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蝶屋敷の曲がり角でぶつかりキスで仲直り

蝶屋敷の庭に、秋の風がそよぐ。色づき始めた木々の葉がカサカサと音を立てる中、瞳は胸にモヤモヤを抱えながら歩いていた。彼女の普段の大人しくて愛嬌のある笑顔は、今日ばかりは曇っている。

原因は、昨日の隊士たちの噂話だ。「不死川の奴、最近やたらと派手な女とつるんでるらしいぜ」「いや、夜な夜な別の女と会ってるってよ」――そんな馬鹿げた話を耳にしてしまった瞳。実弥のことが大好きだからこそ、心がざわついて仕方なかった。

「実弥さんがそんな人じゃないって、わかってるのに…」と自分に言い聞かせる瞳だったが、疑念は消えない。とうとう昨夜、実弥と向き合ったときに我慢できず、「実弥さん、最近誰かと会ってるって本当！？」と声を荒げてしまった。

実弥も実弥で、短気な性格が炸裂。「はぁ？ 誰がそんなバカな噂流したんだよ！ 俺がそんな暇あるわけねぇだろ！」と反発。しまいには「凛、お前まで俺を疑うのかよ！」と怒鳴り返し、二人は大喧嘩。凛は涙目で「もういい！」とその場を飛び出してしまったのだ。

そして今、蝶屋敷の廊下を歩く凛。治療のために訪れたはずが、心はまだ昨夜の喧嘩を引きずっている。そこへ、ドスドスと重い足音が近づいてきた。

「凛！」

振り返ると、そこには鬼殺隊の風柱・不死川実弥が立っていた。傷だらけの顔に、いつもの鋭い目つき。だが、どこかバツが悪そうな表情だ。

「実弥さん…」凛は目を逸らし、唇を噛む。まだ怒りが収まらない。

「お前、昨日から何だよその態度！ 俺が何かしたって言うならハッキリ言え！」実弥の声は相変わらずデカい。だが、その奥にはほんの少しの焦りが垣間見える。

「実弥さんこそ！ 他の女の人と…なんて噂、聞いてしまったら…！」凛の声は震え、大人しい性格の彼女にしては珍しく感情が溢れ出す。「私、信じたくないのに…でも、怖かったんです！」

「はぁ！？ だから言ったろ、そんなバカな話信じるなって！ 俺がお前に隠れてそんなことするわけねぇだろ！」実弥は頭をかきむしり、苛立たしげに一歩近づく。

その瞬間、狭い廊下で二人がぶつかった。凛はバランスを崩し、「きゃっ！」と小さく叫ぶ。実弥は咄嗟に彼女の腕をつかみ、引き寄せる。次の瞬間――二人の唇が、ほんの一瞬、触れ合った。

「！！」

時間にしてほんの一秒。だが、その一秒は二人にとって永遠のように感じられた。瞳の顔は真っ赤になり、実弥も目を見開いて固まる。

「…お、お前…！」実弥が慌てて離れると、顔が珍しく赤い。いつも強気な風柱が、こんなことで動揺するなんて。

「み、実弥さん…！ あ、あの…！」凛は両手で顔を覆い、恥ずかしさで声が上ずる。愛嬌のある彼女のそんな姿は、いつもの可愛らしさをさらに倍増させていた。

そのとき、廊下の奥から聞き慣れた声が。

「おやおや～？ 何ですか、このラブラブな雰囲気は～？」

振り返ると、そこには胡蝶しのぶがニコニコと微笑みながら立っていた。隣には、目をキラキラさせるアオイと、興味津々のすみ、なほ、きよの三人も。

「ね、ねえ！ 今、キスしてたよね！？ 見たよ、見たよ！」きよが興奮気味に叫ぶ。

「うわ～、不死川さんと凛さん、めっちゃ仲直りしてるじゃん！」すみが手を叩く。

「ちょっと！ うるせぇぞ、ガキ共！」実弥が顔を真っ赤にして怒鳴るが、しのぶは涼しい顔で一言。

「ふふ、不死川さん、照れてるなんて珍しいですね。凛さん、ちゃんと実弥さんを捕まえておいてくださいね～」

「しのぶさんまで…！」瞳は恥ずかしさで縮こまりつつ、ちらっと実弥を見る。実弥は「チッ」と舌打ちしつつも、凛の手をそっと握った。

「…ったく、馬鹿な噂なんか信じんなよ。俺にはお前だけで十分だ」実弥の声はぶっきらぼうだが、瞳にはその言葉が胸に響く。

「…うん、ごめんなさい。実弥さん、私も…実弥さんだけでいい」凛は大人しいながらも、愛嬌たっぷりの笑顔で答える。

「キャー！ やっぱりラブラブ～！」三人の少女たちが一斉に騒ぎ、しのぶは「ふふ、若いっていいですね」と笑う。実弥は「うるせぇ！」と叫びつつ、凛の手を握ったまま廊下をズンズン歩き出した。

蝶屋敷の庭に、秋の風とともに二人の仲直りの笑い声が響ラブラブ

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