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清水は朝一の飛行機に乗り、中国の上海市に来ていた。もちろんヨウと共に。ヨウは空港前で適当にタクシーを捕まえ、運転手と話している。手招きされた清水は、ヨウと共にタクシーに乗り込んだ。

ヨウが運転手と一言二言会話をすると、やがてタクシーが走り出した。

「いやぁ、久々だなぁ。どこを見ても中国語だらけ」

ヨウは当たり前のことを口にしながら、日本から持ってきた飴の詰まった瓶を開ける。「いる?」とヨウに聞かれたが、清水はやんわりと拒否する。ヨウは中から飴を1つ取り出し口に入れた。

清水は今回の仕事についてヨウに聞く。

「今回は何をするんだ、誰を騙す?」

ヨウは清水の問いに困ったように眉を顰める。

「もぉ…。タオズー、せっかく中国に来たんだから少しくらい日本と違う景色を楽しめばどう?」

「俺はお前に『稼げそうな話を入手したから中国に行こう!』って無理矢理連れてこられたんだぞ。なにが景色を楽しめだ、ここに来るまでに結構体力持ってかれたしよ」

言い終わってから、清水は少しきつく当たってしまったと反省する。

「まぁまぁ、落ち着いて」

ヨウは飴を含んだままもごもごと会話をする。清水はそんなヨウを見ていると再び腹が立ってきた。

ふと、ヨウは運転手に話しかけラジオの音を上げさせた。ラジオから聞こえる男の声が、中国語で真面目な話をしている。おそらくニュースが流れているのだろう。

「ラジオの内容は何なんだ?」

「ニュースだよ。どうやら違法薬物所持で多くの学生が捕まっているみたい」

ヨウは「ふふ」と声を漏らす。

「…何がおかしい?」

「別に何も」

ヨウはニヤニヤしているだけで、何も教えてくれなかった。

やがて、タクシーは綺麗な建物の前で停車した。そこは、中国に滞在する間泊まるホテルだった。

「ここ、綺麗な割には結構安いんだよ」

タクシーの支払いを済ませたヨウは呟く。

「さっさと中に入って、仕事好きな誰かさんと詐欺計画を進めようか」

ヨウは独り言のように言っているが、間違いなく清水に向けた皮肉だった。

ホテルに入り鍵を貰う。外観と同じように室内も綺麗だった。

ヨウは荷物をベッド横に置き、高級そうな腕時計で時間を確認する。

「よし。時間はたっぷりあるし、早速お買い物に行こうか」

「急すぎるだろ…。どこに行く」

ヨウは穏やかな顔で微笑む。

「お洋服屋さんだよ。俺が買ってあげるから手ぶらでも結構。いや、鞄くらいは持ってて欲しいな」

清水はヨウが何を企んでいるのか聞き出せず、仕方なく着いて行くことにした。


入ったばかりのホテルを出て繁華街をしばらく歩くと、ヨウは周りの店より少し洒落た服屋に入って行った。ヨウに続いて清水も中に入る。 主に紳士服や婦人服が並んでいた。どれも高級そうだ。

「タオズー。おいで」

清水はヨウに手招きされ、ヨウの元へと向かう。

「君の服のサイズって、俺とあんまり変わんないよね?」

ヨウは暗い灰色のスーツを手に取り。清水の前に持ってきてサイズを見ているようだ。

「はい、これ試着してきて」

ヨウはスーツを清水に押し付ける。清水はヨウに言われるがまま試着室に向かい着替える。サイズはぴったりだった。

「うん。いいね、似合ってるよ。あっ、面倒くさいしそのまま来て行こうか」

「スーツなんか来てどこに向かわせるつもりなんだよ」

「今回のターゲットのアジトに行くんだよ。あ、これを渡すのを忘れてた」

ヨウはズボンのポケットからイヤホンケースを取り出し清水に渡す。

「これはイヤホン型リアルタイム翻訳機。これを付けていれば、中国語の分からないタオズーでも聞き取る事はできるよ。付ける時は片耳だけにしてね、外部の音が聞こえるように」

清水はヨウに言われた通り片耳にイヤホンを付けた。

「よし。さぁ、俺はどのスーツを着て行こうかなぁ」

ヨウは楽しそうに自分のスーツを選び始めた。


スーツに着替えた2人はタクシーに乗り、場末のバーに来ていた。ヨウは重い扉を開け、にこにこしながら中へ入って行く。清水もヨウに続いて中に入った。

バーに入った途端、カクテルを飲んでいた男達が一斉に2人を睨む。どうやらヨウと清水は招かれざる客のようだった。

ヨウは場の雰囲気などお構い無しに客の1人に話しかける。

「黄金骷髅(ホアンジン・クーロウ)のボスと話がしたいんだけど、どこにいるのかな?」

「部外者がボスに何の用だよ、さっさと消え失せろ」

男は鋭い目つきでヨウを睨む。ヨウの表情は変わらず、不気味に微笑んだまま話し続ける。

「金になる話がしたいんだ。最近、警察は麻薬に厳しくなっているだろ?」

男の目つきが変わった。

2人の沈黙が続く。

「…ボスは一番奥のテーブル席で女と飲んでる」

ヨウは優しく微笑み「どうも」とお礼を言う。2人は店の奥に進んで行った。

黄金骷髅のボスは腕を1人の女性の肩に回し、度数の高い酒を飲みながら3人の女性から黄色い歓声を浴びていた。

「初めまして、私は姚励兴(ヨウ・リーシン)と申します。貴方が黄金骷髅のボス、高昇(ガオシェン)ですね? 」

ヨウに気づいた高昇は、酔っているのか微笑みながらヨウに話しかけた。

「おぉ…。こんな所にそんなしゃんとした服で一体何の用だ?」

「素晴らしいお菓子を紹介したくて。できれば私達だけで」

高昇は察したのか、女性達を置いてバックオフィスへとヨウと清水を招いた。

壁に背を向け腕を組み、高昇は真剣な眼差しで2人を睨む。

「で、何を紹介してくれるだ?」

ヨウはポケットから細かく砕かれた飴が入った透明の袋を取り出した。おそらくホテルに向かう時、タクシーの中で食べていた飴だろう。いつのまに砕いた物を用意したのだろうか。

「これは日本で作られた麻薬を砕いた物です」

「それが麻薬?俺にはただのキャンディにしか見えないが」

「飴を作る過程で麻薬を混ぜたんですよ。日本でも違法薬物は厳しくなっていて、商売もしにくくなっている。そこで、この清水先生がキャンディに麻薬を混ぜた、絶対に警察に見つからないお菓子を作ってくれたんです」

ヨウは清水の腕を掴み自分の横に立たせる。

「そのひょろい日本人が?」

「えぇ。この素晴らしい物を日本だけで売るのは勿体無い。是非上海にもこの飴を流通させたいと思い、今回上海で最も名高いギャング、黄金骷髅のボスである貴方にお会いしに参りました」

ヨウは終始微笑みながら話す。何も聞かされていない清水は、高昇に怪しまれないよう必死に表情を作っていた。

「どんな効果があるんだ。依存性は?」

高昇は清水に説明を要求する。イヤホン型翻訳機によって聞き取れはするが、中国語を喋る事ができない清水はヨウに助けを求め目配せをする。

ヨウは小さくため息を吐き説明を始める。

「効果はアヘンに似ていて、非常に依存性が高いです。高値であれば大儲けできると思いますよ」

「…いくらで俺に売るつもりだ?」

「312万元(日本円で約6200万)でどうでしょう」

高昇の顔が歪む。

「高すぎやしないか?」

「これは年間100パックしか作れない貴重な物なんです。貴方なら買えるでしょう?」

「売れなかったらどうする?どう責任を取るんだ」

「その時は、清水先生と共にサンドバッグになりますよ。まぁ、そんな必要無いと思いますが」

ヨウは当たり前のように清水を巻き込む前提で話を進める。清水はヨウを軽く睨んだ。

「そもそも、それは本当にアヘンの効果があるのか?信用できんな」

「試してみますか?」

ヨウは怪しく微笑み、飴の袋を開け清水の口に無理矢理飴を流し込んだ。

清水は咳き込み、咄嗟に吐き出す。ヨウは面白いものを見るように微笑みながら見下す。その横で高昇は見定めるように清水を見つめていた。

清水の反応で、高昇が買うかどうかを決めようとしている。もし買わなければ、この計画は失敗に終わるのだろう。 ヨウへの苛立ちを抑え一度冷静になる。

清水は頭を抱えゆっくりとしゃがみ込んだ。やがて細い呻き声が漏れ始め、それはだんだんと忍び笑いに変わった。

これでいいだろ?クソ野郎…。

見上げると、高昇は好奇心の目で清水を見下し、ヨウはつまらなさそうに目を逸らしていた。

「彼の違法薬物デビューはさておき…買ってくれますか?」

「あぁ、312万元だったよな?金ならある。買ってやろうじゃないか」

ヨウは「ありがとうございます」とだけ言い、清水を回収してバーを出た。

バーを出てすぐ、清水はヨウの肩を殴る。

「痛いなぁ。どうしたの?」

「計画を共有せず1人で進めてんじゃねぇよ」

「あぁ、別に伝えなくても上手くいったんだからいいじゃない。演技もまぁまぁだったよ」

ヨウは親指を立ててウィンクする。清水は余計に苛立った。

「あとは飴を渡して金を貰うだけ。あ、俺今から行くとこあるから、タオズーは1人で上海観光でもして来なよ」

「行くってどこに」

「それは秘密。じゃ、またあとで」

ヨウは片手を振り、タクシーを捕まえどこかへ行ってしまった。1人残された清水は行きたい場所も特になく、適当に歩き始めた。


辺りを見渡す。周囲には店がいくつかあるが、どこも客が少なく静かな街だった。道路は狭く、路地裏は真っ暗。街灯の少なさからして、夜は更に暗くなるのだろうかと清水は考える。

ふと、清水は後ろから聞こえる足音に気づいた。同じ速度でぴったりとついてくる革靴の足音。おそらく男だ。

歩く速度を変えれば相手に気づかれる。走れば逃げられるだろうか。

清水は曲がり角を曲がった瞬間走り出した。男が曲がり角を曲がる前に路地に逃げ込み、身を小さくし息を殺す。

数分経過したのち、男がいないか確認しようと路地から頭を出した。

「よぉ…こんなところにいたのか」

いつのまにか、男が目の前に立っていた。

「えっと。俺、中国語分かんないんですよねー…」

男は警察手帳を清水に見せる。

「ちょっと聞きたいことがあるんだが、協力してくれるよな?」

清水は男に捕まり、覆面パトカーに無理矢理押し込まれた。運転席には男が座り、助手席にはそこそこ華麗な顔をした女性が座っている。

上海に来て牢にぶち込まれるのかと肩をすくめていたが、覆面パトカーが動き出す気配がない。清水は疑問符を頭に浮かべながら前に座る2人を睨む。

助手席に座っている女性が、1枚の写真を清水に見せる。

ヨウの顔写真だった。

「この男、貴方のお友達?」

彼女は日本語で話し出す。

「日本語、喋れるんですね」

「質問に答えて」

「…友達というか、知り合い程度ですけど。彼が何か?」

「さっきギャングのアジトからこの男と2人で出てきたけど、一体中で何をしていたの?」

どうやらヨウは警察に見つかっているらしい。そして、清水も疑われている。

「分かりません。長話をしていましたけど俺は中国語が分からないので。それに、ギャングのアジトだということも今初めて知りました」

彼女は写真を仕舞い、目を細めて清水を見つめる。

「さすが詐欺師。嘘をつき慣れてる」

瞬間、息が止まった。何故中国の警察が清水が詐欺師であることを知っているのか。

「そんなに睨まないでよ。君はこの男、姚励兴の仲間なんでしょう?」

「さぁ、どうだろうね」

「今更隠さなくていい。我々はヨウを捕まえたくて君に協力をお願いしに来たんだ。まさか、断るなんて言わないよね?」

清水は黙る。一体この女は何を考えているんだ。

「…条件によるな」

「言うと思った。もしヨウを捕まえることが出来たら、君の罪を見逃してあげる」

「なんだって?」

「貴方の罪を見逃してあげるって言ってるの。協力してくれないなら、今すぐ手錠をかけるだけ。どうする?」

拒否権は無いに等しい提案だった。

清水は露骨にため息を吐く。

「…協力すればいいんだろ、協力すれば」

「そう答えてくれると思った」

彼女は欲しい答えを聞けて満足したのか、優しく清水に微笑んだ。

彼女の計画はこうだ。

清水がヨウと黄金骷髅の麻薬取引の日時、場所の情報を警察側に与える。取引当日。お互いに麻薬と金を交換した瞬間を狙い現行犯でヨウと黄金骷髅の連中をまとめて逮捕する。単純な計画で、清水へのデメリットは金が手に入らない事くらいだった。

「あ、これを付けてて欲しいんだけど」

彼女は黒い小型の盗聴器を清水に渡した。

「盗聴器。貴方がどんな会話をしているか聞かせてもらうから 」

「信頼されていないみたいだな」

「犯罪者を信頼するなんてありえない」

「そういえば、あんた名前は?」

「周渊(シュウ・エン)よ」


夕暮れ時。ホテルに戻りヨウと合流した。

「観光は楽しめたかい?」

「あぁ、楽しめたよ。お前が俺を置いていかなかったらもっと楽しめただろうけど」

ヨウは特に興味を示さず風呂に入る準備をしていた。

「で、お前はどこに行ってたんだよ」

一瞬、ヨウの動きが止まり表情が消えた。次の瞬間には、ヨウは目を細め妖しく微笑み、清水を見つめる。

「病院だよ。知り合いのお見舞いにね」

「見舞いって、大丈夫なのか?」

ヨウは「気にしないで」と言い残し、風呂場に消えていった。

清水はベッドに腰掛け、周渊の計画を思い出す。取引の日時と場所を伝える。清水のやるべき事はそれだけだ。しかし、彼女等の目的はヨウを逮捕する事。清水は必然的にヨウを裏切る事になる。

恐怖しているのか、興奮しているのか分からないが心拍数が上がる。あいつを裏切る事に躊躇しているのだろうか。

1年以上ヨウと共にしているが、信頼のある関係とは言えない。仲間意識が強いわけでもない。ヨウがたまたま捕まえた詐欺師を “仲間” と言い、好き勝手連れ回しているのが現状の2人の関係だった。

裏切る事に躊躇する理由がどこにあると言うのか。むしろ裏切られたヨウの顔を想像し、忍び笑いを漏らしてもよいではないか。

試しに愛犬に噛まれた飼い主のような顔をするヨウを想像してみる。

微笑むこともできなかった。

清水は思考を放棄しベッドに倒れ込む。

昔のように、自分最優先で行動すれば上手くいくはずだ。俺はいつだって大丈夫だった、失敗しても死ぬことはなかった。どうせうまくいくだろう。

清水は眠気に身を任せ、眠りに落ちた。


風呂から出たヨウはベッドに横になり眠る清水を見つけた。無防備だなと思いながら適当に毛布を被せ、スマホを手に取る。

高昇から連絡が来ていた。

メッセージを確認する。どうやら早めに取引を行いたいらしい。金を用意できているのならこっちは文句無しだ。

返信をすると、数分後に再びメッセージが届いた。

「早いな」

日時と場所が書かれた簡潔なメッセージだった。取引は2日後。後は清水にこの事を伝えれば取り敢えず時間ができる。

ヨウは静かにスマホを閉じた。


取引当日。日は沈み、廃墟化した倉庫にて取引が行われる事になった。 街灯のない暗闇を照らすのは欠けた月だけ。

清水は飴が大量に詰まったアタッシュケースを片手にヨウの後ろを歩く。本当に飴を麻薬として売れるのか、未だに信じきれていない。

ヨウは相も変わらず微笑みながら高昇が来るのを待っていた。

清水は緊張する。取引に対しての緊張では無かった。ヨウを裏切る事に躊躇し、緊張しているのだ。

もう決まった事だ、今更後戻りはできない。

早まる鼓動を落ち着かせようと深呼吸をしてみたが変わらなかった。

やがて黒い車が現れ、中から高昇と彼の仲間であろう男数人が出てきた。

「待たせたか」

「いえいえ、こっちが早めに来ていただけですよ」

空気が強張る。不穏な雰囲気が漂い始めた。

「で、ちゃんと “飴” は持ってきたんだろうな?」

「ちゃんと持ってきてますよ」

ヨウは清水を手招きする。ゆっくりとヨウの元へ近づき、飴の詰まったアタッシュケースを高昇の目の前に持ってくる。

「そちらはちゃんと持って来ましたか?312万元」

高昇はヨウを鋭く睨む。 後方に立っているアタッシュケースを持つ男を呼び、ヨウと清水に中身を見せる。

中は100元札の束で隙間なく埋め尽くされていた。

「確認できただろ。さっさとよこせ」

「そんなに急かさないでも大丈夫ですよ。ふふ」

清水の持っているアタッシュケースと札束のアタッシュケースを交換する。

お互いに目当ての物を受け取った瞬間、暗い物陰から拳銃を構えた警察官が数十人飛び出し、清水達を囲んだ。

黄金骷髅の連中は何が起きているのかと騒ぎ出す。ボスである高昇は明らかに慌てふためき、ヨウは眉間に皺を寄せ顔を歪ませていた。

コツコツと落ち着いた足音が建物内に響く。警察官の隙間から、場違いなほど落ち着いている周渊がヨウに歩み寄る。

「やっと会えた」

周渊は優しく微笑む。が、目が笑っていなかった。

ふと、清水は周渊と目が合った。

「ありがとう、清水くん」

その言葉にヨウが振り返る。周渊と同じく、口元だけで微笑んでいた。

「裏切ったのかい?」

「…仕方なかったんだ」

清水はヨウの目を見て話すことが出来ず、ヨウの足元を見ながら喋っていた。

「あっそ」

タイミングを見て周渊はヨウに話しかける。

「お話は終わった?じゃ、パトカーに乗ろっか」

「いいですけど、あの男は大丈夫ですか?」

ヨウは周渊の後方にいる黄金骷髅の1人に指を刺した。

周渊が確認しようと振り返った瞬間、ヨウは警察官の脇を通り抜けて走って行く。

騙された周渊は小さく舌打ちをした。

清水は予想外のヨウの行動に唖然とする。

バンっと銃声音が倉庫内に響いた。

その場にいた全員が音のする方向を見る。1人の警察官が、逃げようとしたヨウの背中に向けて発砲していた。

清水の目はうつ伏せに倒れて血を流し、微動だにしないヨウに釘付けになる。

「… 周渊。聞いていた話と違うぞ」

「想定外の事も起きる」

周渊は仕方がないというように話す。清水や撃たれたヨウのことは一切気にせず、周りの警察官に指示を出す。

黄金骷髅と警察官を乗せたパトカーが倉庫から出て行き、その場には清水と周渊だけが残った。

清水は周渊の胸ぐらを掴む。

「殺す必要なんて無かっただろ。なんで撃った、なんで殺した?」

「清水くん。君は自分の立場をわきまえるべきだよ。私は君の今までの罪を見逃してあげたんだ。別に今すぐにでも牢獄に入れれるけど、嫌でしょ?」

胸ぐらを掴む手が緩む、清水は何も言えなかった。

周渊は清水の手を払い、ヨウの身体に近づいた。そして、血溜まりを歩いた靴でヨウの身体を踏む。

「はーい、もう茶番は終わり。笑ってないでさっさと起きなよ」

ヨウはくすくすと忍び笑いを漏らしながらゆっくりと立ち上がった。

清水は驚き声も出ない。

「ふふ、ふふふ。あはははっ。あー、苦しかった!笑いを堪えるのに必死でさぁ」

ヨウは楽しそうに話しながら、顔についた血を拭う。

「…どういう事だよ」

「ん?あぁ、ごめんごめん。これ、血糊。中は防弾ベスト着てるから無傷!今回もサイコーだったよ、タオズー」

清水は今だ理解できずに突っ立っていた。

「周渊は刑事じゃなくって、俺のお友達の詐欺師なんだ」

気づいた清水は忌々しそうに顔を歪め、ヨウを鋭く睨む。対するヨウはにやりと笑った。

ヨウの横に立っていた周渊が同情するようにため息を吐く。

「清水くんは最初っから、この男の掌の上で踊らされていたってわけ」

「そゆことー」

ヨウがピースサインを清水の方に向けて突き出す。

本気で殴りかかってやろうと思った。

周渊が地面に放置された2つのアタッシュケースに近づき、片方を開け始めた。

「ねぇリーシン。この飴、貰っていいよね?」

「いいよ。あっ、それ二重構造になってて、仕切りの下に飴以外の日本のお菓子入れてあるから」

「えー本当?さすがリーリー気が利くねぇ」

嬉しそうにアタッシュケースを漁りだす周渊を、清水は眉間に皺を寄せながら眺めていた。

ヨウが清水の横に歩み寄る。

「彼女は日本が大好きらしくてね、報酬は金より日本のお菓子をあげた方が動いてくれるんだよ」

「…ヨウ。計画は共有しろって言ったよな?」

「言われたね」

「もしまた1人で勝手な事して俺を弄ぶような事をしたら許さねぇからな」

清水は鋭い目でヨウを睨んでやった。

ヨウの表情はいつもの微笑みのまま変わらない。どうやら無効果らしい。

「はいはい。今度からは共有するから、仲直りのハグをしよう!」

ヨウは両腕を大きく広げる。

「俺の服まで血糊で汚す気なのか?」

「痴話喧嘩しないでくださーい」

アタッシュケースを両手に抱えた周渊が2人の間に割り込む。

「これ、312万元のお届けです」

そう言って、周渊はアタッシュケースを清水に押し付けた。

「今回は大収穫!タオズー。言っとくけど、俺はそんな簡単に死なないからね」

ヨウはウィンクする。

流石にムカついた清水は嘆息し、ヨウの肩を殴ってやった。

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