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ありんす
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宮毘羅
20
#シクフォニ
らの☆📢🍍×🌸推し
269
ドリコが拘束され、連行されていった後。
俺たちは砦へと戻り、指揮官室で話の続きを行う。
バルト将軍は、どっしりとした鋼のような膝を折り、深々と頭を垂れる。
「……王子。此度の件、まことに申し訳ございません。我が弟がこのような不祥事を起こすとは夢にも思わず」
彼の声は、これから切腹するのではないかと思うほど重苦しい。
「この命に変えても聖剣を取り戻し、帝国へと返還することをお約束致します。その後は責任をとり、この腹をかっさばいて、臓物を王子ならび帝国に献上いたす覚悟です」
「そんなグロいものいらん。というか聖剣は、余の手元にある」
そう言うと、ヨハンナがドラゴンヘッドカリバーを抱えて、部屋へと入ってくる。
それを見て、バルト将軍は目を白黒させる。
「これは一体、盗まれたのでは?」
「あぁ、あれ余の自作自演」
しれっと言うと、バルト将軍は「えっ?」と目を見開く。
「奴が聖剣を盾にフリーデ将軍を脅してたから、逆に脅し返すことにした。聖剣を盗んだのは余の命令だ」
「な、なんと……」
「多分待ってたらドリコ市長はいずれ俺に聖剣を返却しただろうけど、その頃にはフリーデ将軍は攻略不能……じゃなくて、精神が破壊されてたと思う」
「フリーデを助けるために……」
バルト将軍は、じっと俺を見据える。
「父上、王子は私の不調に気づき声をかけて下さいました」
「バルト将軍と、フリーデ将軍が自殺するんじゃないかって話てた後だね」
「なぜもっと早くワシに相談せんのだ!? ワシに言えば、即日奴をなぎ倒して――」
「普通は叔父に暴行を受けてるなんて、父に言えないんだよ。自分がそれを言った時点で、アイゼンヴェルグ家も崩壊する。フリーデ将軍は、自分が我慢することで家だけは存続させようとしたんだ」
「…………む、むぅ……なぜこのことを王子に話そうと?」
「その、当初は精神を病んでいたのですが、戒厳令が出されたのと帰宅禁止命令が出たので、叔父上と接触する機会がほぼなくなりまして」
「あんな奴叔父上などと呼ばんでよい。……しかし戒厳令を出したのも、帰宅禁止命令も全て王子の命令。その時にはもう知っておったのですか?」
「いや、ドリコ市長の砦の視察回数が異常だと思ってたんだ。フリーデ将軍にずっと会ってるみたいだし、それであの変調。何かあるなと思って、ドリコを近づけさせないようにした」
「なんと鋭い……」
バルト将軍は感嘆の息をつくが、NTRゲーならではのセンサーが働いたとはさすがに言えない。
「そのおかげで、私はまともに喋れるくらいには精神が回復しました。その時に王子から外出のお誘いを受けて、王子のハーレムの方たちとお話する機会がありまして」
ママ上たちが手をふる。
「お話を聞くと、とても幸せそうで、なぜか私は涙がこぼれてきて」
「それで、これはなんかあるなって事で深く話を聞いたら、今回の件が発覚した」
バルト将軍は、俺をまじまじと見据えると再び深く頭を下げた。
「娘を救っていただき、感謝いたします」
今度は父親として感謝を述べる。
彼は改めて俺を直視して、責任をとると言う。
「王子、今回の責任を重く受け止め、我々は帝国軍将軍の任を辞させていただきたく存じます」
「待て待て、それだと余が助けた意味がないではないか。せっかく全ての罪をドリコが背負ってくれたんだ」
フリーデ将軍はドリコに聖剣の保管を任せた後に、ドリコが聖剣を失った。
管理責任を問われるのは奴である。
「そういうわけにも行きますまい。何より王子が真実を知っています」
「余が黙ってれば別によくない? ここで余が正義感出して本当のことを言って誰が得をする?」
「王子、お気持ちは嬉しい。ですが、ワシは帝国に忠誠を誓った身、それはフリーデも同じ。王子のお慈悲で罪を免れるなんてできませぬ。どうか全うに罰を受けさせて頂きたい」
『このおじいさん真面目だね~』
聖剣の中から呆れ声を出すナハト。
全くだ、まるで戦国武将だ。だからこそ信用できるというのもあるが。
俺はフリーデ将軍を見やると、彼女も同じ気持ちなのか跪いて頭を垂れている。
「よしわかった、この件は余から父上に話を通そう。父上が軍法会議だなんだのって言い出したら、そこで処分は決めよう」
「王子に深き感謝を」
俺は今回の経緯を、ちょーっとだけ脚色した手紙を帝都へと送る。
それから数日後――
手紙の返事が届いた。
俺はフリーデ将軍とバルト将軍、それから一応ママ上とヨハンナも呼び、皆で開封することにした。
相変わらず、仰々しい漆黒の封筒。金の縁取りに竜の印。間違いなく、メッサー王からのものだ。
中身は、たった一枚のペラ紙。
「えーそれじゃあメッサー王からの言葉を読み上げます」
「「はっ!」」
「えー……”くだらぬことで時間をとらせるな。聖剣の事に関してはお前に一任しているはずだ、なんの為に成人させたと思っている。何が帝国の益になるかもわからぬ愚か者なのか? それとも己の裁量で誰かを裁くことを躊躇しているのか? 罪に罰ではない不義に罰を与えよ”……だそうです」
……なにこれ、ほぼ俺への説教じゃないか。
俺は二人にも手紙を渡し、見せた。
フリーデはそれを受け取って読み返す。
「本当にそれだけですか王子? 我々は王城に首を吊るされてもおかしくない罪を犯しました」
「書かれてある通り、父上は失敗に対して罰を与えるんじゃなくて、帝国を裏切る行為をしたものを罰しろとおっしゃってる」
「聖剣を紛失した行為は、十分帝国への裏切りになると思います」
「悪意のある紛失であればそうだと思う。だけど今回の件に関しては、余はそうは思わぬ。そなたは被害者側であり、聖剣を取り戻すにあたって十分貢献した。そしてドリコという、今まで見逃されていた悪を見つけだした」
二人は黙って俺の言葉に耳を傾けている。
「とはいえ、まったく何もなしというわけにはいかない。聖剣紛失の責任は、誰かが引き受ける必要がある。それはドリコと、……フリーデ将軍、そなたと夫トニーの3人にとってもらう」
「覚悟はできております」
フリーデは罰せられるとわかって、どこか安堵の表情を見せた。
「今回の事件は、ドリコとトニーの悪意によって引き起こされた。首謀者のドリコはもちろんのこと、トニーはギャンブル依存であったとしても、事件の引き金を引いた張本人だ。妻を売り、性暴力シーンの動画撮影にも関わった。その行為は、もはや被害者ではなく加害者そのものだ」
全員が静かに、俺の言葉を待っている。
「またフリーデ将軍も、帝国軍将軍でありながら、聖剣紛失の第一報を直ちに帝国に報告しなかった、管理者義務違反の罪がある」
俺はすーっと息を吸い込む。
「ドリコには、この後司法の裁きを受けてもらう。トニーは、余自ら処罰を下す。ギャンブルによって、自分がいかに大切なものを失ったかを理解してもらう。罰は帝国労働者資格の剥奪及び、妻フリーデの差し押さえ処分とする」
帝国ではギルドに所属するだけでなく、酒場やパン屋など一般職に就くにも、この資格証が必要だ。
ほぼ戸籍と同じであり、これがなくなるということは、もうまともな社会生活をおくることはできない。
「フリーデ将軍には、トニーとの離縁、および今後の面会を一切禁止する。今後は帝国軍務に従事し、聖剣奪還にかかった費用を、軍属として働きながら弁済してもらう。以上だ」
話を聞き終えて、フリーデは狼狽える。
「お、王子、私の罰はそれだけなのですか!? 離婚も弁済も当たり前であり、処罰には当たらないと――」
「そなたは尊厳を弄ばれ、もう十分に苦しんだ。すまぬ、もう少し早く余が気づけば、傷つく前に助けられた」
彼女の目にじわっと涙が溜まる。
鋼鉄の騎士と呼ばれるフリーデ将軍だが、俺の前では泣いてばっかだな。
「王子……私が弱いばかりにご迷惑を」
「バルト将軍、市長職に穴が開く。その間の執政は任せる。合わせて市長代行も選出せよ」
「拝命いたします」
「トニーとフリーデの処分執行は一週間後だ。それまでにそなたの口から、離縁を伝えよ」
「畏まりました」
コメント
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第82話、読み終えました…! フリーデ将軍がようやく心から安心できる場所を得られそうで、本当に良かったです。王子の「傷つく前に助けられたかった」という言葉、重くて優しくて、じんわり来ました。 ナハトの「このおじいさん真面目だね〜」の呟きにも思わずほっこり。メッサー王の返信も含めて、誠実さが報われる流れが心地よかったです。次の章も楽しみにしています🌷