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「おりゃあっ!!」
ザシュッ!!
バタンッ
俺が愛剣を一閃すると、魔物は倒れ、消滅した。
そんな俺に、労いの黄色くない声が掛かる。
「お疲れ。もう少し相手の動きをしっかり見た方がいいぞ。気をつけないとその一瞬が命取りになることもあるけど、相手の次の動作に合わせたらより確実に、そして弱い力でも倒せるからな」
「そうか!次はギリギリまで引きつけてみるよ!」
凄い…これならダンジョンを攻略しながら強くなれるぞ……
「そ、そうか。頑張れ」
「ん?何かおかしかったか?」
指導してくれた割には不可解だな。
「…前のパーティでは、俺が口を出したらみんな嫌がっていたんだよ。俺には俺のやり方があるってな」
「まぁそりゃそうだろ?だけどライルは間違ったことを言ってないんだから気にすんなよ。俺は素直に助かるぞ?剣は完全な見様見真似や我流だからな」
命懸けなんだから仲間内での下手なプライドは足を掬われる。
俺を見てみろ!女性陣の言いなりだぞ!
「それで剣の振り方がおかしいのか。セイは素振りをした方がいいな。もちろんちゃんとした型でな」
「それも教えてくれないか!?」
「いや、俺は短剣の二刀流だからな。型が違うし扱い方も、間合いも違うから無理だな」
確かに…俺の剣は所謂両手剣(ツーハンデッドソード)と呼ばれる物で、全長が1.5mはある。
そして、ライルの短剣は40cmくらいのモノと短剣にしては長めの50cmくらいの二刀だ。
剣だから二剣か?
「そうか。まぁ知り合いに聞けばいいか」
「いるなら聞いた方がいいぞ」
「そうなんだが、俺の知り合いの剣士はロングソードだから、これもまた長さが違うんだよな…」
リリーの剣はワンハンドソードだが一応両手持ちも出来るみたいだから聞いてみるかな。
「それでも短剣使いの俺よりはマシだろうな。それより、戻らなくて大丈夫か?」
「ああ。まだ夕方だからな。日が落ちるまでまだもう少しある」
俺は時計を見て答えた。
「それは時間を計る機械か?凄く高価な物を持っているんだな。しかも俺が知っている物に比べてかなり小さいし…」
「そうだな。あっ!そういえばライルにも渡しとくわ」
俺はそう言って予備の腕時計をライルに渡し、使い方も教えた。
もちろん最初は断られたが、時間が正確だと待ち合わせが楽だからと押し切った。
「よし!ついでに顔合わせをしよう。ライル。時間は大丈夫か?」
「時間はいいが…ホントに俺と会って平気か?」
まだウジウジ悩んでんのかよ。そんなに俺とキャラ被りしたいのか?
「そんなことを気にする奴らじゃねーよ。むしろそんなことを言ったら、励ましがウザいことになるからやめとけよ」
「わかった。セイの仲間ならそうなんだろうな」
それはどういう意味かな?
「よし。行くから掴まれ」
ライルが肩に手を置いたのを確認して、転移魔法を発動させた。
「ここがセイの家か?」
リゴルドーの屋敷に飛んだ。もちろんいきなり室内だと聖奈さんもなにしてるかわからんから、そこは自重した。
「ああ。エンガード王国にある、リゴルドーって街の家だ。これとは別に他の拠点もあるからまた連れて行くけど、今日はここともう一つだな」
「エンガード!?帝国の北にある国だろ!?」
ライルは俺の転移魔法の凄さに驚いてくれた。
最近タクシー扱いで誰も賛辞をくれないから新鮮だ……
「そうだ。驚いているところ悪いが、中に入るぞ」
「あ、あぁ」
ライルを伴い家へ入る。
だいたい聖奈さんはリビングにいるから、そう思って向かうと、凄い事になっていた。
「せ、聖奈?何だこれは?」
凄い事になっているリビングにライルを待たせて、物音がしたキッチンに行き、聖奈さんへ話しかけた。
「おかえりなさい!何って、セイくん達のためのお料理だよ?」
「それにしたって、凄い数だぞ?」
テーブルには保存用の容器がこれでもかと積まれていた。
「どれも冷凍や冷蔵をしたら日持ちする物だから、大丈夫だよ!」
「そうか…悪いな」
「気にしないで。迷惑を掛けてるのはこっちなんだから」
「迷惑じゃないが…それより、新しいパーティのメンバーを連れてきたから、顔合わせしてくれ。見たら驚くぞ?」
「セイくん…驚くって…まさか幼女じゃないよね?」
こいつ……
「んなわけないだろ!さっ、いくぞ」
聖奈さんを伴いリビングに戻ると、すぐに声を上げた。
「あっ!あの時の!」
「よう。ライルだ。セイに誘われてな。世話になるぞ」
ライルは礼儀正しい。口は悪いけど。
「セイくんをよろしくね!私はセーナって言います。料理担当兼商人兼カメラマンをしてるよ」
「うん。ライル。真面目に聞かなくていいからな」
何だよカメラマンって。分かるわけないだろ!
「そ、そうか。セーナだな。よろしくな」
「うん!よろしくね!そうだ!良かったらライルくんもご飯食べていってよ。今日は作り置きじゃなくて作りたてだから、美味しいはずだよ」
アンタの飯は冷たくても美味いんだよ。
「ライル。折角だ。食ってけよ?」
「じゃあ頂くか」
俺達は仲良く舌鼓を打った。これで同じ釜の飯を食べた仲だな!
釜はないけど!
「初めて食べたものばかりだったが、美味いな…」
「あら、ありがとう!良かったら作り置きもまた食べてね!セイくん友達いないから…」
おい!人には言っていい事実と、言ってはならない事実ってもんがあるんだよ!
「友達?俺もいないから一緒だな」
「いや…ライルのは亡くなったからだろ?俺は元々いないんだよ…」
「大丈夫!セイくんには飲み友達がいるでしょ?」
あの王様は友達枠でいいのかい?
「そろそろ時間だから送るぞ?」
これ以上俺の暗い過去をバラされてたまるか!!
「そう?じゃあ、お願いね」
「ライル。次に使う転移は巻き込まれたら死んでしまうから、絶対に近づくなよ?」
「なんだよ…その物騒な魔法は…」
少し腑に落ちないと思うが、俺がしょーもない嘘をつくとは思ってないくらいには仲良くなったから信じてくれたみたいだ。
転移室からマンションへと転移した。
「じゃあここからはホントに別行動だね。寂しいと思うけど、私のクローゼット漁ったらダメだよ?」
「漁るか!!」
転移した途端これだもんな。しおらしいとか、哀愁とか言うモノとは対極にいる人だ。
「私はここにはいないと思うから、地球に帰ってきた時はメールをチェックしてね。後、友達と楽しくダンジョンに潜れるからって無茶しちゃダメだよ?」
「そうなのか?わかった。無茶は聖奈の方だろ。無理すんなよ?」
俺は聖奈を残して家へと戻った。
もちろんお別れのチューとか言ってきたけど、何もなかったから端折る。
「待たせたな。次はナターリア王国、通称魔導王国の王都に転移する。そこにも仲間がいるんだけど、家にいるかどうかは不明だ」
戻った俺は足早にリビングへ行き、ライルにそう告げた。
「何だかもう、驚き疲れた…セイが異常だってことくらいしか感想がでねぇ」
「俺からしたら魔法も使わずにそこまで動けるライルが異常だから、おあいこだな」
「いや、俺クラスはゴロゴロは…いないが、Aランクにはいる…セイみたいな奴はいないだろうな」
何だか遠い目をしているが、あまり遅くなっては二人に悪いから連行だ!
「えっ!?いない?」
水都の屋敷に着いた俺は、ライルを連れて家に入ると、爺さんから二人がいないことを聞かされた。
「そうじゃ。二人は一度家を出て、戻ってきたかと思うたら、『暫く帰らないと思いますが、セイさんが来たらよろしくお伝えください』と言って出て行ってもうたわ」
「そ、そんな…」
い、家出か!?ついに不良の道に……
「せ、セイ、大丈夫か?」
項垂れている俺を心配して、ライルが声を掛けてくれた。
「此奴はその二人の事となると、いつもこうなるでな。気にせん方がええ。それよりもリリーに用があるんじゃろ?酒を飲む前に話した方が賢明じゃぞ?」
「そうだな。ありがとう爺さん」
リリーは酒癖が最悪だからな…頼む!まだシラフでいてくれ!
俺はそう願い、ライルをリビングに残してリリーの部屋へと向かった。
「なに?剣を教えろ?」
いや、そんな上から頼んでませんよ?
「ああ。俺の剣はこれなんだが、素振りを教えてくれないか?」
「鍛錬をしたがるとは…」
何?変態か?いいぞ。言われ慣れている。誤解だがな!
「天晴れだ!よし!裏庭にでろ!早速指導してやる!」
「おお!頼む!」
なんか知らんがやる気に満ち溢れているな。何で人妻なんだよ……
ライルに爺さんの晩酌の話し相手を任せ、俺は裏庭に出た。
「まずは私の素振りを見ろ。両手剣として扱うからそう間違ったものではないはずだ」
「わかった」
変なところばかりに目がいきそうだが…そこは心を鬼にして、しっかり剣筋や身体の使い方を盗んでやる!
30分程指導してもらい、今日の鍛錬は終わった。
「また明日見てやるから、日が暮れたら来い」
「ありがとうございました!」
師弟関係は大切だからな!爺さんはもう師弟関係じゃないし、そもそも嫌がったからな。
「私もビクトール様と同じで上下関係は苦手だから、その態度は鍛錬の時だけにしてくれよ」
「わかったよ」
似たもの夫婦か……
くそっ!お似合いですねっ!
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聖「ミランが家出した…」
ライル「爺さんは大丈夫だって言ってたぞ?」
聖「…エリーが迷子になった…」
ライル「エリーって言うのは水都で暮らしていたんだろ?迷子になるわけない」
聖「いや、エリーをなめたらいかんぞ?あの子は予想を超えてくるポンコツだからな!」
ライル「ある意味信用してんだな…」
聖(おやつあげるおじさんとかに誘拐されてないよな?!)
聖の苦悩は続く。