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「これ。受け取ってくれないか?」
彼が両手で優子に紙袋を差し出す。
「え…………?」
戸惑いながら、彼女が紙袋の中の物を取り出し、広げてみた。
「こっ…………この服……」
廉が差し出した物を見た瞬間、彼女のキリっとした瞳が、少しずつ見開かれていく。
ロイヤルブルーのボートネックのプルオーバーブラウスと、控えめな広がり具合のロングフレアスカート。
コットンリネン素材で仕立てられたセットアップは、数日前に立川のデパートで、優子がいいな、と感じつつ、購入を見送ったHearty Beautyの服だった。
「そのセットアップ、Hearty Beautyの今夏の新作なんだ。岡崎に似合いそうだな、って思って」
大きな瞳を揺らしながら、服を凝視している優子を、落ち着いた声音で包み込む廉。
「わっ…………私に……は……」
優子は、ソファーの上に、セットアップをそっと乗せる。
彼女が声を詰まらせていると、視界が潤み始め、言葉を紡げない。
ハアッと短く息を吐き切った優子は、躊躇いがちに廉を見上げた。
「私……は…………罪を犯し……Hearty Beautyの名に……大きな傷を付けました……。私……には……Hearty Beautyの服を…………着る資格なんて……ありま……せ……ん……」
瞳の奥がピリピリと痺れ、鼻の奥がツンと痛い。
彼女の目尻に涙が溜まり、熱を孕ませながら頬を伝っていた。
「まぁ……確かに、君が罪を犯したせいで、我がブランド名は穢れてしまった。売り上げも激減し、都内に出店していた店舗の約三分の一近くが、閉店を余儀なくされる事態となった」
「だったらなぜっ!! 私にHearty Beautyの服──」
「岡崎」
優子の言葉の先を廉が退けると、真剣な眼差しを向けられた。
「君が入社した理由は…………Hearty Beautyが大好きで、憧れだったからだろ?」
「でも!! 私──」
「俺は……君の中に、今でも我がブランドに対する愛が…………残っていると思いたい。いや…………思っている」
廉は優子の肩に、手をポンッと置いた。
「以前は都内にしか店舗を出さなかったが、あの事件以降、売り上げ挽回を目指して、現在、首都圏の百貨店に出店している。四月に、都下第一号店として、立川のデパートにオープンさせた」
(あ……だから…………あそこのデパートに……)
優子は、ハッとしたように身体と唇を小さく震わせた。
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