テラーノベル
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朝。
目を覚ましたとき、
すちは一瞬、誰かの気配を探していた。
隣の布団は、もう空。
(……いない)
胸が、きゅっとなる。
理由が分からないまま、
布団の端を握って、少しだけ身を起こす。
台所から、音。
皿が触れる音と、
低く鼻歌みたいな声。
(……あ、いる)
それだけで、
呼吸が、元に戻る。
(……今の、なに)
自分の反応が、少し気持ち悪い。
みことがいるかどうかで、
こんなに気分が動くなんて。
顔を洗って、
台所に行くと、みことが振り返った。
「おはよ」
「……おはよ」
それだけの会話。
なのに、
さっきまでの不安が、きれいに消える。
(……変だ)
朝ごはんを食べながら、
すちは、みことの動きを目で追ってしまう。
コップを置く手。
椅子を引く音。
視線が合ったときの、少しだけ緩む表情。
(……なんで、見てるんだ)
自分で、自分に突っ込む。
でも、目が逸らせない。
「……?」
みことが気づいて、首をかしげる。
「なに?」
「……べつに」
すちは、慌てて視線を落とした。
胸の奥が、ざわつく。
(……見られるの、やだ)
(……でも、見たい)
矛盾。
それが、少しだけ怖い。
昼前。
みことが、買い出しに出ると言った。
「すち、留守番できる?」
その一言に、
すちは、反射的に答えそうになる。
――大丈夫
――ひとりでいられる
でも、
喉で言葉が止まった。
(……行くんだ)
(……俺、置いてかれる)
「……すぐ、戻るけど」
みことが付け足す。
その“気遣い”が、
余計に胸に刺さる。
「……いってらっしゃい」
そう言えた自分に、
少しだけ、ほっとする。
ドアが閉まる音。
部屋が、静かになる。
(……静か)
昨日まで、
この静けさは普通だった。
でも今は、
足りないと感じる。
(……俺)
(……ひとり、嫌になってる?)
ソファに座って、
膝を抱える。
みことのいない部屋で、
みことのことを考えている自分に気づいて、
すちは、眉を寄せた。
(……これ、なんだ)
(……必要、とは違う)
(……依存?)
その言葉が浮かんで、
すぐに、否定する。
(……ちがう)
(……だって、縛られたいわけじゃない)
ただ――
(……戻ってきてほしい)
それだけ。
夕方。
鍵の音がして、
すちは、思わず立ち上がっていた。
(……あ)
自分の行動に、遅れて気づく。
みことが、玄関から顔を出す。
「ただいま」
その瞬間、
胸が、すっと軽くなる。
「……おかえり」
声が、少しだけ柔らかい。
みことは、気づいたようで、
少しだけ目を細めた。
「……待ってた?」
すちは、一瞬迷ってから、
正直に答えた。
「……うん」
みことは、何も言わなかった。
でも、
すちの頭に、そっと手を置く。
(……また)
なでられる。
昨日よりも、
はっきりと感じる。
(……嬉しい)
その事実が、
もう、はっきりしてしまう。
すちは、ぎゅっと唇を噛んだ。
(……これ)
(……必要とされたい、じゃない)
(……一緒にいたい、だ)
名前は、まだ分からない。
でも。
「……みこと」
「ん?」
「……どこ、行くときも」
少し、言いづらそうに続ける。
「……ちゃんと、言って」
みことは、一瞬驚いてから、
小さく笑った。
「……了解」
その返事を聞いて、
すちは、胸の奥で、何かが確かに動いたのを感じた。
ひつようとされるとは、、
その問いは、
**“誰かを必要とすること”**へと、
静かに形を変え始めていた。
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はッはッはッはッはッはッはッはッはッはッはッはッ((おいこきゅうしろ