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「いらっしゃいませ」
「こんばんは。うちの琴音はいます?」
「琴音さんというのは、桜木のことでしょうか?」
「す、すみません、私です! この人、私の姉なんです」
「ああ、桜木さんのお姉さんでしたか。失礼しました」
応対してくれた「AYAI」の同僚が、涼香姉さんに頭を下げた。
「ねえ、綾井店長にお会いしたいんだけど」
「姉さん! ちょっと待って。あっ、大丈夫ですので」
私は同僚にそう言って、涼香姉さんを端に連れていった。
「どういうこと? いきなり来て店長を呼び出すなんて」
「言ったらでしょ? 綾井店長にご挨拶したいって。早く呼んでちょうだい」
本当に来るなんて、やっぱり姉さんのすることはわからない。
「そんな失礼だよ。アポも無くいきなり来て」
「あら、アポなんて必要ないでしょ? 私はお客なんだから別に良くない? 外車も見てみたいし」
姉さんは、キョロキョロと周りを見渡した。
すると、奥から、颯爽と綾井店長が現れた。
「こんばんは。今、店のものから聞きました。桜木さんのお姉様、はじめまして店長の綾井です」
そのスマートな挨拶に、姉さんは目を輝かせている。
「あら、あなたが綾井店長? いつも妹がお世話になっています」
珍しく頭を下げる姉さん。
いったいどういうつもり?
「琴音さんにはとても頑張っていただいてます」
「お世辞をありがとうございます。妹は何をやらせても下手ですから、ご迷惑をおかけしてますよね。本当にすみません」
「いえ、そんなことはありませんよ。とても前向きで、いつも笑顔で頑張ってくれてます。お客様への対応も良いので、こちらとしても大変良い方に入社していただいたと喜んでいます」
店長の褒め言葉、そんな風に言ってもらえて何だかすごく恥ずかしい。