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恋愛不信の私が、ワケあり御曹司からなぜか溺愛されています

第6話 - 第6話　嘘つき

2025年09月11日

#溺愛

#一次創作

#大人ロマンス

#甘々

煉彩

皆、業務に戻り、私も朝霧部長のことは気になるものの、基本的には部長と関わる機会も少ない。

今日は会話なんてすることはないだろうと思っていた時だ。

「和倉さん！ちょっと来てくれるかな」

元部長に呼び出される。もちろん近くには朝霧部長もいた。

「はい」

返事をして向かうと

「広報、どうなった？あんな少しの修正、もう終わっているよね。それと指示通りきちんと朝霧部長の異動の内容は記載してくれたんだよね？」

朝霧部長のことを記事にしろなんて指示は受けていない。もともと担当の葉山さんだってそんなことは言っていなかった。

「申し訳ございません。データがフォルダに残っておらず、ひな形も見当たらなかったため、一から作り直している途中です。朝霧部長の件については、私の確認不足でした。これから記載します」

頭を下げると

「データがパソコンに入っていないなんて、どうしてそんな嘘をつくんだ。キミが忘れていただけなんじゃないのか？」

いつも通り私が悪いと決めつけられたが

「いえ。本当です。葉山さんにも確認……」

「ええっ、私、きちんと場所、教えたじゃないですか。メモにして渡しています。ほら！」

会話が聞こえていたのか、葉山さんが話に入ってきた。

葉山さんも交え、確認をすると、その通りフォルダ内に書式もひな形もデータが残っている。

どうして？絶対、見たところなのに……。

誰かに操作された？

葉山さんだってこの前は消しちゃったって言っていたのに。

私のこと、ハメたの？

つまらない虐めの材料にされるのは慣れている。

「申し訳ございません。私のミスです。早急に対応いたします」

「どうしてこんなミスが続くんだね。みんな集中して疲れている中、頑張って仕事をしているんだ。キミだけじゃない。それに、キミのミスが皆の仕事を増やすんだよ」

元部長は、おいおいと私のことを汚い物を見る目で罵る。

それに

＜また和倉、何かやらかしたのかよ。仕事できないやつだな＞

＜あの一部の修正だけだろ。何やってんだよ。新しい部長にも目をつけられたりして＞

＜そろそろクビになるんじゃね？朝霧部長、会長の息子だし、親の権力使えばあんな奴クビにして、新しい可愛い子雇うよ、きっと＞

うしろからひそひそと聞こえてくる声。

誰も私を擁護することなく笑っている。

それに誰かの不幸を楽しんでいる、皆ストレスが溜まっているから、私のことを見てストレス解消のネタにしているんだろう。

ほら。これで朝霧部長も仕事では私がこんな奴なんだって、諦めてくれるはず。

だけど、本当は悔しかった。言い返せない自分とこの状況が。

私、悪いことなんてしていないのに。

慣れているとは言っても、精神的に堪えるな。

転職した方がいいのだろうか。

薄っすらそんなことを考えていたが

「待ってください。何度も使う重要な書式の場所が社員で共有されていないことが問題だと思います。和倉さんも探したと言っていました。それに金曜日の夜、引き継ぎでこちらを訪れた時、和倉さんは残業をしていて、チラッと見たんですが、広報を作っていました。社員の業務内容を把握するよう覚えましたが、担当は葉山さんです。どうして和倉さんが残業していたんですか？それに今の加藤部長の発言は、一方的に彼女を責めるものです。事情もきちんと聞かないで、そのような発言は控えた方がいいかと」

え、もしかして朝霧部長、私のこと、信じてくれているの？

それにさりげなくかばってくれてる。

「この件は、あとで私が処理をします。とりあえずファイルの保存場所、基本的なところから見直していきましょう」

朝霧部長から

「和倉さんはもう戻って良いですよ」

声をかけられた。

「はい」

プライベートと全く違う、親の力で部長という役職になったわけではない。確実に自分の実力で昇進しているんだ。

朝霧部長の見立てと引かない部分に尊敬を覚えた。

私が悪いって空気になっていたのに、そんな空気を変えてくれた。味方ができたみたいで、嬉しくなる。朝霧部長が部長として居てくれるのなら、まだこの仕事、頑張れる。

そんなプラスな気持ちにさせてくれた。

通常業務に戻り、あっと言う間にお昼休みだ。