テラーノベル
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#追放
こんにちは! カエデです!
私が放った『メテオストライク』──
空に向かって投げた良い形の石(ウィルソン)は、まるで生きているかのようにものすごい勢いで加速し、真っ暗な奈落の天井に吸い込まれていきました。
そして、石が視界から消えて、少しすると……。
ゴゴゴゴゴゴ…………!!
ズズズズズズズズズッ……!!
地面から、這い上がってくるような大きな地鳴りが響き始めました。
「あれ……? なにこの音……」
私たちがゆっくりと天井を見上げようとした、その時です。
ズズズズズズズズッ!!!
「えっ……前!?」
ツバキが前方を指さして叫びました。
見れば、私たちが進むはずの通路のずっと奥から、ゴロゴロゴロとすさまじい地響きを立てながら、岩が転がって来ています。
「あ……あれ……もしかして……」
岩は回転しながらどんどん巨大になっていきます。
──次第に家ほどの大きさに!
ズズズズズズズズッ!!!
──さらに大きくなって、お城ほどの大きさに!!
そして最終的には──
まるで山のような「とてつもなく巨大な丸い岩」が、猛スピードでこちらへ転がって……きたかと思いきや、突然フワッと無重力のように宙に浮き上がりました!!!
「えっ!? 浮いた!?」
私が目を丸くすると、今度は岩がカクカクと不自然に震え出し、急に空中で直角に曲がって天井に激突!
そこからスーパーボールのように「ぽよーん! ぽよーん!」と、山みたいなサイズのくせに信じられない軽さで空間を跳ね回ります!
さらに、突然スローモーションになったかと思えば、一瞬で早送り(倍速)になったりと、動きがめちゃくちゃです!
「上に投げたのに前から来るし、浮いてるし跳ねてるし早送り!?」
私が叫ぶと、ツバキが頭を抱えました。
「ここ、空間が反転してるバグ空間だろ!! ベクトルも重力も物理演算も全部イカれてんだよ!!」
……あっちゃー! やっちゃったー!?
カエデてへぺろ☆
あのサイズのバグった岩に轢かれたら、私たちペチャンコになるどころか、このダンジョンの階層ごとポリゴンみたいにすり潰されちゃいます!
ズォォォォォォォォォォン……ッ!!!
ぽよーん! ドゴォォォン!!(倍速)
空気がひしゃげ、異常な突風が吹き荒れ、暗闇に潜んでいたモンスターたちが、跳ね回る巨大岩に巻き込まれないよう我先にと悲鳴を上げて逃げ惑うのが見えました。
「ちょ? ちょちょちょいッ!!
カ、カエデ!? あんたのスキルでしょ!?
なんとかならないの!?」
ツバキが私に詰め寄ってきました。
完全に中二病を忘れて、素の標準語でパニックになっています。
「うーん。わからないよ?」
私はツバキを見つめて真顔で答えました。誠意。
「どうしよう!? どうしよう!? ……いや、フッ、我に怖れはない……」
ツバキが膝をガクガク震わせながらポーズを決め直します。超動揺してる。やっぱりツバキは面白いなぁ。
「ぅわーッ!? わわわーッ!!!」
エストちゃんが頭を抱えて白目を剥きました。恐怖で気絶寸前かな?
「ああ……これでようやく、私も立派な殉教者になれます! 聖なる岩に轢かれて!」
ローザさんが両手を胸に当て、天を仰ぎました。やりきった表情です。
「うぇぇぇぇん! 嫌です! 私まだ死にたくないですー! サクラさんと結婚したかったぁぁ!」
辰美さんがパニックで人型とドラゴン型をチカチカとバグみたいに往復しています。面白いからもっとやって欲しい!
「あ、とりあえず食料は確保するね」
私は鞄から手当たり次第にお菓子を取り出し、胸に抱え込みました。
──と、このカオスな大混乱の最中!
なんと、さっき帰ったはずの精霊イシーダさんが、フワッと再び姿を現したのです!
『……ふ……メテオストライク……。
それは自分も轢かれる究極の自爆スキルなの……。
ありがとうなの、カエデ……。
これで私も……やっと……あの人のところに……逝けるの……』
イシーダさんが、迫り来る巨大岩を見つめながら、
恍惚とした表情で両手を広げています。
「わわッ! イシーダさん!? あの人ってなに!?
……って、な、なんでやり遂げた目をしてるの!?」
もう大パニックです。
「うう……私まだ死にたくない……! 彼氏……欲しかったな……ッ!」
ツバキも涙目で叫び出しました。
「お姉ちゃん……会いたいよぉ……」
「サクラさぁん……」
エストちゃんと辰美さんがへたり込んで泣きべそをかきます。
「神よ、やはり私はいい子ではなかったのでしょうか……? 聖典(鈍器)で信者を殴っていたから……?」
ローザさんが過去の罪を懺悔し始めました。
ぽよーん! ガガガガガッ……ドゴォォン!!
処理落ちみたいに震える巨大な丸い岩はもう、すぐそこまで迫っています!
その時。
「はッ!? みみ! みんなーッ!
ぜ、全力! 全力で必殺技っぽいの撃てぇえええええええ!!」
ツバキが涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、
大声で号令を出しました。
「うおおお! 絶対生きて彼氏作るんだーッ!
究極絶対究極絶命ヴァル=ディオ=エクス=リアクト・ヌゥゥゥンッ!!
光、来たりて! 砕けよ!! ホゥリィィィィビィィィィィィムゥゥゥンッ!!!」
パニックで完全に人語を捨てたツバキ。
左目、右目、そして大きく開いた口から、極太のピンク色のビームが発射されました!
「う、うう…お姉ちゃん! 私! が、頑張る!『全魔力解放!!ダーク・ランス! × 1000 』!!」
エストちゃんが杖を振りかざし、漆黒の槍を次々と前方へ射出します。
「そうだ!!サクラさんに会うんだぁぁぁぁッ!!『究極! 辰美ふぁいやー! ぼーん!』!」
ドラゴンの姿に戻った辰美さんが、特大の炎のブレスを吐き出します。
「神よ……この聖典に力を!『ホーリー・ブック・スロォォォオオオオオウ!!』……ていッ!」
ローザさんが、分厚いカメリア聖典(原本)を大岩に向かって全力で投げつけました。
「ウィルソンたち──全員頑張って!!」
私も、袋の中にあったありったけの“良い形の石”を、岩に向かって投げまくりました!
ビィイイイイイイイ♡ ブォオオオオオ! ピカーッ! シャキーン! バシューッ! ガンガン! ドガーッ! バサッ!
みんなの放ったデタラメな攻撃が、跳ね回る巨大な大岩に、同時に直撃しました!
……辰美さんが白目を剥きながら涙を流してブレスを吐いてる。顔が面白い。
……ツバキの顔は眩しすぎてよく見えませんが、絶対に6000ルーメンは出てる。眩しい。
……エストちゃんは魔法を放つたびに、すごい反動で後ろにポンポン吹っ飛んでいってる。可愛い。
……ローザさんの投げた聖典が、まっすぐ大岩にめり込んだ。
本じゃないでしょあれ。
と、冷静に観察してしまいましたが、そこは黙っておきます。
私、カエデは空気が読める子なので。
そして──。
カッ!!!!!
ズッドーーーーーーーーーーーーーッン!!!!!
凄まじい閃光と爆音。
パラパラパラ……と、細かい石の雨が降ってきました。
間一髪! みんなの連携攻撃が、とてつもなく巨大な大岩を完全に粉砕したのです!!!!!
助かった! 良かった!
「はぁはぁ……はぁはぁはぁ……」
土煙が晴れた後、みんなはその場にへたり込み、肩で息をしていました。
「た、助かった…よかった……」
ツバキが滝のような汗を拭いながら、素のトーンで安堵します。
「よかったぁ!みんなありがとう」
私が笑顔でお礼を言うと、ローザさんが十字を切りました。
「神のご加護がありました……」
「……お、終わった……?」
エストちゃんが目を回したまま呟きます。
「死ぬかと思った……」
辰美さんが人型に戻って大の字に倒れ込みました。
みんなで、顔を見合わせます。
「ふぅ……カエデ……恐ろしい子……! 頼むから、うっかり全滅させるのやめてくれ……寿命が縮んだ……」
ツバキはホッと胸を撫で下ろしましたが、私は自分の大きな胸を撫で下ろしました。
「……なんかイラっとした! 今! すっごくイラっとしたーッ! それ、もげろ! っていうかカエデ! そのスキルは今後、絶対に使用禁止だからね!」
「…………んー?はい」
「嫌な間があった!!」
ツバキには怒られちゃいましたが、いざという時はコッソリ使おうと思います。だってアルティメットだし。
その横で、イシーダさんが静かに宙に浮いていました。
『あぁ……またダメだったなの……でも……きっと……あの人が見ててくれたはずなの……。帰るのなの……』
静かに、どこか満足げに呟くイシーダさん。
「え……あ、うん。スキルありがとうございました。あの人のことも、今度教えてね?」
『……うん……ウィルソン様のことは……いつか話すの……』
「……え!!!!! ウィルソン様!? ま、待って!!!」
イシーダさんは少し寂しげに微笑むと、光の粒子となって静かに消えていきました。
私は慌てて手を伸ばしましたが、イシーダさんの姿はもうありませんでした。
……ウィルソン様。
……ウィルソン、様?
「あんな物騒なスキル授けられてお礼言うなよ!!」
ツバキのツッコミが響きます。
……
それから、少しして。
パリンッ……!
不意に、空間にガラスが割れるような音が響きました。
それと同時に、私たちを包んでいた変な浮遊感がスッと消え、しっかりと地面を踏みしめている感覚が戻ってきました。
「あれ? カエデ……これ……」
ツバキが前に一歩踏み出します。
ムーンウォークをしなくても、ちゃんと前に進めました。
「空間のバグが……直ってる!」
私が言うと、辰美さんも周囲を見回して頷きました。
「あの大岩を粉砕した衝撃で、歪んでいた空間のギミックごとぶっ壊したみたいですね……」
「よし! じゃあ普通に歩いて進めるね! さてとッ! ご飯を食べよう!!」
ツバキが強引に休憩を宣言しました。
「うん! スキル使ったらお腹減っちゃったよ」
私は手をパチパチ叩いてツバキに大賛成しました。
「皆様、お疲れ様でしたー!」
ローザさんが、いったい懐に何冊入っているのか、ピカピカの新しい聖典を取り出してニッコリ笑いました。
ズズーッ! ズルズルッ!
私たちは粉々になった岩の残骸の中で、一斉に晩ごはんのうどんをすすり始めました。
お出汁が体に染み渡ります。
そんな私たちカオスパーティーを、少し離れたところから見ていたエストちゃんと辰美さんは、ガクガクと震えていました。
「えと……この人たち……今、セルフ全滅しかけたんだよね……? 私の新生☆魔王軍……大丈夫かな……」
「さすが……サクラさんの、お友達……」
*
その後、大岩が激突して大きくえぐれた地面の底から、なぜかポカポカの温泉が湧き出てきたので、みんなで仲良く入りました。
「なんで湧いたのか分からないけどラッキーだね」
私はウイルソン(石)をお湯で磨きながら言いました。
「許す!」
ツバキも嬉しそうでした。
〜 Happy End 〜
(つづく)
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