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猫塚ルイ

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猫塚ルイ

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ねむ
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「忘れ物ないだろうな?」
「大丈夫ですって」
玄関ドアを開けて見送ってくれる尊さんの声は、ひんやりとした秋の夜風に溶け込むように柔らかい。
その響きに包まれるだけで、今日一日の仕事の疲れがさらさらと霧散していくのがわかった。
「それじゃあ尊さん、おやすみなさい」
名残惜しさを押し込めて、俺は玄関のタタキに座り込み、靴に足を押し込んだ。
そうして立ち上がった拍子、ふと、視界の端で何かが揺れた。
視線の先には、整然とした壁に掛けられたシンプルな卓上カレンダー。
機能性重視で、余計な書き込み一つない
いかにも尊さんらしい飾り気のないデザインだ。
(あれ……?)
ふと目に留まった11月のページ。
その24日の枠の中に、小さくて可愛らしい花丸シールが一つ、ちょこんと貼られていた。
それ自体は何の変哲もない、文房具店で売っているようなありふれた赤いシールだ。
けれど、几帳面で余計な装飾を好まない尊さんの部屋において、その花丸は異質なほど鮮やかに浮いて見えた。
(何か特別な日なのかな? 誰かの誕生日……とか?)
首を傾げると
「どうした?」
「え?!…いや、カレンダーに印があって……これって……」
慌てて指差すと、尊さんの整った眉が微かに動いた。
彼はカレンダーと俺の顔を交互に見て、少しだけ満足げに口角を上げる。
「記念日だろ。お前と俺の」
「へっ!?」
予想外すぎる返事に、裏返った変な声が出てしまった。
心臓がドクンと大きく跳ねる。
「あんま柄じゃないんだがな。忘れないように貼っておいた」
そう言うと、彼は照れ隠しのようにガシガシと後頭部の髪を掻いた。
その仕草が年相応に子供っぽくて、愛おしさに胸がキュッとなる。
完全に記念日を忘れていた俺は
(そ……そうだったんですか……!? )
とは言えず
でも、言われてみれば、ちょうど去年のあの頃に付き合い始めたんだ。
もう1年が経つのかと思うと、月日が流れる早さに眩暈がしそうになる。
「は、はい! にしても、尊さんって記念日とかマメに覚えててくれるタイプだったんですね……!」
「これぐらい普通だろ」
低く、心地よく響く笑い声が鼓膜を震わせる。
その温度がじわりと胸の奥まで浸透して、心地よい熱を帯びていった。
「ま……24日の夜、空けとけよ」
それは、甘い不意打ちだった。
尊さんが一歩踏み込み、俺の耳元に顔を寄せる。
(……っ!)
温かな吐息が耳朶をかすめ、脳裏が真っ白になる。
普段の穏やかな眼差しが、一瞬で熱を孕んだ真剣な色に変わる。
「は……はい……っ!」
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