「そうだな、ことあるごとに『あれ欲しい』『これ買って』ってせがまれはしたが」
「じゃあ、尊さんがいつも俺に奢ろうとしてくれるのも……そのクセだったり?」
「言われてみれば……そうかもしれない、な。ディナーも必ず高いところ指定で、毎回会計はこっち持ちだったから当たり前と化していたのかもしれない」
尊さんは少しだけ視線を逸らし、自嘲気味に肩をすくめた。
「……そんなに長い間酷い扱いされてたのに、尊さんはすごく紳士的ですよね」
「自分でもどうかとは思うがな」
「……一応言っておきますけど、俺には高価なものとか、高いところ、尊さんのお金で奢ってもらうの悪いですし、そんなことしなくていいですからね……?」
「ふっ…そう言うと思った」
尊さんは晴れやかな顔で笑い、真っ直ぐ前を向いた。
「大体、1年記念に何十万もするのプレゼントしたって、お前の困った顔しか浮かばないからな」
続けて、尊さんは言う。
「だが、それ相応の店で、お前に似合うプレゼントは用意してる。そこは楽しみにしといてくれ」
その言葉に、思わず息をのんだ。
「……っ」
(ま、またそういうカッコいいことを平然と言ってのけて……!)
夜闇に浮かぶ尊さんの横顔は、どこまでも澄んでいて綺麗だ。
その落ち着いた態度と対照的に、俺の胸の中では感情が嵐のように渦巻いていた。
「……え、えっと……」
うまく言葉が出てこない。
尊さんの視線は真っ直ぐ前を見据えている。
それが逆に、彼の言葉に嘘偽りがないことを示しているようで、余計に体温が上がる。
(楽しみに……って……。尊さんのことだし…)
期待していいんだろうか。
いや、もう期待せずにはいられない。
プレゼント、俺が選んだのはボールペンだけど、そんなので良かったのかな、と一瞬不安がよぎる。
けれど、尊さんが言った「お前に似合う」という言葉が頭の中でリフレインして、思考を麻痺させる。
(俺に似合う…プレゼント……)
思わず自分の胸元を見下ろしてしまう。
俺に似合うものって何だろう。
「……恋? どうした?」
尊さんの声が不意に近くで聞こえてハッとする。
いつの間にか立ち止まっていたらしい。
「あ……いえ……! そ、それより俺も尊さんに似合いそうなプレゼント渡す予定ですから、楽しみにしててくださいね……!」
慌てて取り繕うように言うと、尊さんは少しだけ意地悪そうな笑みを浮かべた。
「……随分自信ありげだな。もう決まってるのか?」
「っ! そ、そう言われると少し自信がなくなるんですけど……秘密です!」
俺が赤くなって俯くと、尊さんは俺の頭をポンっと優しく叩いた。
「お前からなら、なんだって嬉しいがな。……当日、期待してる」
「っ……!」
そんな甘い一言を、さらりと浴びせてくる。
そして彼はそのまま、颯爽と歩き出してしまった。
(もう……本当にずるい……)
ドキドキが止まらない。
置いていかれないよう必死についていき、電車に揺られながら
俺は冷めやらぬ熱を感じたまま、尊さんと別れて帰宅した。






