テラーノベル
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シオンは桜子のマンションのリビングで、ソファーにもたれ・・・床に敷かれたファーの上に胡坐をかいて座っていた
さっきから落ち着きなくソワソワと視線をさまよわせている・・・本棚にぎっしり並んだ文庫本、窓辺で小さな葉を揺らす観葉植物・・・壁に掛けられた薄型テレビ・・・読みかけのまま伏せられた雑誌
そのどれもが桜子という人の暮らしそのものに思えて・・・彼はなんとなく背筋を伸ばした
ガチャッ「シオン君!もうすぐ二十四時間やっているレンタル布団屋さんがここにお布団配達してくれるって、今夜はそれでここの客間で寝てね!」
「ハイ・・・」
シオンが素直に返事をすると、また桜子は踵を返していそいそと、落ち着きなく動き回る
「え~っと・・・お客様用の歯ブラシはこれね、それとバスタオルのある場所はこっち――」
脱衣所の棚からふわりとしたバスタオルを抱え上げた、その時、桜子の背後にシオンの気配がし、そっと後ろから彼女を抱き締めて言った
「桜子さん・・・僕をからかっているなら・・・今すぐやめて・・・」
桜子は息を飲んで固まり、手に持っていたバスタオルをドサッと足元に落した
「大好きな女性に『泊れ』と言われて、行儀の良い客の顔なんて出来ません・・・」
背中に彼の温かな胸がぴったりと重なっている・・・心臓の音が布越しに伝わってくる・・・桜子の耳元でシオンの吐息が首筋をかすめる・・・いつもは屈託なく笑う声が今は震えるほどに低くかすれていた
「好きです・・・初めて会った時から好きでした・・・いいや、もしかしたらもっと前から・・・」
桜子は突然の彼の告白にハッとした、もしかしたらシオン君も同じ気持ちなの? 胸の奥で固く閉じていたはずの期待が心をときめかせた、けれどすぐに別の声が頭に割り込んでくる、でも・・・私は――
「僕なんか相手にされないと思っても、あなたは僕にいつも優しくて・・・本当に優しくて・・・その度に僕は期待して・・・」
それは飾りも計算もない剝き出しの彼の本音の言葉の様に思われた、桜子の喉の奥がじんと熱くなる
「あ・・・あなた・・・酔っているんじゃない? ほ・・・ほら・・・焼肉屋さんでビールを飲んだから・・・」
「酔っぱらってなんかいないっ、好きだと言っているのにどうして信じてくれないの?」
―十歳差・・・作家仲間・・・尊敬される先輩・・・―
桜子の心の中で、言い訳の言葉達がヒラヒラと舞ってぶつかりあった、必死に自分の気持ちをごまかそうとしていたのに、彼はいったいどういうつもりなのだろう・・・本当に本気にしてもいいのだろうか
彼に対する感情は自分でどうにか出来るものではない、呼吸や、睡眠や、食事と同じだ、まだ出会って間もないのはわかっている、彼と自分の隔たりを沢山考えるが、そんなこと関係ないと思えるほど、この気持ちは確かなものだと思えた
これまでの人生に欠けていたものはこういう気持ちなのだ、それならばもっと思い切り味わいたい、彼は必死で続ける
「そりゃあ・・・あなたからしたら、僕は恋愛の対象じゃないかもしれないけど・・・10歳も年下だし・・・む・・・無職だし・・・」
彼の両腕にしっかりと包まれ、強く抱き締められた安堵感はあまりにも大きく、桜子は思わず前に回された彼の両手を握った・・・
「い・・・今はあなたに捧げられるものは「この心」しかないけど・・・僕!必ずあなたにふさわしい男になるよ!仕事もすぐに見つける!沢山稼ぐように頑張るし、小説だって今度は大賞とるように頑張る、だから―」
「いいえ・・・シオン君・・・」
桜子はくるりとシオンと向き合って涙目で言った
「あなたの「心」だけで十分よ・・・」
彼の顔が桜子の顔に近づいて来て、そっと目を閉じた、二人はしっかりと抱き合ってキスをした
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コメント
2件
おたがいの思いが成就してよかったね😊でもでも…あぁおばちゃん色々心配だなぁ。桜子は盗作の後ろめたさを抱きつつ墓場まで持ってくのかな🥺
うわあ…ついに、来たんですね。シオンの告白、胸がぎゅっとなりました。「酔っぱらってなんかいない」って必死な感じが切なくて、でも「心だけで十分」って桜子さんが応えたとき、もう涙腺が…。十歳差とか立場とか、全部吹き飛ぶくらいの想いが伝わってきました。二人の距離が縮まる瞬間、すごく丁寧に描かれていて、読んでいて幸せな気持ちになりました。次の展開も楽しみです!