地上、国会の正門前。
初夏の風が木々の葉をざわめかせ、朝陽が石畳を金色に染める。ヴェル、ビータ、カイザ、フロウナ先生、アルフォンス校長は、ミラ・クロウリーと対峙する。
ミラの黒いフードが風に揺れ、鋼の魔法が朝陽を反射し、鋭い光を放つ。
「レクトはこの下にいるんだよね?」
ヴェルが言って、震度2の魔法を放つ。
地面が揺れ、石畳にひびが入る。
ミラの鋼の刃が空を切り、ヴェルの肩をかすめる。血が一滴、地面に落ち、彼女の目が怒りと涙で揺れる。
「パイオニア様の命令だ。今ここで排除する。」
ミラの声は冷たく、鋼の鎖が蛇のように地面を這う。
ビータが時間遡行の魔法を起動し、
ミラの動きを予測。
「次の攻撃は左だ!」
カイザが電気魔法を放ち、青白い電撃がミラの鋼の盾に炸裂。
火花が散り、朝陽に映える。
アルフォンスが記憶の鏡を掲げ、叫ぶ。
「パイオニアは地下500階! レクトは永遠の果樹園にいる!」
アルフォンスの記憶の鏡は相手の脳を覗くことができる。
「嫌な魔法使いばっか……!」
ミラが言う。
ヴェルが震度2を再び放ち、
地面を大きく揺らす。
石壁が軋み、ミラの鋼の鎖が一瞬止まる。
ビータが叫ぶ。
「時間遡行で見た! ミラの次の動きは右だ!」
仲間たちの連携がミラを追い詰め、
彼女の冷たい表情に一瞬の揺らぎが走る。
だが、彼女は鋼の盾を構え直し、仲間たちを牽制する。
「無駄よ。パイオニア様から私は直々に訓練を受けてる……っ!!!」
鋼の刃がヴェルを狙うが、
カイザの電撃が盾を砕き、隙を作る。
ヴェルが叫ぶ。
「行くよみんな! 今のうちに……っ!」
「なっ……!」
仲間たちはミラから逃げるように突破して、
国会の隠し通路へ突入。
石畳を蹴り、ヴェルの目に涙が浮かぶ。
(レクト、絶対助けるから! 待ってて!)
永遠の果樹園。
倉庫の空気は重い。
果樹の影が揺れ、気持ちの悪い果実が不気味に脈打つ。
パイオニアが「苦悩の梨」を手に再び近づく。
金属の先端がカチリと鳴り、レクトの心に恐怖が突き刺さる。
「やめろ、父さん! こんなの…父さんじゃない!」
彼の声は震え、フルーツ魔法で巨大なグレープフルーツを創る。
果実が鉄柱を押し潰し、果汁が床に飛び散る。
だが、パイオニアの炎の鞭がグレープフルーツを焼き、甘く焦げた匂いが倉庫を満たす。
「そんなものもう通じないぞレクト。大人しく従え。」
パイオニアが「無限の果実」をレクトの口に押し付けようとする。
果実の腐った匂いが鼻をつき、
レクトは顔を背ける。
だが、炎の熱が逃げ道を塞ぎ、縄が腕を締める。
「嫌だ! 俺は…俺の魔法は、こんなためにあるんじゃない!!!!」
レクトの叫びが倉庫に響く。
その時建物の上部分から何やら大きな音が聞こえる。
「む……なにか来てるな、騒がしい。」
パイオニアはそう言う
その大きな音の振動もあってか、倉庫の奥から果実がコロリと落ちてくる。
「お……!あの果実は、「服従の果実」か!」
パイオニアがレクトへの強制をやめて、
「服従の果実」を取りに向かう。
レクトも驚き、
「服従の果実」のビジュアルをじっくりと眺めようとする。
その果実は床で脈打ち、倉庫の空気がさらに重くなる。
(よく分からないけど今のうちだ……っ!!!)
レクトの目が涙で潤み、フルーツ魔法で歩くマンゴーを創り、鞭の拘束を解いてもらう。
このまま逃げよう。
と、した時
同じタイミングで、
パイオニアが笑う。
「素晴らしい!!これが本当の服従の果実!!!!」
彼は「苦悩の梨」を投げ捨て、
新たな果実——「服従の果実」を手に握る。
禁断の果実、無限の果実、同じ系列だ。
「これを食べた人間は、食べさせた人間の思うがままに操ることができるんだ!!」
カツン……
カツン……
パイオニアはニヤリと笑って、
再びレクトに近づいてくる。、
「はは……、なんだこれがあるなら話が早い」
拘束をといているレクトは、
走って出口を探すが、
混乱してたどり着かない。
そもそも服を脱がされている今、
このまま外に出ていいのかという倫理観で足が動かない。
「そう焦るなレクト
この果実さえ食べてくれればいい、最悪これを食べてくれればもう今回は逃がしてやる。」
「お父さん……ッ!」
「この服従の果実は大量に持っていれば持っているほど、間違いなく今後の戦争に大きく役に立つだろう……!
レクトお願いだ!
お前が食べてくれれば複製し放題だろ!!!なあお願いだ!」
父の不気味な笑顔に、
レクトは絶句してその場に立ちすくむ。
地下通路。
ヴェルたちはエレベーターに飛び乗り、
地下500階へ向かう。
金属の軋む音が響き、湿った空気が肌にまとわりつく。
ビータが時間遡行の魔法を起動し、パイオニアの過去を覗く。
「見た! パイオニアはゼンの死を実験として計画した。毒林檎は、フルーツ魔法の反応を試すためだった!」
ヴェルが拳を握る。
「やっぱりそうなんだね……っ。
要するに全ての元凶ってことだよね!!!」
カイザが電撃を手に準備。
「あのクソ親父、ぶっ飛ばすぜ!」
フロウナが咳き込みながら言う。
「果物アレルギーで…戦えないかもしれないけど、風で援護するよ……!」
アルフォンスが記憶の鏡を掲げ、
「パイオニアの心は、日に日に黒く染まっている……。かなり危険な状態だ。」
エレベーターが地下500階に到達。
扉が開くと、永遠の果樹園の瘴気が押し寄せる。
ヴェルが震度2を放ち、果樹の根を揺らす。
ビータが叫ぶ。
「レクトは倉庫の中央! 急げ!」
仲間たちは果樹の間を駆け抜ける。
倉庫の中央。レクトは「服従の果実」を前に立ち尽くす。
パイオニアの炎が果樹を焼き、瘴気が視界を曇らせる。
レクトは体が震えて動けなくなっていた。
パイオニアが「服従の果実」を近づける。
「さあ、食べろ。
もう本当にこれだけ食べてくれたら帰してやるからさあ!!!」
「……っ、」
その時、倉庫の入り口が開いた。
「レクト、いるよね!?」
ヴェルの叫びが響き、彼女の目には涙が浮かぶ。
「……!!!」
カイザの電撃が炎を切り裂き、
フロウナの風が瘴気を吹き飛ばす。
レクトはこの隙にフルーツ魔法で巨大なレモンを創り、
爆発させる。
果汁が炎を消し、パイオニアを後退させる。
ヴェルがレクトに駆け寄り、抱きしめる。
「レクト、よかった! もう大丈夫だよ!」
彼女の温もりが、レクトの心を支える。
カイザが電撃を放ち、パイオニアを牽制。
フロウナが風で果樹の瘴気を払うが、咳き込みが止まらない。
パイオニアが叫ぶ。
「無駄だ! レクトは私の息子だ! グランドランドの兵器だ!」
彼は「服従の果実」から手を離す。
「こうなったらやっぱりお仕置きだ……っ!!!!!お前をグチャグチャにして!!!絶対大人しく食べるようにしてやる!!!!!!!」
がしっ……
そしてパイオニアは「苦悩の梨」に再び手をかける。
「お父さんやめ……っ!、!」
「…パイオニア様、やりすぎです。」
!!?!?!
彼女の目には、任務とレクトへの微かな感情が揺れる。
「ミラ!? 裏切る気か!?」
「……度を超えています。
12歳の自分の息子に、服を脱がせて肛門に突起物を入れようとしていた。
やってることが胸糞極まりない、私は便乗してこのまま彼を傷つようとは、思えない……!!!」
ミラはレクトのほぼ全裸の状態や、
パイオニアの持つ「苦悩の梨」をみて、そう言った。
パイオニアは怒り、炎の鞭を振るう。
ミラの鋼の盾が炎を防ぎ、レクトを守る。
「レクト、逃げて!」 ミラの声に、
初めての温かみが混じる。
レクトは驚き、彼女を見つめる。
倉庫の天井が揺れ、果樹が倒れる。
パイオニアが叫ぶ。
「もういい!!!!!
お前たちは全員、グランドランドの敵だあああ!!!!!」
「父さん落ち着いて……っ!!!」
炎と瘴気が倉庫を包み、視界が闇に沈む。
「ここにはいられない……っ、行かなきゃ」
ヴェルはそう言う。
「でもお父さんが……っ、結局また解決できないまま学校に戻るの……!?!」
レクトは言い返す。
「今はそれが最善!」
が、ヴェルの反論に言葉も出ない。
レクトはヴェルの手を握り、
仲間たちと出口へ走る。
だが、瘴気が心を蝕み、足が重くなる。
ヴェルが叫ぶ。
「レクト、自分を信じて! 私たちがいるよ!」
ビータが時間遡行で果樹園の出口を特定。
「あそこだ! 急げ!」
カイザの電撃が果樹を焼き、道を開く。
フロウナが風で瘴気を払い、アルフォンスが記憶の鏡でパイオニアを牽制。
だが、パイオニアの炎が出口を塞ぐ。
「逃がさない!!!!!」
彼の声が倉庫に響き、服従の果実がレクトに迫る。
ミラが再び鋼の鎖でパイオニアを止めるが、彼女自身も瘴気に蝕まれ、膝をつく。
「レクト…ごめん…っ」
彼女の目には、初めての涙が光る。
レクトの心が揺れる。父の偽りの愛、ミラの裏切りと葛藤、ゼンの死、仲間たちの絆——すべてが頭を駆け巡る。
フルーツ魔法が最後の力を振り絞り、鋭利な棘と面積を覆い尽くすような巨大パイナップルが倉庫を埋め尽くす。
パイナップルの棘が炎を押し返し、出口が開く。
「もうすぐ出れる……!」 レクトが叫び、
仲間たちと出口へ走る。
倉庫の天井が崩れる。
レクトとヴェルとビータとカイザ、
そしてアルフォンスとフロウナは
そのまま再びセレスティア魔法学園へ戻る。
父と子の関係は、
良くなることが、
ないままで。
次話 10月4日更新!
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