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私が放った特報記事は、またたく間に世間を駆け巡った。
「婚約者の実家を食い物にした非道なエリート」という見出しは
塀の中の直樹だけでなく、彼を操っていた高木常務の息の根をも止めようとしていた。
九条さんから連絡が入ったのは、その日の夕方のこと。
「詩織、ネズミが動き出した…高木だ。偽造パスポートを使って、今夜の便でプライベートジェットが手配されている」
「……逃がしません。一円の誤差もなく、奴の人生を閉じてあげます」
私は九条さんの車に乗り込み、羽田空港のプライベートターミナルへと急行した。
ロビーの隅で、周囲を警戒しながら足早に歩く初老の男。
かつて直樹の上司として、そして我が家の破滅を裏で笑っていた高木常務だ。
「高木常務。……どちらへお出かけですか?」
私の声に、高木が弾かれたように振り向いた。
その顔には、かつての威厳など微塵もない。
「詩織さん……。君か…邪魔をしないでくれ。金ならやる。直樹の横領分も、君の実家の損害分も、今の私の資産からすべて返そう。それで手打ちにしないか?」
「……あなたは今でも、すべてが数字で解決できると思っているのね」
私はゆっくりと歩み寄り、バッグから一枚の古びたレシートを取り出した。
10年前、父が最後に経営していた会社の事務所に残されていた、たった一枚の通信費の明細。
「これは何だ」
「あなたが直樹に、私の実家を潰す『合図』を送った記録よ。……九条さんから頂いた資料と、この明細の通信記録を照合しました。あなたが海外のサーバー経由で送った指示、すべて復元済みです」
高木の顔から血の気が引いていく。
「……バカな。あれは完全に消去したはずだ!」
「『消去』なんて言葉、私の前で使わないで。……データの一欠片だって、逃さず計上するわ」
そのとき
ターミナルの入り口から数人の捜査員が姿を現した。
特報記事を受け、検察が迅速に動いたのだ。
「高木常務。……10年前の詐欺罪、および今回の特別背任容疑で同行願います」
捜査員に腕を掴まれ、高木は力なく膝をついた。
「……直樹だ。あいつが…あいつが全部やったんだ……私は知らない……!」
見苦しく喚くその姿は、かつて私が直樹に言われた
「女には無理だ」という言葉を、そのまま彼に投げ返してやりたいほど滑稽だった。
「高木さん。……あなたの人生、今日で『破産』よ」
「残りの人生をかけて、私と父、そして直樹に人生を狂わされた人たちに、一分一秒の利息をつけて償いなさい」
連行される高木の背中を見送った後、私は夜の滑走路を見つめた。
冷たい風が頬を打つ。
けれど、心は驚くほど凪いでいた。
直樹。高木。
あなたたちが誇っていた「偽りの王国」は、今、完全に崩壊したわ。
「……これで終わりか?詩織」
九条さんが隣に立つ。
「…いえ、まだ、最後の手続きが残っています」
私はスマホのカウントダウンアプリを開いた。
あの日、地獄の底で誓った復讐。
その数字が「ゼロ」になる時、私は本当の意味で
陽太と二人で光の中へ歩き出せる。
【残り67日】