏巫女はどうしてこんな所にいるの?」
「私が街中に出る時は大体異変の時だけよ」
「異変が起きてるの?」
「あんた今この日がループしてるの知ってる?」
「ループ?それってフラフープの仲間?」
「OKなんでもないわ…」
「???」
「まぁ、とにかくイタズラはやめなさいよ?アンタを退治するの何十とやってるから飽きてるし」
「あたしが弱いと!?」
「妖精如きが私に勝てるわけないでしょ」
「むぐぐ〜…」
「それじゃあ私はそろそろ行くから」
「とっとと消えろ!ばーかばーか!!」
「はいはい……」
結局情報を得ることは出来なかった。しかし、一つ違和感を覚えたのは確かだ。あの妖精が迷子になるのは別に変じゃない。実際方向音痴だし、妖精ゆえに自由奔放だから疑うところはない。会話のレベルも低いが、それはアイツがアホの子だからで片付く。そのはずなのに何処か違和感を覚える……。このモヤッとした気持ちはなんだろうか…。
街の外にと歩を進めながら長く思案しているとふと、とあることに気がついた。それは、彼女はどことなくよそよそしくしていたということだ。確かに、妖精は天真爛漫で、まるで物心着いた頃の子供のような性格をしている。彼女は友人とはぐれてしまい不安と同時に遊びたい欲が溢れたのだろう。それだけなら別に違和感は感じなかったはずだが、それでも違和感を感じた理由は《目》だ。
妖精と言えど体の作りは人に近しい。そのため人の心理学を妖精に当てはめることが出来ることもある。その例として、先程の彼女との会話の中で、無意識だろうが瞳が私を避けていた。私と目を合わせないように話していた。この行動はなにか隠し事がある時に見られる。要は、私という存在を否定するような行動ということである。あくまでこれは説に過ぎない。けれども、統計してみると今の行動が見られる人は、隠し事をしてるのが多い。もしかすると、彼女はこのループしてる事態を知っていて、それでいて私に嘘を話していたとしたら……。
そう考えた時あの子がより怪しく思えて仕方がない。もう一度彼女と話をしよう。そう思い振り返るが、彼女の姿は見えない。これだけ人が行き交いしていたら、少し目を離したそれだけで見失ってしまう。それに、彼女の姿は少女だ。背が大きくないため、余計見えずらいだろう。特徴のある羽を持っていても、大きさは変幻自在と言っても過言ではないため、小さくなっていても不思議ではない。彼女を探すなら空から探すしかないのだ。博打ではあるがそうでもしないと見つけられないのなら、やむを得ない。すぐに街を出てなるべく人目のつかない場所まで歩き空を飛ぶ。そして街の上を飛行し、彼女の姿を見つけ出す。だが、物事はそう上手くは行かない。やはり簡単には見つかることは無かった。
どれくらい探したかは分からない。時がどれほど過ぎたかを確認するため空を見る。空模様は大きく変わり、綺麗な夜空が見えた空から白く切ない雪がしんしんと降り始めていた。
「だいぶ時間が経ったみたいね。」
「魔理は情報集められてるのかしら?まぁ、集められてない私が言えたことじゃないけど」
空を飛んでいると、ゴーンと鐘のなる音が聞こえる。どうやら0時を回ったみたいだ。しかし街を見ると、0時とは思えぬほど人が行き来している。この、クリスマスというイベントがどれほど大きなものなのか再度確認させられる光景だ。
空を飛んでいると突然自分の体に違和感が押し寄せる。それは、急激な睡魔だった。霊無は普段この時間は寝ている頃合いだが、別に起きようと思えば起きれる、そんなレベルなのだが今は何故かそんな余裕が無いほどの睡魔に襲われているのだ。飛行中にこの睡魔は危険と感じた霊無はすぐさま人目のつかない場所まで飛んで移動し地上に降り立つ。
「くっ……一体どういうこと?」
「なんで、急に睡魔が……」
「ダメ…目を開け続けるのもしんどい」
「意識が……遠く………に…………」
精一杯抵抗したが、その抵抗も虚しく幽無は意識を手放してしまった。瞳を閉じるその時まで、彼女の事を考えながら……。
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