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kaede🍁
⚠️過呼吸or呼吸困難表現あり
酸素マスクの下で、翔太の呼吸はまだ安定しきらないままだった。
「は……っ、は……っ……」
浅い息が続くたびに、肩が小さく跳ねる。
目は開いているのに、焦点がどこにも合っていない。
看護師が静かに声をかける。
「大丈夫、ゆっくりでいいですよ。今は吸うことより“吐くこと”だけ意識しましょう」
でも翔太には、その言葉を処理する余裕がない。
ただ怖い。
ただ苦しい。
ただ、全部が一気に戻ってきてしまっている。
亮平はベッドの横に座ったまま、手をぎゅっと握っていた。
強く握りすぎないように、でも離れないように。
「翔太」
亮平の声は、できるだけ落ち着いていた。
「今は何も考えなくていい」
「息だけでいい」
翔太の指が小さく動く。
でも返事にはならない。
辰哉が後ろで医師に小さく確認する。
「これ……大丈夫なんですか」
医師は短く頷く。
「過呼吸は一時的なものです。今は精神的な負荷が強いので、安心できる環境が必要です」
“安心できる環境”。
その言葉が、兄たちの胸に重く落ちる。
安心できる場所にできていなかったのは、自分たちだ。
誰も言葉にしなかったけれど、全員がそう思っていた。
翔太の呼吸が、少しずつ変わっていく。
まだ乱れているけれど、ほんのわずかに“吸える”ようになってきていた。
「……っ、は……」
亮平は小さく息を吐く。
「そう、それでいい」
「できてるよ、翔太」
その言葉に、翔太のまつげがわずかに揺れた。
康二が小さく呟く。
「……ほんまに、ずっとこうやったんやな」
誰にも言えず、
一人で耐えて、
限界まで黙って。
照は目を伏せたまま言う。
「気づけるタイミング、何回もあったはずなのに」
医師はモニターを見ながら静かに言った。
「今は落ち着いてきています。ただ、まだ無理に話をさせる段階ではありません」
その言葉に、辰哉は小さく頷いた。
「……分かりました」
病室は少しだけ静かになる。
機械の音と、呼吸の音だけが残る。
翔太はまだ完全には落ち着いていない。
でも、さっきより少しだけ――
“ひとりじゃない”空気に、身体が追いつき始めていた。
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