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#恋愛
ばたっちゅ
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meyu0530
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その日の夜。冷蔵庫で中途半端に余らせた食材で夕食を済ませ、いつもより長めにお風呂に浸かる。リビングに戻ると、時計の針は十一時を回っており、がらんとしたリビングに温もりはなく、小さなため息だけが漏れた。
今日は、伊織さんが飲み会で帰りが遅い日だ。お仕事である以上仕方がないことだし、不満はない。ただ寂しいのだ。結婚するまで実家暮らしをしていた私には、当然ながら一人暮らしの経験がなく、この時間家で一人きりでいることはあまりなかったから。
まったく、いい年をした大人が寂しいだなんて。
自分に苦笑しながらスマートフォンを開くと、新着メッセージが一件。もう一時間ほど前に、伊織さんから『これから帰るよ』と連絡が入っていた。
一時間ということは、もうとっくに家に着いていてもおかしくない時間だ。単純に長引いているだけかとソワソワしているうちに、玄関のドアが開く音が聞こえ、音の方へ足を向けた。
「おかえりなさい」
「ただいま。起きてたんだ」
飲み会だったというのに、顔色ひとつ変えず、伊織さんが靴を脱ぐ。
いつも通りの様子に、ほっと胸を撫でおろした。
「……どうかした?」
「あ、ううん。帰るって連絡が来てからだいぶ時間が経ってたから、心配で」
「ああ、タクシーで帰ってきたんだけど、同僚送りながら帰ってきたから」
「そうなんだ……。よかった」
帰りが少し遅いくらいで、心配することないじゃない。
心配性な自分を戒めていると、急に伊織さんの手が伸びてきて、私の頭を撫でた。
「心配かけてごめん」
「っ……」
普段彼からスキンシップをとってくることはほとんどないのに。あまりに不意打ちすぎて、髪に触れられただけで胸が大きく高鳴った。
数回愛でるように頭を撫でると、長い指先が伸びた手が離れていく。そのほんの一瞬、甘い香りが鼻先を掠めた。
伊織さんのものではない、微かに香って後に引かない女性物のオーデコロン。さらに病院勤務である彼からこの匂いがすることに、疑問を覚えた。
「それじゃあ、お風呂入ろうかな。緋真は寝てていいから」
「う、うん。わかった……あ、荷物とジャケット預かっちゃうよ」
「ありがとう。それじゃあ頼む」
寝室に荷物を置きに行く伊織さんを止め、必要なものを預かると、彼はそのままお風呂場へと直行した。
何食わぬ顔でクローゼットを開け、ジャケットをハンガーへとかける。後ろめたい気持ちで鼻を近づけると、やはり左腕の辺りに花の蜜のような甘い香りが付着していた。どこかで嗅いだことのあるような匂いだが、少なくとも私のものではない。そもそも香りものなんてつけないのだから。
今日は飲み会って言っていたし、たまたま匂いがついただけかもしれない……でも、職場の飲み会で? しかも左腕だけ?
考えれば考えるほど疑心暗鬼になってしまい、思考を振り払う。気を取り直して鞄をしまうと、今度は彼のシックな革の鞄にそぐわない光り物が目に入った。
「これ……」
外ポケットに引っかかっていた金属を手に取る。見ればひねりの効いたシルバーのフープピアスで、決定的なものに言葉を失った。伊織さんはピアスはしないし、それ以前にこれはどう見ても女物だ。
そもそも医療関係の女性が、香りものやピアスを付けるのだろうか。いや、多少のお洒落は問題ないのかもしれない。それに飲み会だったなら、単純に付き合いでキャバクラなどの夜の店に行くことも考えられる。……想像したくはないけれど。
――だとしても、だ。ここまで痕跡を残して帰宅することがあるだろうか。
ざわざわと胸騒ぎがする。私たちはお見合い結婚で、未だ男女の関係すら築けていない。彼が外で他の女性と会っていたとしても、何ら不思議なことではない気がした。
伊織さんを問い詰める? どこで誰と飲んでいたんですかって? ううん、そんなこと聞けない。
それなら、すべて見なかったことにするべきか。普通にできるの? 私……。
自問自答を繰り返しているうちに時間が経ってしまい、お風呂上がりの伊織さんが寝室へと向かってくる音がした。どちらにせよ、今すぐ彼と顔を突き合わせて話すことは躊躇われ、急いでベッドに潜り込む。
控えめな物音を立て、やがて寝支度を整えたであろう彼が傍にやってくると、マットレスが沈む感覚を覚え、体を強張らせた。
しかしながら、私たちのベッドのマットレスは二枚。各々独立した形で敷いているため、互いの動きを感じることはないのだ。つまり、伊織さんは私のすぐそばにいる。
伊織さんに向けた背中から、そろそろと近づいてきた気配は、私の髪に触れ撫でるように梳いた。繊細な指先が首元に当たり、くすぐったい。
伊織さん……?
一度狸寝入りをしてしまった以上、途中で起き上がることはできない。
断固として目を閉じたまま耐えていると、最後に頬へぬるい温度を与えて去って行った。
い、今キス、された……? どうして……。
突然のことで、心臓がバクバクと音を立て始める。
帰ったときは普通に見えたけれど、実はお酒を飲んで酔っていたのだろうか。そうでなければ、彼がこんなことするわけがない。
触れられた箇所が、猛烈に熱い。一瞬でも伊織さんに求められたような気がして、胸がいっぱいになる。
だけど――
つい先ほど感じた他の女性の影を思えば、手放しには喜べなかった。
今すぐ起きて、真実を確かめられないもどかしさが残る。
その夜は考え事ばかりしていたら、よく眠れなかった。
コメント
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読了したよ〜!!😭💕 第8話、もう胸がぎゅってなった…! 伊織さんからの不意打ちの頭ポンポン&頬へのキスでときめいた直後に、女物のピアス発見…そのジェットコースター感情やばすぎる!!「問い詰めたいけど聞けない」もどかしさがひしひし伝わってきて、私も同じ気持ちになっちゃったよ…😢 このあとどうなるの!?続きが気になって今夜眠れないよ寧子さくら先生〜!!🌸✨