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美緒は「え?」すら言えない。
驚愕して颯真を見るだけだ。手足が震え始めた。
(あっそうか。美緒にも見えるんだ)
幽霊の姿が見えるのは『現世で未練の原因を作った者だけ』。
最初は桜志郎。次に梨那にも、颯真が見えた。
「やっと復讐が終わって成仏できる」と思ったら、ここに〈根源〉がいた。
恨みの〈根源〉である美緒にも、颯真の姿がはっきりと見えた。
美緒は、やっと声を出せた。
「これは何? どういうこと? バーチャル・リアリティ?」
「そんなスゴイものじゃないよ。ただの幽霊」
「ゆ、幽霊?」
颯真は、椅子に座る香帆の前にフワリと移動した。
「俺は確かに浮気した。ほんの出来心や。魔が差しただけなんや」
「そんなことするから、死んじゃったんでしょ」
「悪かった。反省してる。そやけど、そやけど、」
「俺は香帆を愛してる。初めて会うたときから、愛しっぱなしや!」
「私には魅力がある?」
「ある! ある! 香帆は魅力の塊や!!」
香帆は目を閉じた。
颯真がそっと顔を近寄せる。
二人の唇が3㎜離れて重なった。
「もうチョットやのに、悔しいなぁ」
颯真は、宙に浮いたまま地団駄を踏んだ。