テラーノベル
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「ごめん。ずっと言おうと思ってたんだけどさ…、別れてほしい」
「…そっか。わかった。今までありがとう」
「こちらこそ。…じゃあな」
言いたいことは山ほどあった。
二つ返事で別れを許すほど、俺は流されやすい人間ではないし、今までの気持ちが軽薄なものだったわけでもない。
なんでそう思ったの?いつから考えていたの?
俺のどこがいけなかったの?
他にもたくさん聞きたかったのに、喉が詰まったみたいに苦しくて。
咳をするように絞り出した言葉が、『ありがとう』だった。
泣かない俺に少しホッとした顔をするあなた。
相変わらず呑気で、そんなところも好きだったな、なんて。
振り返らないあなたの背中が涙で滲んで見えなくなったところで、反対方向にある自分の家へと歩みを進めた。
ここのコンビニ、一緒によく行ったなぁ。
俺の好きなコーヒーと、あなたの煙草に、2つ入りのショートケーキ。
「260番、ひとつ。」
あなたはヘビースモーカーだったから、ふたつ。自分で煙草を買ったことなんてなかったのにほら、番号も覚えてしまった。銘柄も番号も、これしか知らない。
だるそうな店員の声とともにコンビニを後にする。あなたの煙草を左手に握りしめながら。
家の扉を開けると、当たり前に真っ暗で。
何かが足りないようなどこか寂しい空間が広がっていて、自分の家じゃないみたいに居心地が悪い。
ベランダに出て、手の中にあった小さな箱をそっと開ける。
彼用に置いてあった灰皿。まさか自分が使うなんて思っていなかった。前に教えてもらった記憶を頼りに、煙草を口にくわえて火をつけた。
1口目は噎せてしまった。
肺に入れるなんて理解できないくらいの重い煙。つい数時間前まで隣にあったこの香りに胸が苦しくなった。
『煙草吸うの許してくれるって、レアだよな』
こうして2人でベランダに出て煙草を吸う時、そうあなたはよく言っていた。
うん、だって好きだもん。煙草を燻らせるその横顔。
燃えていくフィルターをぼーっと追っていた目線を、寂しく空いた左側に向けてみる。
瞼の裏には、あなたの笑顔が鮮明に浮かんで。
『ほんと一生大事にするわ』
そう言って俺の頭をぽん、と撫でたあなた。
あれ、実は結構嬉しかったのに。あの言葉は嘘だったんだね。
けれど、いくら時間をかけて探しても嫌だったことなんてひとつも無くて、寧ろあなたを好きだった自分ばかりで。
こんなんどう?とあなたが買ってきた何かの植物。責任もって水やりしろよと言ったのに、3日も経たずにその姿を見かけなくなった。可哀想に、茶色く脆くなった葉を手に取る。
おまえもあいつに見限られたのか。
なんだか俺みたいだと思って、俺はこの枯れた葉と同じなのかと思って、悔しくて握りつぶした。
コメント
1件
さのじんだと思って勝手に見てたけどそういえば登場人物の名前がない!! 意外と山中さんとか吸ってそうだしYJ有り得そうで何回か既に読み返してる、( ߹꒳߹ ) やっぱりあかねちゃんの小説大好きだーーー、(՞ ̥_ ̫ _ ̥՞) バットエンド大嫌いだけどあかねちゃんのはついつい見てしまう魅力があります!!!!