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(深澤視点)
頭がふわふわする。
自分の体が自分の体じゃないみたい。
この感覚…初めてじゃない気がする。
「…..ん….」
ふわふわしたまま目を開ける。
たぶん、ここは現実世界ではない。
(俺の意識…?)
ここは、意識の世界だと思う。
俺の、内面?みたいな…
周りに広がってるのは、鏡。
鏡しかないな…
えっと、なんだっけ?
鏡は本当の自分を映す、みたいなのあったよな…
別にどうでもいいんだけど。
どこへ行ってもあるのは鏡だけ。
「どこに行けば、いいんだろう…」
俺は今、何をすればいいの?
行くあてもなくさまよってたら、ひとつの鏡に目がいく。
動いてる。
鏡の中の誰かが動いてる。
その鏡の方へ向かえばいいの?
俺は、なんとなくの思いで鏡に触れてみた。
「…..っ!」
触れた瞬間、鏡が光って思わず目を閉じる。
「…..?」
次に目を開けた時には、景色が変わっていた。
(ここ….)
なんか見覚えあるな…
なんだろう?
『たつやくん、すごーい!!』
唐突に幼い声が響く。
あ、そっか….
ここは…..
『え、えへへへ。そうかな?』
褒められて笑う”幼い俺”。
(俺の、記憶….か….。)
俺が、初めて必要のない才能に気づいた時だ。
『すごいね!』
『いいなぁー』
『かっこいい!!』
周りから聞こえてくるのは称賛の声ばかり。
俺…昔はこんなだったんだ…
改めて幼い俺が笑ってる顔を見る。
周りには人が沢山いて、いつも話の中心にいる。
無邪気に笑う俺に嫌気がさしてくる。
なんで笑えるんだろう…
こんな才能、意味ないのに…
今思えば、俺はこの時から誰かの役を奪ってたな…
『辰哉くんのおかげで、先生助かるよ~』
先生はそんなこと言ってるけど、俺は、先生という役を奪ってる。
先生が教えるはずなのに、俺が周りに教えてる。
先生、ごめんね。
俺、邪魔だったよね…?
「….っ…!」
また、景色が変わる。
次は、小学校の教室か…
『はーい!クラス委員やりまーす!』
これは、5年生?
たしか、クラス委員決めることになったんだよね。
笑顔で手を挙げてる俺。
もう1人、手を挙げてるのに…
また、邪魔だ。
『どっちがいいと思う…?』
『やっぱり辰哉くんじゃない?』
『私、深澤くんに手あげるよ。』
ヒソヒソと話し合ってる。
みんなが俺を選ぶ。
もう1人もそれに気づいてて、どんどん身体を縮めてく。
気まずいよな。
ごめんな、俺が手を挙げたせいでこんなことになって。
俺が手を挙げたのは、なんとなくだった。
クラス委員はかっこいいって思って。
みんなから注目されるからっていう責任もなんもない理由。
こんな軽い理由の俺が選ぼれちゃって、ごめん。
『俺がクラス委員?やったー!』
圧倒的票数で選ぼれた俺の余裕の笑顔。
やめろよ….
これ以上調子に乗るな….!
この世界に干渉できたなら、俺は俺を殴りたい。
こんなやつ…..
消えればいいんだ…..
次に目を開けたのは、中学校。
そうだ…
ここで、初めて俺の能力が開花したんだ。
『ふんふんふふふ~ん♪ふんふんふふんふ~ん♪』
鼻歌交じりの声が聞こえる。
視線を向けたら、そこには満足そうに笑いながらスキップする中学時代の俺。
…完全に調子乗ってるな、こいつ…..
イライラする。
お気楽すぎるこの頃の俺。
早く…消えてくれよ….
『…ん?』
急に足が止まる。
森の中に入るんだろ?
『何かいるのー?』
俺の予想通りに森の中に入っていく。
やっぱりそうだ。
『うわっ、烏だ…ボロボロだぁ…..』
最初は嫌悪感が強かったんだ。
ボロボロの烏なんて、誰も触りたくなんてない。
でもさ….
『…..俺の家、来る?』
俺は、見捨てらんないんだよ。
だって…..
ボロボロなところが….俺に、似てるから…
ここだけは、ずっと変われないんだ。
『連れてきちゃったけど…どうしよう….』
ボロボロの烏を抱えて歩いてる俺。
このとき、なんで気づかなかったんだろうな。
周りがカラスに気づいてないこと。
『母さん、許してくれるかなぁ?』
そんなことも知らずにのんきに烏に話しかけてる。
バカだなぁ….
自分で自分にそう思うのもおかしいか…
『みんな、君のことが見えてないの…?』
やっと気づいた?
鈍すぎるだろ。今の俺だったらそんなんすぐ気づくのに。
その烏は特別なんだよ。
お前のいらない才能のせいで見えてしまった…..
その子は….俺とは、全然違う….
みんなには、見えてないかもしれないけど…
俺と違って、特別…だから…
また、景色が変わる。
「…..っ…!」
ここ….
まさか…..
脳が、身体がこの記憶を見ることを拒否する。
でも、俺は動けない….
『お前、ふざけんなよ…!!』
高校、だ…..
やっぱりそうだ。
これが、全ての始まりだったな….
『お前のせいで…!!』
3年の先輩たちに呼び出されて、急に殴られて怒鳴られて…
なのに、この時の俺は事の重大さを理解してなかった。
なんで、気づかねぇんだよ…
お前は、なんで自分は何も知らないですって顔出来んだよ….!!
『お前がレギュラーに入ったせいで!藤森が全国出れねぇんだよ!!!』
俺の怒りを代弁してくれるかのように、先輩の怒鳴り声が響く。
『…え…?』
なんだよ、その顔….
お前に、そんな顔する資格なんてない…
お前のせいなんだよ。
お前が藤森先輩の舞台を奪った。
まただ。
あの時だってそうだっただろ?
お前が軽い気持ちでやったことが、誰かにとっては邪魔なんだ。
違う…
誰かにとってじゃない…!!!
みんなにとって俺は邪魔なんだ….!!!!
ようやく気づいた俺は、足を怪我したと嘘をついて試合に出ない。
それでいいんだよ。
でも遅かったんだよ….
気づくのが…..
何もかもが、遅かったんだよ…
結果は、第1試合で敗退。
『深澤くん、ごめんね。』
藤森先輩….頭下げないで…..
『な、んでですか?』
俺が、全部悪いから….
『嘘でしょ?足怪我したなんて…俺を試合に出すために。』
なんで、バレちゃったの…
いや、藤森先輩に隠し事なんて無理か…
『深澤くんが出てたら勝ててたんだろうな…俺から監督に言ったんだよ。深澤くんを出してくださいって。』
そんなことないんです。
俺がいなければ、藤森先輩の練習時間も多く取れて、勝ててたのに….
『これからも、頑張ってね。』
無理、ですよ….
先輩の舞台を奪って、まだ、そこに立ち続けるなんて…..
俺にはできない….
だから、バスケ部を辞めた。
いつ俺が誰かが座るはずだった椅子を奪ってしまうか分からない。
俺は前に出てはいけないんだ。
後ろでサポートに徹さないと…
前に出たら、誰かの役割を奪う。
自分の承認欲求なんか捨てろ。
認めて欲しいなんて思うな。
目立つと迷惑になる存在なんだ。
こんな才能誇りに思うな。
こんなん才能じゃない。
目立つのをやめろ…!!
前に出るな….!!!
そう言い聞かせてたんだ。
だから、俺は”笑顔の仮面”を貼り付けるんだ。
誰かの迷惑にならないように…
誰にも嫌われないように….
俺は、俺であることを捨てるんだ….
そうすれば、きっとみんな幸せになれるから….
『気持ちわりぃ』
後ろから声がする。
振り向くと、そこに立ってたのは….
『なんだよその笑顔…気持ちわりぃ。』
「しょう、た….」
そうだ。
俺は翔太と一緒に任務したことがあるんだ。
『えぇ?君、もしかして俺に言ってる?』
翔太に気持ち悪いって言われてもニコニコ笑う俺。
今なら、状況に応じて表情使い分けれるけど…
この時の俺は、ただ笑うしかわかんなかったんだよね。
今更だけど、翔太には気づかれてたんだ…
当たり前か。
翔太は人の顔をよく見てる。
ずっとへらヘら笑ってる俺に気づかないわけがない。
『…..気持ちわりぃな…』
3回目の気持ちわりぃを聞いても、俺は笑顔を辞めない。
そんな俺に無意味だと感じたんかな?
翔太はそのまま背を向けて行っちゃった。
『….なんだよ。気持ち悪いって….』
残された俺は笑顔が崩れる。
さっきまで、あんなに笑ってたじゃねぇかよ…
『もう…やめようかな….』
…..は?
『こんなこと、続けるなんて無理だ….』
何、言ってんだよ…..
『笑顔って…こんな、辛かったっけ….?』
ふざけんなよ…!!
それさえもできなくなったら、お前に存在価値なんてない!!
…..いや…..
「こんなこと、してても…..存在価値なんて….」
ないんだよな….
わかってたことなのに、なんで….
「こんなに、、苦しいんだ…..?」
『今日から相棒の岩本照です。よろしく。』
「…..照….」
また景色が変わったと思ったら、目の前に照がいた。
これは、照と初めて会った時かな….
『岩本さんか~!よろしくね!俺は深澤辰哉!みんなからふっかって呼ばれてるよ!』
第一印象を大事にしてたんだっけ。
とりあえず笑顔でテンション高けりゃいいって思ってたんだろーな。
単純すぎる。
馬鹿なやつだって思われてるだろ。
いや、それでいいのか….
それくらいが、ちょうどいいんだ。
『ふっか。呼びやすいし、いいあだ名じゃん。』
『式神使いか….ふっか似合ってる能力だね。』
『ありがと。ふっかのおかげだよ。』
「……」
照は、いっつも褒めてくれてたなぁ…
すごい、嬉しかったな…
それにさ…
『今のはよくなかった。』
『無理すんなよ。』
『ひとりで突っ走んな。怪我したらどうすんだよ。』
照は、ちゃんと…
俺の事叱ってくれた…..
俺が、間違った時、ちゃんと止めてくれてた….
理不尽な怒りとかじゃない。
俺は、褒められるのも嬉しかったけど、こっちの方が嬉しかった…!
だって、どうでももいいやつの失敗なんて誰も気にしない…
間違いを指摘してくれるのは、俺に意識を向けてくれてるから…!
だから、俺は照といるのが好きだったんだ。
もっと、俺を知って欲しいって。
照の前だと、本当の自分でいてもいいんじゃないかなって….
「いつか….照の前で、この笑顔の仮面を….外せるといいな…..」
そんなバカなことを、願ってしまうくらいに…..
「……?ぁれ….?」
なんで….
いつの間にか、鏡の場所に戻っていた俺。
鏡に映る俺は、泣いてる….?
なんでだろ…
泣くようなこと、なんも無いのに….
そう思っても止まらない。
ずっと溢れてくる。
こんなに泣くなんて、いつぶりだろ…
喉の奥が熱くなってきて、何かが込み上げてくる感覚。
なにか言おうとしても、出てくるのはあとかうとか、嗚咽ばっか。
そっか……
やっとわかった。
俺は、俺の思ってる以上に無理してたんだ。
ずっと辛かった…
苦しかったんだよ….
本当の自分を隠し続けて、前に出たい気持ちを抑えて….
「……助けて….ほしい…..」
ずっと、誰かに助けを求めてた。
この笑顔の仮面を、外して欲しかった….
いつか、本当の俺を見つけて、そんな俺も好きだよって….
受け止めて欲しかった….
やっと、やっと….
自分の本当の気持ちが、わかったよ….
『ダメだよ。』
「…..っ…!」
唐突に、頭の中に…声が響く….
いつもなら心地いいって感じてたのに、今はただただ気持ち悪い。
ノイズとして、聞こえる。
ボス….の声、だ…..
ビキビキッ
「….ぁ…!」
周りの鏡に、一斉にヒビが入り始める。
空間が歪んでいく。
床が揺れ始めて、バランスが取れない…!
それでも、ボスの声は止まない。
『君を認めてくれるのは、私だけだ。』
違う….
今まで、周りを見てなかっただけ…..
『求められたい欲求を満たせる人なんて』
やめて….
『私しかいないんだから。』
そんなこと…ない….
きっと….探せば…..
『誰も君のことなんて見てないんだ。』
ちが…..
『誰にも必要とされない存在なんだよ。』
………
『そんな君を拾ってあげたのは誰?』
…………..
『誰でもない、私だよ。』
……..そう….だ….。
ボスの言う通りだろ?
何、甘えたこと考えてるの….?
ありえない。
俺は、なに勝手に自分の存在を認めようとしてんだ….
俺には、価値なんて…..
誰にも見られてないから、今まで救われなかったんだ。
結局誰も見てなかった…!
『私だけは、ずっと君のこと見てただろう?』
そうだよ。
ボスだけが….
ボスだけが…俺のことを見てくれる…..
床は崩壊してるのに、立てる…
そこに…いるんですよね….?
俺はもう、救われてるよ….?
ボスが、俺のこと救ってくれたんだもん…..
俺は、ボスのために動けばいいんだ。