「最後の思い出を作ろう」
あなたのその言葉を、私はいとも簡単に受け入れてしまった。
どうしてなのかわからないけれど、私の体は急激に熱くなり、それを望んだ。
「絶対に後悔させない。今夜だけは俺に全てを委ねて」
甘く囁くようなセリフに心臓が音を立てる。
「でも、ちょっと……怖い」
「大丈夫。何も考えずに……さあ、おいで」
その瞬間、うっすら潤いを帯びた唇が私の呼吸を止めた。
慌てて鼻で息をする。
唇を塞がれただけなのに、失神しそうなほどに私の体はぐらついた。
最高級ホテルの一室――
高層階からの夜景が広がる大きな窓。
美しく輝く遥か下の世界を楽しむ余裕なんて今の私には無いけれど、その光景が無性に私の情欲を煽った。
ワンピースの後ろのファスナーがゆっくりと下ろされ、あらわになった背中に優しく唇を押し当てられた。
「綺麗だ」
背中に舌を這わせる行為に、私は我慢することができず、羞恥心より先に口元からはしたない声を吐き出していた。
「お願い、電気消して」
「嫌だ。ちゃんとお前の体が見たい。この美しい肌、もっと見せて……」
あなたの熱い息が、耳から首、そして、肩へとかかる。
夜景と共に、窓に写る自分が死ぬほど恥ずかしい。
「ねえ、お願い……あかりを消して」
「ダメだ。まだまだ全然足りない」
私の要求は、一瞬で退けられた。
この人の性癖なのか、意外な一面に驚きながらも、湧き上がる興奮は抑えられない。
あっという間に身につけていた物が全て無くなり、一糸まとわぬこの体は、唇、舌、指で丁寧に愛撫された。そうされている間の一部始終が窓に写り込み、その淫らな行いは、私をどうしようもなく蕩けさせ、骨抜きにした。
「……ダメ、やめて……」
「本当? こんなに濡らしてるのに? 嘘つきなんだな」
「嘘なんて……ついて……ない……」
「だったら、嘘つきだってこと、俺がキッチリ証明してやる」
そう言われて上から下まで好きにされる体。
私は意識を飛ばしそうになるくらいに感じ、悶え、欲情した。