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しなやかな手が、うつ伏せになっている俺の首筋から肩へと滑らかに滑り、
マッサージが施こされていく。
一日の仕事終わりのあとのこと、たまらなく気持ちいい。
その肩に降りてきた指先は次に肩甲骨でしばらく留まり指圧を繰り返される。
そのあと、上腕二頭筋、上腕三頭筋から腕橈骨筋《じょうわんとうこつきん》へと降りてきて、
力の入った マッサージを両腕に受ける。
そこにしばらく時間を掛けたあと、背中にも力を入れて指圧される。
『あーっ、天国に行きそうだ。
ここが自分の部屋だったならどれほどよかったろう』
などと思うほど気持ちよく、本当に自室じゃないことが残念だった。
自宅の寝室であったなら、そ《こ》のまま眠ることができたからである。
そんなふうに考えながらも天国への階段を駆け上がろうとしていると、今度は
腰辺りで動いていた指先が、尻の割れ目付近すれすれまでやってきた。
そしてその手は、尻のすぐ下の太腿へと移動した。
あぁ、何という気持ちよさ。
多少の快感の混じる心地よさを感じながら、このまま両足首の辺りまで丹念に
施術されるのだと思い、肩から力を抜いて先程の天国の階段を続けて
上《のぼ》ろうとしたのだが……。
「加納さん、もっと気持ちよくしますから、はいー、上向いてください」
と声が掛かる。
『いやぁ~、このまま続けてほしいのですが……』とも言えず、天国の階段で
足踏みしたところで俺は嫌々上を向いた。目は瞑ったままで。
すると、彼女の指先は素早く器用に、脚の付け根の溝の円側にある三角形状の
下腹部分である鼠径部を縦斜めのライン上10cm前後に指を移動させながら
微妙な力加減でリンパマッサージと称して押し始めた。