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コメント
1件
ほんとにこの話好きです! 続き楽しみにまってます!
Side 桃
指定されたお店の駐車場に着くと、運転席から普段用の車いすに移乗した。
現地集合だけど、みんなはもう来てるんだろうか。
「あ、大我!」
声がして首を動かすと、ジェシーが車から降りてこっちに歩いてくる。
「中まで押してくよ」
「ほんと? ありがとう」
義足をつけて立った彼は、かなり背が高い。座っていて見上げると首が痛くなるくらい。
お店では半個室を取ってくれていて、椅子が2脚用意してあった。もちろん、慎太郎とジェシーのだ。
やがて、ほかの4人もやってくる。北斗は樹の車に乗ってきたようだ。
労いの言葉もそこそこに、早速飲み物を注文する。
「きょも、今日大丈夫だった?」
樹がはす向かいの席から俺を見やる。年下のキャプテンは、メンバーで一番新入りの俺を何かと心配してくれている。
「うん。すっげーびっくりしたけど。慎太郎もごめんな」
「俺はいいんだよ! すぐ立てるし」
それから、全国大会に向けての目標を全員ですり合わせた。お酒が入ったからか、珍しく北斗が熱くなっていたけど。
「だからさ、目指すならもっと上行かなきゃだよ! だって俺らだよ? 行けるって」
「落ち着いて北斗…」
高地がたしなめる。「ゆっくり地道に、が大事だから。な」
「でも、せっかくのチャンスだし無駄にはしたくないよね。俺も攻めていきたい」
賛同の意を示したのはジェシーだ。
「そうだよな! こないだ新しく作った作戦だって、樹はまだやらないって言ってるけど絶対やったほうがいいと思う。全国の舞台でぶつけなくてどうすんの」
慎太郎まで乗っかりはじめた。樹をちらりと見ると、グラスを持ったまま複雑な面持ちだった。
すだれで周りと仕切られた空間には、何だか気まずい雰囲気が漂う。
「とりあえず、今日は楽しく飲もうぜ」
高地が笑って料理を口に運んだ。
そう言ってくれて、やっといつもの会話が戻る。くだらなくて楽しい、青春時代みたいな笑い声が響く。
帰る間際に、樹と北斗がトイレに向かった。俺も行かなきゃいけない。脊髄損傷は、排泄機能がダメになってるから時間厳守だ。
「…さっき、ごめんな。みんなで決めたゴールに背くようなこと言っちゃって」
北斗がつぶやいた。
「ううん、それが北斗の本音だもんな。慎太郎も、ジェシーも。汲み取ってやれない俺のほうが——」
「俺が健常者だった頃にやってたバスケのチームは、もっと対立が多かったよ」
ふいに声が出ていた。ドアの手前で、2人が漕ぐ手を止める。
「俺もメンバーの気持ち考えられないときもあったし、誰もわかってくれないときだって。だけどここは、みんなが俺を見てくれて、それぞれがわかり合おうとしてる。ぶつかっても、それは悪い意味じゃなくて…お互い切磋琢磨するためっていうか。だからすごいいいチームだと思うんだ」
チーム幹部に、笑顔が戻った。
トイレから戻ると、3人は待ってくれていた。
「長くね?」
「何話してたんだよ」
「ちげーよ、手間取ってただけだよ」
なぜか恥ずかしがって、話の内容を明かさない樹。俺らは笑い合って、駐車場でそれぞれに手を振る。
「じゃあな」
「頑張ろうな」
「また明日ね」
そんな言葉を交わして、明日へと向かった。
続く
Happy Birthday Hokuto!!!!!!